251 年末大将戦 承句③ 【臨時参謀総長の演説 - 反転攻勢開始 - ???】
「――もう一度言う。こんばんは、連合防衛軍の諸君」
ローワンはこの声量に決めた。
彼は少し間を置いた後、ゆっくりと話し出した。
「敵の力はとても強大で、何度も苦境に立たされた。
何処からともなく湧き出す新手に心底怯えさせられた。
ストーンゴーレム軍が底を尽き、指揮官リズールの生み出す量産型が前線を支えている今、
この砦が陥落するのも時間の問題だろう」
連合防衛軍は一様に顔を伏せた。悔しいのだ。
どれほど頑張ろうとも、これ以上の籠城は出来ないと分かったからだ。
その反応を織り込んだ上で、彼はこう言い放った。
「しかし安心したまえ――我々はようやく勝利した」
その瞬間、連合防衛軍は一斉に顔を上げた。
どういう事だ、と。
「数で負けようとも練度で負けようとも、敵の奇襲や援軍すらも撃滅し、ここまで耐えて見せた。
そしてついに――――ついに敵軍の底が見えた。敵に予備戦力は居ない。
残るは北方、ウィロー直属の軍だけだ。――もう言わずとも分かるな?」
連合軍に希望の火が灯る。
彼らの表情は和らぎ、瞳が少しづつ輝き始めた。
ローワンはようやく本題に入った。
「――今から君達は、この戦争に終止符を打つ一大作戦を実行する事となる。
君達は混成軍となり、敵本陣目掛けて真っ直ぐに突っ走る。
……そして、“混成”という言葉は新しい意味を持つ。
人種の違いを乗り越えて、一つの目的を達成するために混ざり合うのだ。
これから君達は自由と平和のために戦う。
ハビリス族の諸君は、この戦争を終わらせて平和な日々を送るため。
オークの諸君は、ウィローによる圧政や弾劾から逃れ、生き延びるために戦うのだ。
ハビリス村で――オークの里で――引いては、この地域で生存していく権利を守るために。
だからこそ12月29日から30日は、我々の新たな祝祭日となるだけでなく、
オーク・ハビリス族の両名が、断固たる決意を示した日として記憶されるだろう。
それが今日――――統一国家【ハイブリシア】の建国記念日だ!」
『ウオオオオオオ――――――――――ッッッ!!!!!!!』
演説終了と同時に、連合防衛軍は勝鬨の声を上げた。
人間・オーク・ハビリス・ハーフエルフ族だけではなく、この世界に存在する全ての亜人種を受け入れる一大国家【ハイブリシア】の建国記念日が宣言されたとあって、全員が期待と興奮に満ち溢れた顔をしていた。
しかしローワンの話にはもう少しだけ続きがあった。
彼は『静粛に』と全軍に伝えると、臨時参謀総長としての言葉を伝えた。
「……そして、再び我等を――統一国家【ハイブリシア】を害する者が現れたならば!
我々は徹底的に抗い、生き残り、断固として我を張り続ける事もここに宣言する!
何故なら……そうしなかった結果がこの総力戦だからだ!」
ローワンは怒気を強めながら、天を指差してこう叫んだ。
「さぁ諸君、反撃の時間が来た!
今ここに作戦名、“常識破り”の開始を宣言する!
