238 テスタ村防衛戦 序章 【作戦部隊三人の情報開示 — 開戦】
表示されたステータスは下記の通りだ。
視聴者コメントは、それぞれの気になる部分について言及した。
―――――――――――――――――――――――
Lv19/99 名:ユリスタシア・ナターシャ
年齢:8歳 職業:魔法使い
称号:合成の魔女(New!)
300/8099exp 利き手:両手
HP395/395 MP50000/50000(Ex)
ATK:48 VIT:395
STR:6 DEF:109+300
INT:300+210 RES:200+200
DEX:4 AGI:100
SPD:200 LUK:5043
武器1(左):なし
武器2(右):黒・猫・魔・導
頭:魔女帽子・魔封眼帯
体:魔導服
左腕:魔封包帯
右腕:なし
腰:魔導服
脚:黒タイツ
足:革のブーツ
アクセ:指輪(2)ブローチ(1)
乗り物
魔女箒:ウィッチブルーム・スター
魔法適正(属性別)
火:600 水:500 風:500 土:300
雷:300 氷:200 光:300 無:500
闇:100 樹:100 etc...
―――――――――――――――――――――――
所持スキル一覧
剣術Lv0 魔法適正Lv4 会話術Lv1
回避術Lv2 精神耐性Lv1(New!)
詳細鑑定Lv1(MP100)
神の加護(魔法)Lv3:Unique.
熾天使の紋章:Unique
????:Passive
???の血筋Lv5:Unique
称号スキル
魔女の熟練操縦術(箒):Rare
装備ボーナス
終式封印
(INT+200,DEF+300,RES+200,蓄積強化)
―――――――――――――――――――――――
「お、表記が増えてる」
ナターシャはステータスを見て驚いた。
箒操作が上手かったのは、称号をゲットしたかららしい。
[合成の魔女(New!)]
[MPすげー]
[防具つっよ]
[STRが順当にロリっ子]
[腕力よわよわ]
[DEX4ww]
[器用さ死んでて草wwww]
[LUKアホみたいに高くて草w]
[圧倒的強運]
[DEXが上がらない理由よ]
「うるさいほっとけ! 不器用で悪いか!」
そして、自由なコメント欄に軽く怒った。
[ごめん]
[ライン超えたな]
[ゆるして]
[ごめん]
[ごめん……]
視聴者もちゃんと謝った。
そうして、“ナターシャにはDEX煽りが効く”という暗黙の了解が出来た。
次はシュトルムのステータスだ。
―――――――――――――――――――――――
Lv31/99 名:ヘルブラウ・シュトルム
年齢:14歳 職業:魔双剣士
称号:蒼穹の嵐
4998/20900exp 利き手:右手
HP1000/1000 MP700/700(Ex)
ATK:412 VIT:500
STR:206 DEF:300+80
INT:200 RES:300+100
DEX:405 AGI:160
SPD:600 LUK:80
武器1(左):なし
武器2(右):なし
頭:なし
体:魔導服(特別製)
左腕:なし
右腕:なし
腰:魔導服(特別製)
脚:ニーソックス
足:長い軍靴
アクセ:なし
魔法適正(属性別)
火:0 水:0 風:600 土:0
雷:0 氷:0 光:0 闇:0
―――――――――――――――――――――――
所持スキル一覧
剣術Lv7 剣技Lv6 体術Lv6 身体強化Lv6
魔法適正Lv7 会話術Lv1 中二病Lv6
泥再生:Passive
召喚指令・双対喰刃:Unique
称号スキル
疾風迅雷
(風魔法威力上昇,SPD上昇)
???
(???:???)
―――――――――――――――――――――――
「おっ! 見ろジークリンデ! 私も増えているぞ!?」
「ホントだー」
シュトルムのステータスにも追記があった。
もしかしたら天界でバージョンアップされたのかも。
[うーんこの]
[これは両刀使い]
[困る]
[めっちゃ器用]
[裁縫上手そう]
[これが標準ステ?]
[泥再生?]
[泥再生って何ですか?]
