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38 天界からの使者

アイテムボックスから現れたリビルと名乗る謎の男。

ナターシャとクレフォリアは恐怖と警戒の色を隠さない。

「はわわ……」


 アニメや漫画のように目を白く丸くしながら震えるクレフォリア。


「……あ、貴方は誰ですか……?」


 ナターシャはクレフォリアを守るように抱きしめながら質問する。


『……わたくしは神様の御使い、天使リビルで御座います。驚かせてしまったようで申し訳ありません』


 リビルと名乗る小男は口を動かさずに言葉を二人に伝える。なんか言葉を頭の中に直接流し込まれているような感じ。そして柔らかな笑みを浮かべる。

 ……いやアンニュイな表情で笑いかけられても光加減のせいで怖いんだよそれ!

 見た目麗しいせいで犯罪映画とかに出てくるサイコパスのイケメン殺人鬼みたいに見えるんだよ!


「……せ、せめてさ、その下から光出すの止めてもらえない?怖いんだけど」


 ナターシャはリビルの足元を指差す。

 誰なのかとか何でアイテムボックスの中に居たのかとかはこの際置いといて魔法がある世界だし何かしらの魔法で足元から光を出しているんだろう。

 とりあえずそれを止めてもらえば微笑む殺人鬼(プリティ・マーダー)から普通の不審者に認識をクラスチェンジ出来る。


『? ……あぁ! これは失敬! 光を照らす方向を間違えていました!』


 カチッという音と共にリビルの足元から差していた光が頭上からに切り替わる。

 リビルの頭上に天使の輪っかのような光輪ができ、目の前のアイテムボックスに潜んでいた不審者が一転して神聖な雰囲気を放つ存在に様変わりする。


 ……いやどういう原理で足元と頭上を間違えるんだよ。お前は頭に靴を履くのか。


 何とか不審者へと様相を変えたリビルを見てクレフォリアも少し落ち着く。


「ほ、ホントに天使様なのですか……?」


 そしてクレフォリアも当然のことながら話しかける。


『えぇ、そうです。この頭上に浮かぶ光輪こそが何よりの証拠。他にも見せましょうか』


 リビルはその言葉の後に身体を少し丸め、力を込める。

 すると背中から白く輝く翼がブァッ、と生えてくる。

 そして伸びをするようにバサバサと何度か羽ばたき、羽が数枚床に舞い落ちる。


『……如何ですか?』


 クレフォリアとナターシャは驚いた顔でその様子を見つめる。

 すげぇ……背中から翼生えた……。しかもめっちゃ白くて綺麗。


「魔物にも人型で翼を持つ種類は居ますが、ここまで美しい翼は見た事がありません……」


 クレフォリアはナターシャの思考と似たような感想を話す。


『魔物ではありませんよ。ちゃんとした天使です。触ってみますか?』


 リビルは背中を向け、少女二人に翼を差し出す。

 少女も翼を触り、本物である事を確かめる。


「おぉ……凄くスベスベしてるのに羽毛の所凄く暖かくてふわふわする……」


「凄いですわ……驚くほどふかふかですわ……」


 もふもふとリビルの翼を感触を楽しむ。

 暫くそのまま遊ばれていたリビルは『ご理解頂けましたか?』と少女二人の脳内で声を鳴らす。

 二人も害意がある人ではないと理解したので、とりあえず自身を天使だと言う彼の話を受け入れる事に。


「……まぁ、まだ半信半疑だけどリビルが天使だって信じようと思う」


「……そうですね。何故アイテムボックスから出てきたのかは疑問が残りますが、そう考えるのが今の所妥当です」


『……天使だとご理解頂けたようで何よりです』


 そして改めて二人に向き直り、自身がやって来た理由を説明するリビル。


『……わたくしは熾天使アーミラル様の命により、ナターシャ様の一時的な補助、及び、クレフォリア様への契約書贈呈と提言を行いに来ました』


 リビルは胸元に手を入れ、クレフォリアに一枚の羊皮紙を差し出す。

 ナターシャから離れたクレフォリアは羊皮紙を手に取り、紐を解き開く。

 羊皮紙は異世界文字で文章が書かれていて、右下に熾天使アーミラルという日本語のサインと共にクレフォリアの胸元と同じ紋章が判を押されている。……天使ちゃんって結構丸文字なんだね。可愛い。