総員、戦闘を開始せよ――――!」
『ウォアアアア――――――――――ッ!!!!』
命令を受けたオーク・ハビリス連合防衛軍改め、混成突撃軍は、参謀の指示に従って作戦位置に移動する。
その中には、ナターシャ・シュトルム・斬鬼丸の姿も見えた。
◇
その頃、ウィローの本陣に一つの情報が入った。
「ギギギギ! 報告ー! 報告ー! 敵前逃亡シタ傭兵部隊、アンノウンノ追撃ヲ受ケテ全滅! 全滅!」
「チッ……所詮は金で雇った傭兵ですか。大した役には立たないと分かっていましたが、ここまで酷いとは……」
ウィローは苛立ったが、至極当然のように受け入れていた。
何故なら、彼らが贈呈品を活用していないと知っていたので、少しも期待していなかったのだ。
しかし吉報もあった。
「ギギギ! 迂回部隊カラノ報告デス!」
「何ですと!? 映像で見せなさい!」
「了解シマシタ!」
イビルアイは画面を切り替えると、森の中――旧道を走りながら突き進む側近と迂回部隊を映し出した。
側近はイビルアイの変化に気付いたのか、コチラを見ながらこう答えた。
『ウィロー様! 我々迂回部隊は、敵の罠を掻い潜りつつ南西の旧道から侵攻中で御座います! 傭兵達は罠の位置を知らせる程度にしか役に立ちませんでしたが、やはりしっかりと訓練されたウィロー様の主力部隊は強く、敵の攻撃を受けてもビクともしません! 余裕です!』
「おぉっ! そうですかそうですか!」
ウィローは満面の笑みで喜んだ。
やはり私の軍は素晴らしい。傭兵と比べてとても優秀だ。
厳しく調教した甲斐があった。
「それで、いつ敵の本丸に侵入出来ますか!?」
『あと十分ほどなので……もう少しで御座います! では、ご武運を!』
側近が敬礼したと同時に通信は切れた。
映像は再び、北方の最前線に戻る。
(ふっふっふ……どうやら傭兵達が玉砕してくれたお陰か、迂回部隊が有利に事を進められているようですね。それなりには役に立った、と評価を上げておきましょう)
ウィローは袖で口元を隠した。
しかし、イビルアイからの報告はまだ続く。
「ギギギ! 前線カラノ報告デス!」
「何ですか!? 早く教えなさい!」
それは――――
◇
『オオオオ――――……!』
『――――……!』
そして北方の砦前にて。
ハビリス族の操るストーンゴーレム軍は既に全滅し、リズールによる劣化ストーンゴーレムの量産によって前線が支えられていた。
しかし――
「ナンダコイツラ! 馬鹿ミタイニ柔ラカイゼ!」
「マルデ豆腐ミタイダ!」
「~~~~……!」
――前にも伝えた通り、物質創造で創られた物質はとても脆い。
量産型ゴーレムは鉄の盾ごと切り裂かれて、出来る端からドンドンと切り崩されていった。
そして遂に……
「ハハハハ――! ヤット砦前ダ――――!」
「壊セ壊セ――――!」
量産型ゴーレム軍は、敵主力――ある程度は数を減らせたと言っても、まだ四千も残っているオーク軍にすり潰されて、遂に砦前への到達を許してしまった。
主力軍を影から支えていた隊長格のオークは早速、砦前の兵士に指示を飛ばす。
「最前線、一斉攻撃ダ! “攻城ノ構エ”――――!」
「「「「オオオ――――!」」」
最前線のオークは両手で斧を振り上げた。
攻城の構えとは、岩を割る時に使う“破砕の一撃”を攻城戦に活用した物だ。
この技の威力を以てすれば、どれだけ要塞が堅牢だろうと歩兵だけで突破できるようになる。
ウィローが初手で全軍突撃させたのも、この技があるからこその判断だった。
「“攻撃”――――!」
「「「ウォオオ――――――――ッッ!!!!」」」
隊長の攻撃命令と共に、彼らは斧を勢いよく振り下ろして、砦の城壁を破壊した。
バキバキ、ズドンッ、と大きな音を立てて崩れ去っていく。
すると突然、砦全体がキラキラッ、と白く光り――――
『エッ――――』
チュド――――――――ン!
『ギャアアアア――――――……!!!』
――――謎の大爆発を起こして、オーク軍を吹っ飛ばした。
[本 社 爆 発]
[爆破オチなんてサイテー!]