[>泥再生 シュトルムちゃんはゴーレムだぞ]
「――なっ!?」
そしてもちろん、彼女もコメント欄に怒った。
「なっ、名前にちゃんを付けるなぁっ! ばかっ!」
[ごめんwwwwww]
[尊い]
[この破壊力よ]
[くそかわ]
[俺も罵倒されたい]
ただちゃん付けを恥ずかしがっただけだった。
視聴者は彼女のシンプルな罵倒に悶えた。
最後は斬鬼丸だ。
―――――――――――――――――――――――
Lv1/25【Lock】 名:斬鬼丸
年齢:0歳 職業:冒険者
称号:剣の頂きを目指す者
3000/8000exp 利き手:左
HP300000/300000 MP115/115(Ex)
ATK:6000 VIT:1000
STR:1000+300 DEF:3000
INT:15 RES:100
DEX:1000 AGI:760
SPD:3000 LUK:10
武器1(左):ショートソード(高級品)
武器2(右):なし
頭:聖鐵の兜【Lock】
体:聖鐵の西洋鎧(肩・胸・上腕)【Lock】
左腕:聖鐵の篭手(肘・前腕・左手)【Lock】
右腕:聖鐵の篭手(肘・前腕・右)【Lock】
腰:聖鐵の腰当て【Lock】
脚:聖鐵の脚当て(腿・膝・脛)【Lock】
足:聖鐵の鉄靴【Lock】
アクセ:綻びた王国騎士の首飾り【Lock】
魔法適正(属性別)
火:0 水:0 風:1 土:0
雷:0 氷:0 光:0 闇:0
―――――――――――――――――――――――
所持スキル一覧
身体能力Lv10 身体強化Lv10 回避術Lv8
剣術Lv10 剣技:LvEx 見切りLv9
剣神(疑似):Unique 無銘の剣術:Unique
剣技吸収:Unique 鎮魂火:Unique
精霊憑依:Unique ???:Unique
人の精霊:Legend
風精霊の加護:Rare
称号スキル
修羅道:Unique
(幸運減少、トラブルメーカー)
装備ボーナス
無名騎士の霊鎧【Curse】
(Lv制限、防具固定、全ステータス減少、???)
聖鐡の祝福
(鎧破損時:自動修復)
―――――――――――――――――――――――
「「……」」
ナターシャとシュトルムは、彼の追記を見て思わず絶句した。
コメント欄も似たような感じだった。
[は?]
[え?]
[ズルじゃん]
[なお呪い]
[呪われすぎ草w]
[修 羅 道]
[諸悪の根源]
[戦争の元凶]
[全員の幸運打ち消してそう]
「いやぁ、それほどでもないであります」
斬鬼丸は何故か照れた。
視聴者は[お、おう][せやな][いや褒めてないが?]と戸惑いを返した。
「……な、なるほど? 斬鬼丸は、有名になるチャンスが舞い込みやすいスキルを持っている訳だな?」
シュトルムは何とか好意的な意見を示した。
合成の魔女っ娘も同意するようにうんうんと頷く。
表情から察するに脳死肯定だ。
「然り。信仰の少ない拙者にとっては吉報であります。艱難辛苦を乗り越えるべく、精一杯頑張る所存でありますよ」
それを受けて彼は威張った。
視聴者は思わず[良いから早くその称号変えろ]と不満を漏らした。
当然である。
「委細承知。拙者としても、この作戦に不幸があっては困るであります」
斬鬼丸はコメントに従って、称号を【剣聖】に入れ替えた。
剣技Lv10になると自動で貰える称号らしい。
称号スキルに目立った効果はないようだ。
強いて言うなら剣術強化くらい。
「これで今後、困る事はありますまい?」
「良いね!」
「良いと思うぞ!」
[えらい]
[よくやった]
[かしこい]
[安心した]
変更を確認した事で全員が安堵した。
少しだけ空気が緩む。
『敵が来たぞォォ――――ッ!』(カーン、カーン――!)
