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37 美味しいお茶は如何ですか?

家に着き、自室にてくつろぐナターシャ達。

なにやら珍しい飲み物を飲んでいる様子。

あと、光の加減で見え方って変わるけどそれがこの典型例だと思う

「んー……」


 ここはナターシャの自室。

 ナターシャは部屋の奥にある机の前の椅子を背もたれを前向きにして座り、クレフォリアはナターシャから見て右側のベッドに座っている。

 ベッドは壁の窪みに上手く嵌め込まれていて、部屋の入口からはクレフォリアの足しか見えない状態だ。

 一応入口の左側に本棚も設置されているのだが、入っている本は生憎1~2冊程度。がらんどうである。


 二人は手にコップを持ち、中に入っている飲み物からは湯気が立つ。たまに風に煽られ湯気がふわりと揺れる。

 光をとる為に、とベッドと机の間の壁についている片開きの木戸は開けてあるが、あの温かくなる魔法を使っているので寒くはない。


 後は説明するだけなんだけど、上手くいくかなー……。

 そう思いながらナターシャはコップの中の飲み物を啜る。海外では行儀が悪いって言われてるらしいんだけどもここ異世界だしそれにまだ7歳だし許されるでしょ。

 ……あぁ、前の話との繋がりが分からんよね皆。

 じゃあまず、なんで自室に籠っているのかという説明からしようか。


 最初、家に入った俺とクレフォリアちゃんはリビングの暖炉前に(たむろ)っていました。

 パチパチと良い音を鳴らす薪と、燃え上がる炎を眺めながらのんびりしてたんだけど、なんかガーベリアお母さんがソワソワとしながら眺めてくる。

 キッチンの入口から此方を眺め、コッチがそれを見つけるとガーベリアはドキッとする様子を見せていそしそと退散。

 少しすると次は廊下側の入口から身体を隠してコッチを眺めてくる。それに目をやると、さもたまたまそこに居たかのように振る舞う。

 更にホウキや水で濡らした貴重な雑巾などの掃除用具を持ってリビングを掃除する。

そして定期的に飲み物の補充をしに来る。しかも割と大き目の容器に入れて。


 ……監視してるのバレバレだっての! 隠すのヘタクソか!


 赤城恵ナターシャはゴン、と椅子の背もたれに額をぶつける。


 ……まぁね?

 家出したのが原因なのは分かってます。えぇ、自身の非は認めますとも。

 中身は前世の記憶込みでそれなりの年齢重ねてると言っても外身はユリスタシア・ナターシャちゃん7歳です。

 この世に生を受けて僅か7年ですよ。少女というよりまだ幼女に近いレベルだとも自覚しています。まぁもう1~2か月ほどすれば8年目に突入する訳ですが。

 そんな子が夜中に出奔して帰ってきたものの夫は運悪く……いや良いのだろうか。分からんけど盗賊を発見し村へ。しかも娘は見も知らぬ少女と共に帰宅したと来た。動揺するのも分かります。

 それに、娘がまた家出しないか不安で不安で仕方ないのも分かりますとも。


 でもさぁ……。もう少し上手く立ち回れないのかね……?

 ここまであからさまなウォッチング見た事無いよ……?


 自室の部屋の扉越しに感じる、母のソワソワとした雰囲気にため息をつく赤城恵(ナターシャ)

 というか声に出してる。自分でソワソワ言ってるもんママン。完全にギャグアニメじゃん。


 まぁ要は、


『母の監視に対するツッコミ所が多過ぎて、心の中でツッコミ続けるのに耐え切れなくなって自室に戻りました。今はクレフォリアちゃんと仲良くお茶会しています』。以上。


「……美味しいですねこの飲み物」


「……そだね」


 クレフォリアは、長い金色のウェーブ掛った横髪がカップに入らないよう、軽くかき上げて暖かい飲み物を飲む。絵になるなぁ。

 ナターシャも逆向きの背もたれに前のめりに寄りかかりながら、飲み物を啜る。


「……何と言う名前の飲み物なんでしょうか」


 ナターシャを純朴そうな瞳で見つめるクレフォリア。


「確か、紅茶だったと思うよ。ハチミツ入り」


 ナターシャもそれに返答する。

 なんで紅茶が存在するんだろうねホント。


「そうなのですか。ユリスタシア家ではこのような飲み物を(たしな)んでおられるのですね」


 コップの中のオレンジ色に澄んだ水を見て微笑むクレフォリア。水面に顔が映る。


「うん、お母さんが好きでね。たまにこういう珍しい物をお客様に出すんだ。他の家ではワインを出すのが主流らしいから変わり種として結構好評だよ」


「なるほど……」


 紅茶を眺めて何かを考えている様子なクレフォリア。

 ナターシャはそちらから視線を逸らし、未だソワソワしているドアの向こうの声を聞いて、再び背もたれに頭を打ち付ける。

 ……まぁ、別に何かしたい訳じゃないし、お父さんが帰ってくるまで大人しくしておくつもりだけども気になって仕方がない。少しの間ソワソワするのを止めてもらおう。


 ナターシャはコップに残ったお茶を飲み干して部屋の入口へ向かい、ドアを開ける。


「……あ、あらナターシャちゃん。どうしたの?」


 外向きに開くドアの前には、堅く握った両手を胸に当てたガーベリアがナターシャを出迎える。ニッコリと笑みを浮かべているが少々ぎこちない。

 緊張しているようで腕を強く引き締めているのか、大きな双丘が更に左右に分割されている。


「……うん、お茶のお代わりが欲しくて」


 ナターシャは敢えて生暖かい微笑みを出しながらコップを差し出す。

 ガーベリアも理解したようで、分かったわとコップを受け取ると少し駆け足で一階へと降りていく。


 そして笑みを崩し、肩を落としてふぅと息を抜くナターシャ。

 スグに戻ってくるだろうけど、気晴らし程度には時間が稼げるだろう。


 ドアを閉め、ベッドの方に歩き、クレフォリアの右側に少し間隔を空けて座る。

 クレフォリアはスッ、と間隔を詰めてくる。その際、金髪少女の吐息が耳元に当たり、ナターシャは少し可愛い声を漏らしてしまう。その声を聞いたクレフォリアは楽しそうな笑みを漏らす。