「ギギ、ギィ――――ギッ……――――」(シュゥゥ……)
その威力と爆風は余りにもすさまじく、最前線にいたオークは跡形もなく吹き飛び、上空を飛び回る種子鷹達や、戦場を俯瞰していたイビルアイは吹っ飛ばされた勢いで戦争不能となるレベルだった。
「イテテ……」
「クソ、一体ナニガ……!?」
陣形を崩され、中央に大穴が開いたウィローの主力部隊は、爆発の理由を求めて砦があった場所――北方の抜け口を見た。すると――――
『進軍セヨ――進軍セヨ――――!』
「「「―――!?」」」
――もうもうと立ち込める煙と、沢山の青い光が戦場を照らす中、彼らが姿を現した。
『我等ハ無敵ノ軍成リテ、悪ヲ滅ボス剣ナリ! 恐レヲ捨テテ進軍セヨ――――!』
『ウオオオオ――――――――ッ!!!!』
「「「何ッ……!?」」」
箒に乗ったナターシャを筆頭に、斬鬼丸・シュトルムが続き、その背後からは王太子シバとハビリス族のハルヤが率いる混成軍がゾロゾロと走り出して来た。
「ナ、ナ……!?」
「奴ラ、防衛ヲ捨テテ……!」
その数、総勢二千名。後方勤務者を含む全戦力だ。
更に北の塔から幻想結界を維持したままのリズールと、銃を降ろしたクーゲルも降りてきて、その戦列に参加した。
彼ら混成突撃軍は長蛇の列を組むと、未だに体勢を立て直せていない敵オーク軍の中央突破を目指した。
『敵本陣目掛ケ、突キ進メ――――!』
「クッ……!」
しかし、ウィローの主力軍も練度では負けていない。
隊長格が即座に立ち上がって、全軍に向かって指示を飛ばした。
「全軍ニ告グ――――ッ!! 敵ノ侵攻ヲ食イ止メロ――――ッ!!!」
『了解――――ッ!!! ウオオ――――!』
ウィロー軍は不安定な陣形のまま敵軍を迎え撃つ事になる。
ナターシャはそれに対応すべく、こう呟いた。
「――“閉塞世界変革術式 : 泡沫乃夢”」
すると世界が静止して、ナターシャ以外は誰も動けなくなった。
音が消え、風が止み、両軍が鬼気迫る表情で走るポーズを取りながら停止している。
「おぉ、ホントに出来た……」
少しだけ驚いた少女は、改めて自分のステータスを開いて、
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所持スキル一覧
剣術Lv0 魔法適正Lv4 会話術Lv1
回避術Lv2 精神耐性Lv1
詳細鑑定Lv1(MP100)
神の加護(魔法)Lv3:Unique.
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・
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神の加護(魔法)のカッコ部分をタッチ。
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魔力創造(厨二):
一人の男の稀代の妄想力が神の叡智と力によりその妄想を具現化させるまでに至った物。
その力は神すら滅ぼし、時間すら逆行する……そう、我が魔眼がある限り不可能な事象など無い。
何故ならこの力を持つ俺こそが世界の破壊者であると同時に再誕者であるからだ。
全ての世界線を見渡し限りなく0に等しい可能性の先にある事象すら俺が顕現させて見せよ(略)
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(略)を押して全文を表示させた。
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魔力創造(厨二):
一人の男の稀代の妄想力が神の叡智と力によりその妄想を具現化させるまでに至った物。
その力は神すら滅ぼし、時間すら逆行する……そう、我が魔眼がある限り不可能な事象など無い。
何故ならこの力を持つ俺こそが世界の破壊者であると同時に再誕者であるからだ。
全ての世界線を見渡し限りなく0に等しい可能性の先にある事象すら俺が顕現させて見せよう。
愚者に叡智を、奴隷に地位を、才無き者に才を与えるのが俺の――組織の長としての使命だからな。
――おっとすまない、部下からの連絡だ。また何処かで会おう。
全ては抗う人々のために……ル・メンダス・リスティータ――――(ピッ)
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更にここで(ピッ)という文字を押す。
そうする事で真の隠しメッセージが表示されるのだ。
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――ほう?
この文章を読んでいるという事は、ようやく自身の中二病と向き合えたようだな。
よくやったぞナターシャ。神である私が直々に褒めてやる。
喜ぶが良いぞ。
……そして、だ。
まず、お主に謝っておく事がある。
実はな――六歳の洗礼だけでは、お主の才能を完全に開花させられなかった。
まぁ、とにかく、
『“閉塞世界変革術式 : 泡沫乃夢”』
と詠唱したら少し待て。
詳細はそこで語る。
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「はぁー……」
先に言っておいて欲しいよね、そう言う大事な事は……
少し呆れていると、隣から女性の声がした。
「――待たせたな、ナターシャ」
「待ってたよ」
気だるそうに横を向くと、金髪で、白い布で身体を包むように隠した巨乳の女性――俺を転生させてくれた神様が立っていた。
「どういう事が詳しく説明してくれる?」
「……分かった。全て教えてやろう」
ナターシャは止まった世界の中で、静かに覚醒していく。
遅れてごめんなさい。
次話は12月19日。午後8時~9時です。
24時制で午後20時~21時。




