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邪気眼少女の極唱魔法(エクスペル) ~異世界転生したらTSした上に厨二病を再発症する羽目になりました~  作者: 蒼魚二三
第二部:序章 断罪と斬首と絶命と、死霊の呼び声と闇の軍勢サラダ

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ep0:『とある男奴隷商の末路』

 うっすらと雪化粧が残るエルリックの街並みの中、路地から一人の男が現れる。

 商人の風貌をした男は大通りを逃げていく。


「ハァ、ハァッ……――――」


 背後からは西洋鎧を装着し、緑の防寒マントを羽織った騎士の一団が迫る。


『どこに行った!?』

『あそこだ! 逃がすな!』 

『イクトルを捕らえろ!』

「ひぃ、ひぃぃ――――!」


 商人風の男――奴隷商イクトルは必死の形相で逃げる。

 左目にあった魔眼はとうに消え失せて、ただ一人の罪人になっていた。

 残るは脚力のみだったが――――


『クソッ、地味に足が早い……!』


 彼は意外と逃げ足が早かった。

 すると一人の騎士が痺れを切らし、


『私が行く!』

『支部長!?』


 マントを外し、ブレストプレート・腕の装甲を引きちぎって投げ捨て、スピードを上げた。

 全力でイクトルに迫る。


「逃がすかァァ!」

「ひ、ひぃ――――」

「――ハァッ!」

「ぐへっ!」

 

 騎士が猛然とタックルを仕掛け、イクトルを地面に押し倒した。

 彼は白い金属の枷――魔封じの錠を掛けるべく、イクトルの背に乗る。


「もう逃げられん――」

「隷魔眼《スレイヴァイズ》・再起動《リブート》ォッ!」

「なっ!?」


 しかしイクトルは真の奥の手を残していた。

 魔眼の再起動《リブート》。

 一部の強力な魔眼に課せられた『一日一度』という使用制限を破るための邪法だ。

 代償として視力と寿命が削られるが、一時的に魔眼の力を発動させられる。


「貴様、私から離れろ!」

「ぐうっ!?」


 イクトルは血の涙が流れる左目――金色の魔眼で背後を睨む。

 彼の魔眼は『見つめた者を奴隷化する』力を持っていた。

 従属の悪魔が持つ瞳の力で、奴隷商会から抜けるためにヘカトリリスが捧げた能力だった。

 運悪く目が合ってしまった背上の騎士は、都合のいい操り人形となってしまう。


「ぐ、ぐ、ぁ」

「私が逃げるまで時間を稼げ!」

「ぐッ――――」

『し、支部長……!』


 操られた一騎士は、仲間へと刃を向け。


「――――ァァァァアアアアアッ!!!!」


 ザンッ!


 気合と共に奴隷化を破ってイクトルの首を切り落とした。

 呆気に取られた顔が地面に転がり、残された体も数回ほど血を噴き出してから地面に倒れ伏す。


「ハァ、ハッ……!」

「し、支部長!」


 騎士は膝を付く。

 周囲には仲間も集まった。


「支部長、な、何が」

「――分からん。だが、悪魔曰く『善意』とのことだ」

「そんなことが……」


 理由を聞いた彼らも、本人でさえも戸惑いを隠せない様子だ。

 灰色に曇った空からはしんしんと雪が振り始める。

 騎士は仰ぎ見て、少し嫌な予感がした。

 斬首刑が執行された日に雪が降るのは、エルリックという街では凶兆とされていたからだ。

 不安になったのか、イクトルの遺体を見た。


「ごきげんよう、諸君」

「!?」


 そこには、一体の首無し女騎士(デュラハン)が立っていた。

 白銀の鎧と赤黒いマントを身にまとう女騎士の亡霊だった。

 彼女はイクトルの体を肩に乗せ、首を大事そうに抱えていた。

 この場にいた誰も気付けていなかった。


「そしてご苦労様」

「――ッ!?」


 その一言を受け、エンシア騎士団は一瞬で臨戦態勢に入る。

 剣を抜いて対峙し、包囲網を作らんとする。

 遺体を取り戻すためだ。


 最後に支部長が立ち上がり、エルリックの伝承に基づいた疑問を口から漏らした。


「ま、まさかお前、あの、銀雪の亡霊アンネリーゼ――――」

「ふはは」


 デュラハンは軽く笑うと、存在しない口元に人差し指を当てた。

 正体を語るつもりは無いらしい。

 更に、戦う気も無かったようだ。


「ああそれと、残念だが戦う気は無い。君たちは必要じゃない」

「……そう言われて引き下がるとでも?」

「だが悪いが、この男の体と魂は私達が貰う。必要なんだ」

「返せ」

「断る。逃げさせてもらおう」


 デュラハンが手を振るう。

 すると緩やかだった天候が荒れ、猛吹雪が発生。

 騎士団はあまりの風圧に顔を隠してしまい、相手が見れなくなった。


 次に気がついた時にはデュラハンは遺体ごと消えていて、赤黒い血痕だけが地面に残されていた。


「し、支部長! 一体何が起こっているんですか!?」


 一人の新米騎士が状況を飲み込めずに叫んだ。

 一騎士は諦めたようにため息をつくと、淡々と答える。


「イクトルは不死の軍勢・三帝が一人、銀雪の亡霊アンネリーゼによってさらわれた」

「ど、どうなるのですか?」

「この世界は再び、勇者によって封印されし闇の眷属――不死の軍勢に脅かされることになる」

「そ、そんな……!?」


 彼の仲間たちは後ずさる。

 騎士は周囲を優しくなだめると、事後処理と撤退指揮を開始した。

 ここでの出来事は騎士団上層部に連絡し、判断を仰ぐ他しか無いのだ。

 今の彼らに出来るのはそれしか無かった。


「運命とは残酷だな……」


 イクトルは死んだ。

 確かに死んだ。

 しかし、彼の意思は。野望は。

 世界を制服しようとする執念は、まだ止まらないだろう。

 何故なら、不死の軍勢は死者をアンデッドにする術に長けた勢力。

 いずれはイクトルもアンデッドとして復活し、再び世界を手に入れんと。

 自身を殺し、陥れた者に復讐をするだろう。

 今度こそ手段など選ばすに。


「だが、だからといって。諦めることは出来んのだ」


 一騎士――支部長は、雪が降りしきる空を眺めながら、未来に控える死闘を予測し。

 せめて後釜となりうる人材を探そうと。

 今よりも強くなろうと、そう願った。

待たせたな。(CV:大塚明夫)

このあとがきを見ているということは、相当な物好きさんなのかな、なんて。


エクスペルの続編は新作として投稿する予定です。

この文章を書いているのが5月10日ですので、少し時間に余裕を取って、5月20日辺りを目安に新作を公開します。

もう少しだけ、ナターシャたちが綴る物語にお付き合いいただけると嬉しいです。


では、また会いましょう。

これからしばらくよろしくね。


追伸:続編のページを公開しました。

第一話はまだですが、良かったら覗いてみて下さい。


↓↓↓リンクは下です↓↓↓

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― 新着の感想 ―
[良い点] 青魚さん、お久し振りの更新はお疲れ様です! コロナの厳しい状況ですから、青魚さんが元気だと知れて良かったです! 続編の投稿を頂き、ありがとうございます!ナターシャさんの百合百合やチートや厨…
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