『まずはクレフォリア様の方からです。これは熾天使アーミラル様との契約書。貴方はアーミラル様と新たに契約した事により“ユニークスキル:熾天使の加護”を取得すると共にその恩恵を受ける事が出来ます。羊皮紙にはその内容が明記されております。』


「熾天使様との……契約書……」


 困惑しながらも羊皮紙に書かれた文章を読むクレフォリア。

 ナターシャも一緒にその内容を見る。


“熾天使の加護の内容及びその契約書”


“第一。契約者は死後、魂が天国へと導かれる。同時に黒魔法などの悪しき魔法の使用が制限され、悪魔との契約が出来なくなる。”


 前半はLINEで天使ちゃんが言ってた事と同じだな。

 ただ黒魔法に制限が掛かるのか。ファンタジー物で言ったら暗黒魔法とかかな。漆黒の炎(ダークフレイム)とか生気吸収(ドレイン)とかの。

 でも悪魔との契約が出来なくなるってそれは逆にメリットでは? 奴隷魔法が効かないって事だし。


“第二。熾天使の加護により、所持魔力が増大。熾天使との契約では現在の魔力値を百倍した値になる。”


 ……いや雑に強すぎないそれ。〇ラゴンボールの100倍〇王拳とかじゃないんだから最大値が1万程になりますとかで良かったと思うんだけど。

 まぁ魔力無制限の自分が言えた義理じゃないけどさ。


“第三。聖属性魔法への適正が上がる。回復魔法、精霊魔法、能力増加魔法、その他聖属性魔法の威力、効能がかなり向上する。”


 神の使いとの契約だし当然と言えば当然。でも黒魔法が代わりに制限を受けるから差し引き0なんだろうか。

 それに精霊魔法に対する適正が向上するってクレフォリアちゃんにとってかなりメリットがあるんじゃないかな。


“第四。神の加護と同様に運気が若干向上する。迷える子羊が正しい道に進めるよう困った際には天啓を得られる。”


 あぁ、やっぱそこら辺は入れてくるんだ。運気向上。

 でも天啓を得られるって良いな。ちょっと羨ましいかも。

 まぁその代わりにコッチは天使ちゃんにいつでも相談できる状態だけど。


“第五。以上を持って神の名の下に絶対不変の加護を此処に明記する。熾天使アーミラル”


 羊皮紙の文章を読み終わり、くるくると丸めるクレフォリア。

 そして嬉しそうにぎゅっと羊皮紙を抱きしめる。

 天使リビルもクレフォリアが読み終わると同時に注意を促す。


『熾天使アーミラル様の加護はとても強い物です。決して間違った道に使われないよう気を付けて下さい。力に驕らず、常に正しくある事をお望みになられるでしょう』


「……はい。心に留めます。熾天使様に感謝の念をお伝えください」


 クレフォリアはリビルに対して丁寧に礼をする。

 リビルも承りましたと了承し、今度はナターシャを見る。


『……では、次はナターシャ様です。ス……所持されている魔道具に“ナターシャなら持っていて当然だ”と思い込む祝福(ギフト)を掛けます。所謂付与魔法の一種ですね。余りにも発覚しすぎるので我らが主が直接その命を出されました』


 ……はい、ごめんなさい。バツの悪そうな顔をしたナターシャは心の中で謝罪する。

 でも1回目は不可抗力だし2回目は必要な行為だったし許して欲しいんですけど……。まぁ駄目だから天使に命令出してるんだよね。すいません。

 というかスマホって魔法付与出来るのかよ。ファンタジーな物じゃないから出来ないと思い込んでたわ。

 とりあえず付与魔法の一種らしい祝福ギフトの詠唱を聞き出す為適当に言葉を紡ぐ。


「……付与魔法なら私でも出来ると思います。魔法を教えてくれるなら此方で掛けますよ?」


 ついでに付与魔法チートもやっていきたいね。時間制限のある強化魔法と違って永続効果っぽい付与魔法なら相当強くなるだろう。適当な木の棒に切断魔法とかでも付与すれば斬鉄剣に早変わりしそうだ。


『いえ、魔道具への祝福(ギフト)はわたくしが掛けさせていただきます。これは神様から直々に言われました。“ナターシャにだけは付与魔法をさせるな”と。理由は説明するなと言われているので出来ません。ご了承下さい』


