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254 年末大将戦 転句③ 【我が唇よ、熱く屠龍乃技を唱え - ウィロー、万事休す!?】

 しかしそこでリズールからのツッコミが入った。


『――我が盟主(マイロード)、流石にそれは誇大表現過ぎるのでは? 先ほど使用された新スキル“未来は我が手中に有りカタストロフ・ピリオド”は確かに強力ですが、“何かそれっぽい動作をすると敵がダメージを受けて吹っ飛ぶ威圧用のパッシブスキル”に過ぎません』

「いやまぁそうだけど」


 彼女の言葉が、カッコつけた少女の背中にぐさりと刺さる。

 そう、新スキル二種は仮初の力であり、最強の異能――隠されたダアトから漏れ出た力のほんの一端に過ぎないのだ。

 現状の効果では、雑魚なら軽く手を払うだけで消し飛ばし、敵の攻撃を受けても無傷で『効かんな』と言えるだけ。

 ただ、強者として振る舞うためにだけに存在している、由緒正しき中二病スキルなのである。


「でも良く知ってるねリズール」

『大賢者ウィスタリアから聞きました』


 おのれネタばらしをしおって大賢者……

 すると、首を傾げていたクーゲルがようやく言葉を発した。


「……ん? じゃあ俺達はさっさと先に進んだ方が良いのか?」

『ええ、急いで進んで下さい。クーゲルは本陣までの道案内と敵偵察兵の排除を』

「分かった」

『斬鬼丸さんは護衛よりも障害の排除を最優先に』

「承知」

『シバ王太子含む先遣隊の方は、本陣到達と同時に作戦開始です』

「「「了解!」」」

制限時間(タイムリミット)は一時間、それ以上は許容できません。では……出撃!』

「「「オオオ――――ッ!」」」


 指示を受けた先遣隊は、全速力で森の奥へと消えていった。

 事前に申し出た通り、ナターシャだけがこの場所に残る事になる。

 箒に乗った魔王候補は少しだけ剥れたが、すぐにため息をついた。


「……ま、怒っても仕方があるまい。作戦だからな」


 組織の長ムーブに戻した少女は、隣で何故かメチャクチャ委縮している青髪メイドの方を見た。

 宙に浮いている彼女に視線を合わした途端、『主導権を奪ってしまい申し訳ありません』と誠心誠意を尽くした謝罪を行ってきたので、ナターシャは『私も少し調子に乗りすぎた』と逆に謝った。

 しかし疑問が残る。


「だがリズールよ、なぜそんなにも私を恐れている?」

『いえ……お気づきになっていないかもしれませんが……我が盟主(マイロード)が不機嫌になられた途端、魔王の覇気が漏れ出し始めましたので……』

「え? マジ――」


『ギャオォ――――――ンッ!!』


「『――!』」


 その時、上空のドラゴンが再び咆哮を上げ、種子鷹(シードホーク)の再生成を行い始めた。

 種子鷹(シードホーク)はドラゴンの周囲をグルグルと回っている。

 今度は数を貯めてから爆撃するつもりらしい。


 ナターシャは魔女帽を抑えつつ、天の竜を見上げながら呟いた。


「……どうやら、これ以上の猶予は無さそうだな」

『そうですね――我が盟主(マイロード)

