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29 SSR 剣技の精霊の召喚に成功しました。 前編

クレフォリアの魔法を創り変え、剣技への信仰を利用して精霊を創ったナターシャ。

創造主かと問いかけられ、その言動に懐かしくなって軽く笑ってしまう。

まぁ色々あるけど精霊さん従順っぽいし大丈夫だよね。

「……問おう。貴公が私の創造主か?」


 その聞いた事ある言葉にナターシャはふっと笑う。


「……ゲイル、なの?」


 クレフォリアは動揺を隠せない様子で、不安げにナターシャの手を握る。

 ナターシャはクレフォリアの行動でその感情を理解し、一歩前に出てクレフォリアと甲冑との間に入る。

 ……でも、甲冑の開口一番のセリフを思い出してどうしても少し笑ってしまう。


「……ふふ、そうだよ。私が君を創った」


「……何か可笑しい所がありましたか」


「……まぁ思い出す事があってね。気にしないで」


「……そうでありますか。それで、拙者に何をお望みで」


 拙者って。甲冑はナターシャに近づき、対面する形になる。

 まぁ、争い無く主として認められたのはありがたい事だが、それよりも気になる事があるのだ。

 ナターシャはまずそれを尋ねる。


「……その前に、ゲイルって人の記憶はある?」


「……いえ、殆どありませぬ。拙者は個人に非ず、統合されし剣技の精霊。元になった人物の記憶は薄れてしまっているのでありましょう」


「なるほど……じゃあ、何か思う事はある?」


「……2点程。一つは強者との闘い。もう一つは目の前の少女の命に従うという意思、であります」


 そう言って剣技の精霊はナターシャを見る。

 なるほど。これはクレフォリアちゃんに謝罪しなきゃいけないかも。

 ナターシャは剣技の精霊を見て、曖昧な表情を浮かべるクレフォリアに謝罪する。


「ごめんクレフォリアちゃん。剣技の精霊としての側面が強すぎてゲイルって人の記憶薄れちゃってるみたい。多分遺言とかも話せないかも……」


 ナターシャの謝罪に対してクレフォリアは戸惑うように答える。


「……っ、そうですか、とても残念です。……ですが、ゲイルの想いは一度私が受け取りました。その想いを彼の両親に伝えようと思います」


 そしてクレフォリアは、胸に両手を当ててゲイルという男性の想いを語る。


「……ゲイルは両親に、騎士団になった事を誇りたかったようです。両親にはとても苦労を掛けたからと。しかし、それを伝えられなかった事が無念だとゲイルの想いを汲み取った時に聴きました……っ」


 悲しむように目を伏せ、唇を噛む。とても心苦しいのだろう。

 だが、それでも大事なのだ、とクレフォリアは言葉を紡ぐ。


「……手紙では足りない。必ず会って、両親に直接伝えたい。俺はこんなに立派になれたんだぞ、と。そんな優しい心を持っているからこそ、私を守ってくださったんでしょうね……」


 そして、クレフォリアは小さく涙を流す。

 それを見た剣技の精霊が、クレフォリアに話しかける。


「……そうでありますか。ならば拙者も付いて行き、貴公の代わりにその想いを伝えましょうぞ。この身は既に精霊なれど、元はゲイルという男性。ならば、無念を果たすのも道理であります故」