 ……慣れないよなぁこれ。どう付き合っていけばいいんだろう。

 女性からの攻め手の受け方の教本とかどっかに無いかな。スマホで調べれば書いてあるかな……。


 ピンク色の濃度が高まる思考を放棄すべく、ナターシャはいつものようにアイテムボックスの魔法を唱え、スマホで時間の確認でもしようと『こんにちはナターシャ様。』


 男性っぽさが色濃く残る高い声と共に現れたのは、ホラー映画に出てきそうな程顔に影の掛かった男性の顔。

 それが異次元の扉の間から見えるその光景はまるでシャイ〇ングのポスターのようでナターシャとクレフォリアは恐怖に駆られ叫ぶ。


『きゃあああああああああああああああああああああっ!!!』


『ど、どうしたのー!?』


 そして戻ってきたであろうガーベリアがその声を聞きつけ、階段を駆け上がってくる。


『想定内、コードA実行。』


 男の声と共に異次元の扉が閉まる。残された少女二人はベッドに乗り上げ恐怖する。


「な、なんなんですの!? 今の、何なんですの!?」


「わ、分かんない! 分かんないけどなんか変なのがアイテムボックスに住み着いてる!」


 先ほどの光景に対する恐怖と嫌悪感で顔を青くして、ガタガタ震えながら抱き合う。

 クレフォリアの持つコップは運よく空になった直後だったようで、辺りに液体をまき散らさずに済んだ。


「どうしたの!?」


 バァンとドアが開きガーベリアが入ってくる。手には湯気の立つコップとティーポットを持っている。どうやって扉を開けたんだお母さん。

 パタパタと入り、ベッドの上で震え合っている二人の姿を確認する。


「な、何かいた! 何かいたのお母さん!」


 ナターシャが前方を指差し手をブンブン振る。

 ガーベリアは指差す方、つまり後ろを確認するが何も無い。強いていうなら漆喰の壁がある。

 二人の方を向き、困った表情で首を傾げるガーベリア。


「何にも無いわよー……?」


 その言葉にナターシャはハッと意識を取り戻し言い繕う。


「な……な、何か虫みたいなのが居たの! でっかいの!」


「えっ!? やだ怖いわ……!」


 ガーベリアは驚いてコップとティーポットを持ったままキュッと胸に両手を抱いて周囲を見渡す。コップの中のお茶が零れかける。

 床には一匹、小さな蜘蛛がカサカサと動いていて、3人を見上げるようにして止まる。

 その複数の単眼には怖がるガーベリア、更にベッドの上で抱き合うナターシャとクレフォリアの姿が映る。

 母は構えを解くと無言で手に持つ物を机に置き、その蜘蛛に向かってしゃがみ込む。

 その行動に驚いて机の下に逃げ込もうとする蜘蛛を、母は捕まえて窓の外に放り投げた。


「……これで解決ね!」


 一仕事を終え汗を拭うガーベリア。

 それで良いのだろうか。


「う、うん! ありがとうお母さん!」


 ナターシャも何とも言えない笑顔で対応する。


「ナターシャちゃん達は虫が苦手だったのね。お母さんも覚えておくわっ。」


 フンッと軽く鼻息を鳴らし小さくファイトポーズを取る母。


「うん! また何かあったらよろしくね!」


「えぇ、任せなさいっ! お茶、ここに置いておくわね。」


 娘の弱点を知った母は嬉しそうに部屋から去っていった。

 そして再び部屋の外でソワソワする雰囲気を醸し出す。


 ……なんか良く分からないけど何とかなって良かった。

 一時はテンパってアイテムボックスの事バラしかけたけど、何故か言い繕えましたホント。まぁ後の説明に響いてくるからバレなかったのはラッキーだね。

 と、ひとまず安心するナターシャ。


 ……でも一番の問題はやっぱ“中”だよな。再度緊張してゴクリと唾をのむ。

 気が付かない内に俺のアイテムボックスの中に何か変なのが住み着いている。それが何かを確認しなくちゃならない。じゃないと一生スマホが取り出せない。それは困る。

 未だ少し怯えているクレフォリアに許可を取り、右手を前に(かざ)し、もう一度アイテムボックスを開く魔法を唱える。


(“万物に影響されぬ秘匿されし宝物庫よ、我が前に門を開け放て”)


 プオン、と低い音が鳴り異次元の扉が開く。

 中では待機していたであろう存在が何故か下からの光を浴びてホラーチックに登場する。


『……こんにちはナターシャ様。わたくしは神様の御使いとして送られた天使で御座います』


 そう言うと白い衣で身を包んだ茶髪でキツイ天然パーマの小男が二人の前に現れる。


『わたくしの名前はリビル。天使リビルと申します。どうぞお見知りおきを』


 丁寧に礼をするリビルと名乗る小男。

 顔を上げると同時にニッコリと笑うが、光の影響で名称しがたいほどに狂気を含んだ笑みに見える。

 ……夜中、小〇小僧に下からライト当てたらこんな顔になるだろうなとナターシャは恐怖しながら理解した。

展開変えようかと思って消したけどもこのまま突っ切ります。

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