「どうした?」


 ふと隣を見ると、リズールは深く頭を下げた。


『私の結界は、あのドラゴンもどきが居る上空までは届きません。そして私は、混成軍のために地上を離れられません』

「そうか」

『ですのでどうか――――どうか、ご武運を』


 彼女はそう言って頭を下げたまま、何も言わなくなる。

 服を掴んだ手が小刻みに震えているのを見るに、相当心配してくれているらしい。

 ナターシャは少しだけ声音を弱めてから答えた。


「――任せろ我が首脳(マイブレイン)。私が真の魔王足りえる所以を見せてやる」


 俺は微笑みながら隣のメイドに拳を差し向けた。

 彼女もゆっくりと顔を上げると、拳を突き合わせてくれた。


「では行ってくる。地上は任せたぞ」

『お任せを。お気をつけて』


 二人は解散してお互いの任務に戻った。

 ナタ―シャは天を、リズールは地を完全に制するためだ。

 しかし、ナターシャはこれから幻想結界の外で戦う事になる。

 まずは敵の情報を得る事が先決だった。


「さて……」


 箒を天に向けて空に登っていく少女は、眼鏡を掛けて情報分析を行った。


「”詳細解析”、“詳細鑑定”」


 情報はこうだ。


―――――――――――――――――――――――――――


 竜種・暴侵食茨樹プレデタープラント・ドラゴン

 Lv50

 HP400000/4000000

 MP20900/20900


 全長50メートルほどの植物系ドラゴン。

 ウィローというオークが作り出した

 放置しておくと国を覆い尽くすと言われる

 侵食赤茨エロージョン・レッドソーン

 ――バラ科の赤い植物の株

 百本全てを融合させて出来た人工竜種。


 自身の身体を維持・成長させるために

 森の魔物を全てを殺した後、

 地上に根を張って

 養分と精霊の欠片を吸い尽くし、

 周辺一帯を砂漠化させて土地をも殺す。


 種の一片も残さず絶滅させないと

 世界がヤバい悪竜。


 敵の攻撃方法・対処方法

 地面から一定の高度を保ちながら

 起爆性の種子鷹(シードホーク)を生み出し、

 容赦ない広範囲爆撃を仕掛けてくる。

 しかも竜種なので生半可な攻撃は通らない。

 普通ならば逃げの一択である。


 もし倒したいのであれば、

 ドラゴン殺しの剣か、屠龍の技が

 必要になるだろう。


 スキル

 種子鷹生成(一分/千体 ※二分のチャージが必要)

 浮遊葉生成 捕食吸収

 養分暴食(土壌) 強制吸収

 土壌侵食 寄生 森殺し

 生物化 竜化 再分離不可

 魔法耐性Lv3 物理耐性Lv5

 精神攻撃無効

 

―――――――――――――――――――――――――――


「なるほど……」


 アイツを殺すには竜殺しの剣か技が必要なんだな?

 しかもれっきとした竜だから、それなりに強い技が必要と……なら……


「あれだな。よし――」


 一つの良い案を思い付いたので、それを主軸として行動する事に決める。


 その際、ナターシャは幻想結界を抜けた。

 すると、途端に肌寒さを感じ始めたので、頭上のドラゴンに向かってちょっとした愚痴を呟いた。



「しっかし、無駄に空高く飛びやがってドラゴンめ……風が寒いじゃないか……」



 事前に展開していた索敵魔法で距離を測った所、敵は高度二千メートル辺りに居て、現在も上昇中。

 寒風に目をしかめた少女は、速度上昇・風防止・凍死防止用の魔法を使用した。




「“我が世に夏来たれり、常夏の季候を我が周囲に顕現させよ”―― “重きを軽く、遅きを速く。風の層が我が身を包み、逆巻く渦が我が道作る。 これぞ、速度の限界求める人間の想いの集大成。逆転の速度生み出す超低圧の空気流――”」


『ギャオオオォ――――――』


「“ ――さぁ、我が進路に遮る物は何も無し。いざ進め、世界最速のその先へ――超速・筒渦気流ハイスピード・スリップストリーム”――」


『――オオオォ――――――ンッッ!!!』

『ピィィ――――ッ!!』


「――ゥゥゥ~~ッ!?」




 長い詠唱が終わって魔法が発動する。

 周辺の風が止み、暖かい空気のカプセルに包まれた瞬間、速度が倍増して衝撃波が発生した。

 容易く音速の壁――秒速約三百メートルを越えたのだ。




『ピィィ――――ッッ!』

「ぎゃあああ~~~~~~――――――ッ!?」




 しかし同時にドラゴンの攻撃も始まった。

 眼下に迫る超魔力生命体――ナターシャただ一人に対して、総勢二千を超える種子鷹シードホークの群れをけしかけたのだ。

 少女はミサイルのような速度で飛んでくる鷹を避けるため、緊急回避(ブレイク)した後は全力で逃げ回る羽目になった。




『ピィィァ――――――ッ!!!』

「追ってくる! めっちゃ追ってくる――――!」




 個人としては無敵でも、箒は無敵じゃないのだ。

 ダメージを受けると壊れてしまう。

 どうすればどうすればこれはどういう状況――――あ、アレだ!