「「「――!?」」」
丁度その時、テスタ村方面でも開戦の兆しが見え始めた。
コメント欄は当然のようにパニックになった。
あまりにもタイミングが良すぎたのだ。
◇
時刻は22:27。
ゴブリンの軍勢が迫るテスタ村。
内部は篝火のお陰で明るいが、戦闘時に倒れると危険なので火と薪を使用した物は少ない。
代わりに、ギルドから提供された発光石を光源に使用していた。
「女子供はちゃんと逃げたか? ウチの婆ちゃんは?」
「大丈夫だ、郊外の冒険者ギルドに魔物避けの安全地帯があった。その魔法陣の中に――――」
村の自警団は、家族である村人達の避難状況を確認していた。
彼らの近くには緊急クエストを受注した冒険者達が居たが、表立って頼ろうとはしなかった。
「そこの護衛はどうだ?」
「子供魔導士の置き土産がある。大丈夫だ」
「本当に?」
「あぁ。ギルドの連中曰く問題ないらしい。一体だけ馬鹿みたいに強いんだと」
「チッ、余所者の評価か……」
「だが信じるしかあるまい……」
「なるほど……?」
ただ、会話が筒抜けだったので、冒険者側もちゃんと対応して動く事が出来た。
「――ディビス、聞いたか? どうする?」
「あぁ聞こえたぜカレーズ。だが、そっちはギルドの連中に任せよう。援護は緊急時だけだ」
「分かった」
そしてディビスは、その地頭の良さから、一時的に冒険者達の全体指揮を担っていた。
彼自身はとても嫌がったが、他に適任者が居なかったのだ。
(こういうのってギルド職員の仕事だと思うんだがな……)
何故なら、冒険者が脳筋ばかりという事情もあるが――実はテスタ村支部、新人職員に探索系・回復系の人材を優先採用した上に、肝心のギルドマスターがまだ決まっていないのだ。
探索系の白金級冒険者と交渉中らしいが、それもいつになる事やら。
(そもそも、なんでここのギルド長が決まってねぇんだよ。何かおかしくねぇか……?)
それもこれも、あのナターシャ陣営が暗躍している気がしてままならない。
だが実際はフミノキース店の都合で遅れているだけで、関与はしていないとここに明言しておく。
彼が考え込んでいると、ダリスが彼の背中を叩いた。
「フンッ、今回ばかりは諦めろディビス。……だが、安心しろよ? お前が戦闘指揮をするなら、戦線はこの俺様がしっかりと支えてやるぜ」
「おう期待してるぞ。――まぁ、仕方ねぇか。はぁー……」
ディビスは諦めたようにため息を付いて、テスタ村の東方面――拒馬や防護柵が置かれた、主戦場方向を見る。
遠くにはゆらゆらと、大小の炎が揺らめいていた。松明の炎だ。
(敵……!?)
同時に、村の物見櫓から警戒音が響く。
『敵が来たぞォォ―――ー!』(カーン、カーン――!)
「「北に集まれ――――!」」
「「陣を組めェ――――!」」
自警団は横陣を敷いて、最前線の左舷に居座った。
主力武器は槍。予備武器に剣を持っている。
「やっとお出ましか……!」
中央、右舷を塞ぐディビス達冒険者も抜剣した。
弓兵のカレーズは民家の屋根に飛び乗った。
冒険者陣営は、各々のチームワークを重視する目的で魔法使い・剣士混成の部隊となっている。
『ゲヒ、ゲヒ、ゲヒヒヒ……!』
『ゲヒャハハハ……!』
下卑たような、嫌な笑い声の合唱が聞こえてくる。奴らだ。
死の恐怖よりも、簒奪や略奪の喜びが打ち勝った奴らの邪悪な笑い声だ。
遠くに見えるゴブリン達は、数にして百体ほど。いや、二百か?
暗くて総数が分からない。
『ゲヒ、ヒ……――ヒヒ――――!』
片手に棍棒を、一部は松明も握りしめて平原を歩く彼らは、こちらの警戒態勢を視認すると、少しづつ駆け足に変わっていって――――
『ゴヒャッハァァ――――――――ッッ!!!』
――――――遂に、全速力で走り始めた。
数匹が感極まったのか、松明を後方に投げ捨てる。
「――……ッ!?」
その瞬間、ディビスの背筋におぞけが走った。敵軍の全貌が見えたからだ。
敵のゴブリン軍には、こちらと同数に近い騎乗部隊に、明らかに巨躯のゴブリン上位種が――――
「ディビス指示を出せッ! 早くッ!」
「――――はッ!?」
彼はカレーズの声で我を取り戻し、仲間全員に聞こえるように叫んだ。
「チッ……! お前ら迎撃だァァッ! 第一波を凌げば援軍が来るぞォ――――ッ!」
「「「シャアァァァァ――――――――ッッッ!!!」」」
冒険者達は雄叫びを上げ、自警団は息を飲んで、先遣隊のゴブリンを迎え撃つ。
次話は10月30日。夜8時~9時です。