 ペコリと頭を下げるリビル。

 むぅ、魔法くらい自分で作れって事か。あの神様ならそういう意図もあるだろうね。

 ただ、いきなりスマホで付与魔法を試すのは止めておこう。道端の石ころからチャレンジだな。


「……あの、一つ宜しいでしょうか」


 おずおずと手を上げたクレフォリアが二人の会話に割って入る。


「ナターシャ様の魔道具は父であるリターリス様に買ってもらった物なのは知っています。魔王様と会話できる事から魔王様が直々に作った物と思っていたのですが、何故神様の名前が出るのでしょうか……」


 あ゛っ゛。

 そういえばそんな感じの説明をしてた事を思い出し固まる赤城恵ナターシャ

 リビルは想定内、コードG始動とナターシャの脳内に直接告げるとクレフォリアの両手を掴み、口を(つぐ)んだまま言葉を二人に流し込む。


『……これはとても難しい話になりますが、宜しいでしょうか?』


「えっ? は、はいリビルさん……。」


 リビルはクレフォリアの澄んだ青色の瞳をじっと見つめる。

 そこからリビルによる魔道具の説明が始まる。


『ナターシャ様が持つ魔道具は、父であるリターリス様に購入してもらったというのは確かです。しかし、製作者は魔王キャスペリアだけではありません』


 目を閉じるリビル。

 お父さんに買って貰った設定は崩さないのか。

 でも製作者が魔王以外にも居ると。どう繋げていくんだろう。


「では、他に誰が……」


 俺も聞きたい。少女な姿な俺も目を瞑りながら頷く。

 そしてリビルは目を開け、言葉が再び少女達の頭の中に送られる。


『魔道具の作成には魔王キャスペリアの他に魔術学会、そして天界も関わっております』


「天界までも……!?」


 なるほど、そういう設定でくるか。

 それなら天使ちゃんとLINEしてても矛盾しない。よく考えられてる。


『はい。天界が魔道具の作成・成功を運命で定め、術式の一部を天啓で授けました。魔術学会と魔王は残りの部分を共同で作製した形になります。……当然、今はまだ時期早尚だという意見も天界ではありました。それを理解した上で我らが主は反対する者達に作る為の条件として、


“完成品の作製は最低限の二つのみ”


“作製後、完成品の内の一つは必ず神の手が届く者が持つように”


“時が来るまでその存在が表に出ないよう天界が直接介入する”


 という運命を定めました。

 その結果魔道具の完成品作製は二つに留まり、定められた運命により因果が矛盾しないよう調整され、魔道具を購入できるツテと神の加護というスキルを持って生まれたナターシャ様がたまたま魔道具を所持する事となったのです。

 ナターシャ様にはその事を6歳の洗礼の際に我が主が直接伝えております』


 言葉を伝え終わり、真っ直ぐな瞳でクレフォリアを見つめるリビル。

 まぁ嘘だな。俺が望んで貰った物だし、そもそも魔道具じゃなくてただの電子機器。

 でも所持する経緯に関しては若干事実が混じってる。6歳の時に神様から直接スマホの在り処を教えて貰ったのは確かだ。

 しかし今のをサラッと言ってのけて、表情まで崩さないとかリビルさんもプロだな。

 相当訓練されてるよこの人。いや多分天使。


「……えぇと、ナターシャ様は神の加護というスキルを持っているのですか?」


 クレフォリアがナターシャの方を見て聞いてくる。

 俺も説得力を高める為にチラとリビルの顔を見て、軽く頷いたのを確認し話し始める。


「……うん、持ってるよ。ステータス見る?」


 そう言ってステータス画面を表示。クレフォリアに見せる。

 最初こそ突如目の前に現れた物に驚いていたが、神の加護を持っている事を見て色々と納得した様子。

 ってか気が付いたら神の加護(魔法)Lv3になってるじゃん。なんでだろ。


「……では、奇跡的にナターシャ様の元に辿り着いたのですね」


 クレフォリアは奇跡を尊ぶようにリビルを見つめる。


『えぇそうです。ナターシャ様もクレフォリア様のように我が主への感謝を忘れないようにして下さい』


 ここぞとばかりに信仰を説くリビル。

 忘れてねぇよ。心の奥で転生させてもらった事しっかり感謝しとるわ。

 とりあえず返事をしておく。


「はい」


 ただ中二病に関してはまだ文句を言いたい。早く解放されたいなぁ。

 リビルは出した翼を少し羽ばたかせて本題に入る。


『……次は、ナターシャ様が両親に説明する際の演出についてですね』

何故アイテムボックスからなのかは分かる人なら分かると思います。


しかし、状況説明とかが入ると文が長くなって困る。

早く終わらせて会話で遊んだり戦闘描写したい。

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