「くそう、だったら自動迎撃も必須だった――――!」(グッ――!)

『ピァ――――』




 ナターシャは旋回中に速度を落として捻り込む事で、自分よりも速くなったシードホーク達を振り切りつつ、一つの魔法群を即興で創り上げた。




「“無属性正面射撃弾フロントショット”! “自動迎撃光線(ホーミングレーザー)”! “完全自動連射トリガーハッピーィィ――ッ!”」




 弾幕魔法が発動し、ナターシャの周囲に白い魔法球が複数個現れた。

 前方に向かって無属性の魔法弾を連射する物が二個、後方から途切れなくレーザーを発射する物が四個。

 少女は箒の矛先を天空――種子鷹(ザコ敵)の親玉である竜種・暴侵食茨樹プレデタープラント・ドラゴンに向けると、苛立ち紛れにこう叫んだ。




STG(弾幕ゲー)は得意じゃないんだけどなぁッ!」

『ギャオオオォ――――――――ンッッ!!!!』

『ピィィ――――ッ!』




 それに呼応するかのように、ナターシャに向かって多数の敵機が飛んでくる。

 反射速度の限界ギリギリでも対応出来るかどうか分からない程の速さ(スピード)だ。



「あぁもうッ!」(グッ――――!)

『ピッ――』

「雑魚には興味ないんだけどッ!?」

『ピァッ――――』(チュドドドドド――――)



 しかしナターシャは直感で避けていく。

 道を塞ぐ敵はフロントショットで消し飛ばし、左右や背後から迫る敵は、ホーミングレーザーによって片っ端から爆破していった。

 更に――――





「邪魔ッ! 爆風が邪魔で前見えないッ!」

『ピギ――――』(――チュドドドドドド―――――ン……)