 そう言って剣技の精霊は胸に拳を当てる。コンッ、という金属の音がする。


「……お優しい方なのですね、精霊様は」


 クレフォリアは優しく、剣技の精霊に笑いかける。


「騎士として当然であります。最も、今は無銘の剣技の精霊であるからに騎士では無いのでありますが……」


 その後元騎士としてだのでも今は精霊だのと言う剣技の精霊。いやどっちでもいいだろうに。大事なのは今でしょ。

 というか剣技の精霊って言い辛いな。なんか名前つけよう。


「……あー、私が指示言う前にさ、まず名前つけても良いかな。剣技の精霊って言い辛くって」


「……おぉ、有難き幸せ。拙者もゲイル以外に名乗る名前があると決闘がしやすくなるであります」


 戦う事しか考えてねぇ、と思いつつもサクッと思考する。


「じゃあー……斬る鬼の丸って書いて斬鬼丸(ざんきまる)。これでどう?」


「ざんきまる……これが拙者の名ですか。御意に」


 剣技の精霊改め斬鬼丸となった精霊が嬉しそうに手を握る。

 ナターシャは早速斬鬼丸にお願いをする。


「じゃあお願いだけども、斬鬼丸。“私達を守りなさい”。後、私の事はナターシャって呼んでね」


「御意。ナターシャ殿、我が全霊を以てお守りいたしましょう」


 そう言って軽く頭を下げた斬鬼丸は移動し、盗賊の持っている武器を回収する。曲剣を2本、短剣を1本。

 曲剣は腰の革ベルトの両脇に一本づつ差し、短剣は背中に装着する。


「武器はそれで問題ない?」


「ありませぬ。我が剣術は如何なる武器をも使いこなす頂きの剣術故に」


 腰から抜いた曲剣を華麗に振り回して技術の凄さを見せつける斬鬼丸。

 おぉ、これなら夜中魔物に襲われても問題なさそうだな。まぁ隠匿の魔法あるけど。

 ナターシャはクレフォリアを見て、移動を促す。


「よし。じゃあクレフォリアちゃん、行こうか」


「あの、ナターシャ様。その……少し精霊様……いえ、斬鬼丸様とお話しても宜しいですか?」


 何処か申し訳なさそうにナターシャに聞くクレフォリア。

 多分ゲイルって人についてだろうとナターシャは想像する。


「……あぁ、良いよ。見ないようにするね」


「……ありがとうございます」


 ナターシャは二人から目を背ける。

 クレフォリアは斬鬼丸の手を取って引っ張り、ナターシャから少し離れた場所に行く。

 そして、心の内を曝け出すように話し出す。


「……斬鬼丸様、今だけはゲイルとして話を聞いていただけませんか」


 クレフォリアは斬鬼丸の顔を見て、懇願するような目線を送る。


「御意。……いつでもどうぞ」


 斬鬼丸も理解したのか、口調が若い男性のものに変わる。

 クレフォリアは騎士に向き直り、改めて感謝の言葉を告げる。


「……ゲイル。命を賭して私を守って下さり、ありがとうございます。この御恩は、一生忘れません。……本当に、ありがとうございます」


 深々と礼をするクレフォリア。

 所々破けたスカートをギュッと握り締め、自身を守った騎士の返答を待つ。


 対する斬鬼丸もゲイルとして返答する。


「……どういたしまして。これからも、元気に生きて下さいね?」


 そう言ってクレフォリアの手を取り、勇気づける。

 顔を上げた少女が見たのは、目の前でカッコよくグーサインをする甲冑の姿だった。

 その様子に、悲観的な顔つきだったクレフォリアも、つい笑みを漏らしてしまう。


「……ふっ、ふふふ……ありがとうございます、斬鬼丸様。少しだけ気持ちが楽になりました」


 そう言って斬鬼丸の手を優しく握り返すクレフォリア。

 斬鬼丸も口調を元に戻し、クレフォリアを励ます。


「……何、ゲイル殿は死した訳ではなく我が中に生きております故。安心して生きられよクレフォリア殿。生きる事こそがゲイル殿への何よりの手向けであります」


「……そう、ですね。斬鬼丸様の言う通りです。ナターシャ様と共に精一杯生きようと思います」


 斬鬼丸の言葉を聞き、クレフォリアはニッコリ微笑む。

 対する斬鬼丸もその表情を見て頷く。


「うむ。その調子であります」


「はい。……では、戻りましょうか。護衛の方よろしくお願いしますね」


「お任せあれ」


 会話を終えた二人は再びナターシャの所へ戻る。

 


「……ナターシャ様、終わりました」


 クレフォリアがナターシャを呼びかける。

 ナターシャもその声に気付き、何事も無かったかのように振り返る。


「ん。じゃあ行こっか」


「はい。……不束者ですが、これからよろしくお願いしますっ」


 クレフォリアはそう言うと、嬉しそうにナターシャの腕に抱き着く。なんで!?

 ナターシャは隣から香る良い香りでつい思考停止しつつも、斬鬼丸に次の指示を出す。


「……あ、あぁ斬鬼丸。私達に付いてきてね」


「御意」


 腕に抱き着いたクレフォリアと共に街道を歩いていくナターシャと、その後ろから主を追い越さないよう付いてくる斬鬼丸。

 ここに少女二人と剣技の精霊一騎という変わったパーティが創り上げられた。

ホント小説って難しくて楽しい。

あぁ、はい。後編あります。

でも今万策尽きかけなので明日投稿します。ゴメンナサト。

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