 ――スキルを使用しながら手を振るうので、結果として無限ボム状態となり、あっという間に種子鷹(シードホーク)軍は全滅した。




「ひゃっほーぅい!」

「――!?」




 爆炎の雨を潜り抜け、十秒ほどでドラゴンの眼前に躍り出た少女は、とても強気に言い放つ。




「こんばんは悪竜――――」

「ギャオオオオ――――――――――ッッ!!」

「――――うおおおお――――ッッ!?」




 だがしかし、プレデタープラント・ドラゴンは次なる行動を起こした。

 目の前のナターシャを喰らって殺そうとしたのだ。




「あ、あぶねぇ……!」

『――オオオ――――ッ!!』




 少女は間一髪で回避したが、心臓のバクバクがヤバかった。

 冷や汗を拭って心を落ち着かせると、遠くで急旋回するドラゴンを睨みながら改めて言い直した。




「こ、こんばんは悪竜。先人を見習って竜破斬――と行きたい所だが、私が使うと〇デオンガンになってしまうのでな。だから新しく創った魔法で殺してやろう」

『ギャオオオオ―――――――ンッッ!!!』




 咆哮しながら迫るドラゴンに向かって、一つの即興魔法を詠唱する。




「……“果て無き研鑽を重ね、幾星霜の時を経て、その技は遂に竜へと届く”――」




 詠唱開始と共に、少女の背後には、刀を構えた巨大な剣豪の幻影が浮かび上がった。

 表情や視線は伺えないにも関わらず、その目は眼前の竜を睨んでいる、と万人に思わせるような気迫だった。

 ようやく見つけたと言わんばかりに。



『――――!?』




 ドラゴンが驚いたその瞬間、背後に剣豪を称えた少女が宙を滑っていく。

 彼女の足元と箒の先には、白い魔法の刃が出来ていた。



「スゥ――――」



 ――そう、彼女自身がまるで刀身になったかのように動き始めたのだ。

 ナターシャは大きく息を吸うと、最後にこう叫んだ。




「――“我が唇よ、熱く屠龍乃技を唄え――屠龍塵滅斬ウルスラグナ・ドラゴンベイン”!」




 ――――紫電一閃。

 ナターシャは剣豪の一振りと共に音速を超えて、ドラゴンの背後へと移動した。




『ギャ――――――』



 少女の背後には、上下真っ二つに斬り捨てられた植物系ドラゴンがいた。

 ドラゴンは地上へと落ちて種子を残す前に、自らの発火樹液が胸部――大きな赤い実に溜めこんでいた起爆性の種子に触れてしまい……――



『ギ、ギョ――――――……ォオ……ッ――――』



 チリチリッ……

 チュドドドド――――――――――ン……




 ――――連鎖爆発を起こして、種の一つも残せずに完全消滅した。

 ナターシャはその爆風を背に受けながら、物寂しい表情で静かにこう呟いた。





「……これで一人前になれたかな」





 かつての仲間達に顔向けできるような。

 これからの仲間達をずっと守っていけるような、強い自分に。



「ま、これで竜退治は終わりだ。敵の本陣に急ごう」



 不安を振り払った魔王候補は、次の作戦地点である敵本陣――宰相ウィローが居る森の中へと急いだ。

 大爆炎が残る遥か上空から、地上の森に向かって一筋の白い流れ星が降りていく。





 丁度その頃、ウィローにも報告が入った。


「――ギギッ!? 速報! プレデタープラント・ドラゴン爆発! 爆発! 大爆発シテ死亡シマシタ!」

「なァッ!? あっ、なッ、なぁ~~~~ッ!?」


 まさかの情報に、彼は椅子から転げ落ちた。


「ばばばばっ、馬鹿なッ!? 竜殺しが可能な冒険者や軍で動ける者はッ、この国にはもう存在しない筈――」

『敵襲――ッ! 敵襲――――ッッ!』

「――はぁぁぁぁぁぁ~~ッ!?」


 彼がイビルアイに向かってそうのたまっていると、今度は本陣襲撃の情報が届いた。

 彼は混乱で思考が止まりかけたが、急いで周囲に指示を出した。


「――ク、クソッ、クソッ! 次から次へと! ええい、本陣を捨てて逃げる他ありません! 行くぞ皆の者!」

『ハイッ!』

「さぁさぁ、王よお立ち下さい! 私と共に後方へ――――」


 ウィローは王や近衛兵を連れての逃亡を図る。

 ……しかし、たった一通だけ、その邪魔をする情報があった。


「ギギギ! ウィロー様! 迂回部隊から速報! 速報!」

「おほほぉっ! 教えなさい!」


 イビルアイは貯めるように目を瞑った後、こう叫んだ。



「我等、敵本陣ヘノ侵入ニ成功セリ! ローワント、参謀達ノ捕縛ニ成功セリ~~~~ッ!」

「なぁんとぉっ! ははは……あーっはっはははははは!」



 大笑いしたウィローは、安堵した表情でドカっと椅子に座り直すと、本陣強襲を仕掛けている敵目掛けてこう叫んだ。



「ハハハ――――聞きなさい突撃馬鹿共ッ! この戦争はッ、残念ですけど私の勝ちですよぉ――――っ! ローワンと参謀を殺されたくなければ、大人しく投降しなさ――――い! アーッハハハハハハ――――」



 彼はそのまま大笑いを続けたが、イビルアイからの追加情報で困惑する事になった。



「ギ――ギ、ギ? 主戦場ヲ抜ケテ、敵本陣ヲ直接偵察シタ分身カラノ情報――――!?」

「ハハハ――――」

「迂回部隊ノ姿、敵本陣ニ在ラズ! 更ニ、姿ヲ現シタ分身体ニ向カッテ、ローワン・参謀達ガ手ヲ振ッテイマス!」

「ハハ――……は? え?」



 流石のウィローも思考が止まって、隣のイビルアイを見た。

 イビルアイはハビリス村に侵入した迂回部隊の映像と、先ほど送り込んだ分身の映像――ハビリス村で手を振るローワン達の映像を交互に見せた。



「ウィロー様、偽物ハドチラデスカ!? 判断デキマセン!」

「は?」



 彼も思わずぽかんとした。

 どちらもイビルアイが実際に見ている映像なので、判断が付かないのだ。

 だがそのネタばらしは、迂回部隊側の映像の続きを見る事で分かった。


 ローワンと参謀達を捕らえた彼らは、なんと――――



『さぁ主力兵よ! 敵城の門戸は開けた! 存分に略奪すると良い――――!』

『ウオオオ――――ッ!!!』

「はぁぁぁ~~~~~?」



 既に存在しない砦の門を開けて、主力部隊を内部へと招き入れたのだ。

 つまり真実は――



「え? 私はずっと、騙されていた……? ありもしない情報に……?」



 ――迂回部隊は何の役にも立っていなかった、という事になる。

 イビルアイに何かしらの幻覚を掛けられたのだろう。



「では、テスタ村での戦果も……?」



 そう気づいた途端、がらがら、と音を立てて“勝利”の文字が崩れ落ちた。

 気が抜けたのか、手に持っていた指揮棒をぽとりと落とす。


「「「ウォォ――――ッッ!!!」」」

「何ィィ――――――ッ!?」


 更にそのタイミングで、敵の集団が本陣へとなだれ込んできた。

 陣幕を突っ切って現れた百人ほどの集団は、ウィローにとっては馴染みのある顔ぶれだった。


「相や失礼! 本陣強襲であります!」

「よう、また会ったなウィロー!」

「我ガ父ヲ返シテ貰ウゾ!」

「「「王ヲ返セ――!」」」


「メッ、メスガキィィィ……ッ!」


 彼にとっては忌々しい怨敵であるクーゲルに、反逆者として後を追っていた王の息子のシバ、そして生産職のオークと農奴のハーフエルフ達だった。斬鬼丸だけは新顔だ。

 ウィローは歯ぎしりをしながら、悔しそうに呟いた。



「迂回部隊の工作も貴様らが……ッ、きッ、貴様らはいつもいつもいつも私の邪魔ばかりしおってぇぇェ――――ッ!」

「いや、それも終わりだ。もう逃がさんぞ」



 クーゲルはウィローに銃口を向けた。

 斬鬼丸もシバ先遣隊も一様に剣先を向ける。



「くっそぉぉ――……ッ!」



 この場を何とか切り抜けようとするウィローは、周辺を睨んで、立ち上がり損ねた王――オークキングの巨体に目を付け、咄嗟に背後へと飛び込んだ。


「ッ、……――とぉっ!」

「させるか!」(パァンッ!)

「クゥッ――」(ヂッ……)

「!」


 即座に反応した筈のクーゲルの弾丸は、彼の頬を掠めるだけに終わり、仕留める事が出来なかった。

 クーゲルは一瞬だけ眉を顰めると、オークキングの背後に隠れたウィローを煽った。


「……おい、出てきなウィロー。往生際が悪いぞ」

「全力でお断りしますよォッ! 何故なら私は、オークのために生きなければならないんです! 貴方達のような愚図と違ってねェッ! ハハハハハ――――!」

「チッ……」


 クーゲルは舌打ちをしながらマスケット銃を構え直す。

 ウィローは今この隙を逃すまいと、周辺の近衛兵、そしてオークキングに向かって叫んだ。


「おい近衛兵! 私と王を守りなさい! そして王よ! 私が逃げる時間を稼ぎ給え――――!」

『ハ、ハイッ!』

「グ、ウググ……!」


 指示を受けた近衛兵達――数にして三十人が王とウィローの近くに集まり、地面に胡坐を組んで座っていた王はようやく腰を上げる事が出来た。

 オークキングは背中に担いでいた大斧を抜くと、先遣隊をギロ、と睨む。


「「――」」


 そこでシバと斬鬼丸は、事前に打ち合わせたかのように顔を見合わせて頷くと、数歩ほど前に歩み出した。



「では」

「ココカラガ……」



 斬鬼丸はシバから投げられた斧を使って二刀流の構えを取り、シバは腰に携えた新たな獲物――黒鋼の刀を鞘から抜いて正眼に構えると、



「拙者達の」

「最後ノ戦イダ」



 たった二人で年末大将戦の大一番――オークキング奪還戦を開始した。

諦めの感情で書きました。

もう書けないのはどうしようもない。


次話は12月28日。午後10時~11時です。

24時制で22時~23時。

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