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22 Lv上げに勤しむ少女と初めての父の鍛錬

筋肉痛から脱却し、動けるようになってから更に2か月が経ったナターシャ。

今では元気いっぱいに森を散策して魔物を瞬殺しています。

そんなナターシャの日常をどうぞ。

 兄と会合してから二か月が経ちました。どうも、赤城恵(ナターシャ)です。

 最近時間が経つのが早いですね。リハビリを無事終えた私は今森へ散策に来ています。

 夏が過ぎ、少しだけ肌寒くなってきたこの季節。森は既に紅葉を迎え、この後には冬が待っている事を知らせます。


 今日の私は母親お手製の赤とオレンジを基調としたフードが付いた厚手の服と長いスカート、脚には脛を隠すほど長い茶色いブーツを履いています。

 るんるんと声を出して、音を立てながら散策するその姿は落ち葉の妖精のようで、歩くその姿はとても可愛らしいと父から大好評でした。


 そんな風に楽しみながら歩いていると目の前に怪しい影が。

 なんでしょうか、気になりますね。近づいてみましょう。

 ナターシャは楽しそうに、落ち葉を蹴散らしながら近づいていきます。

 その大きな音に気付いた影は声を上げ姿を見せます。


「ブゴゴッ!」


あ、ブロックボアーだ! 亥年ですね新年明けましておめでとう死ね!


「ブゴアーッ!?」


 ナターシャは容赦なく呪縛麻痺パラライズからの雷撃一閃(サンダーボルト)で大猪の息の根を止める。

 猛烈な電撃を受け、ナターシャの背丈とほぼ同じ高さの巨体がぐらりと崩れ落ち、転倒。

 茶色と紫と石の入り混じった毛並みは所々黒く焦げ付き、ナターシャのふとももほどの太さがある二本の長い角は、倒れた衝撃で片方が真っ二つに。


 開いた大猪の口からはだらしなく舌が垂れさがり、一切の動きを見せない。よし、討伐完了だ。


「……これで合計30匹。今週のノルマ終わりっ」


 ナターシャはスマホを取り出すと討伐数をメモ帳に記録していく。

 記録を終えれば自身のアイテムボックスの中に大猪の巨体を収納する。

 ほっとくと面倒そうだしね。


 現在ナターシャは将来を見据えてのレベル上げ中。

 厨二病を解消するのも大事だけど、それより俺TUEEEEE出来ないとか転生者の風上にも置けないんで。


 ……なんで集敵魔法使ってから範囲魔法してないんだって?

 うるせぇこっちだって必死に考えてるんだよ魔法を! そう簡単に出来るもんじゃないんだよ!


 そして取り合えずステータスを確認してみると現在のLvは8。スキルに変化なし。

 攻撃力とかは……って面倒だ、ステータス見てもらった方が早いか。


 ------------------------------------------

 名:ユリスタシア・ナターシャ  年齢:7歳


 Lv8/99   HP245  MP121(Ex) LvUPまで47/768


 攻撃力:40      武器:なし

 防御力:21      帽子:フード(服付属)

 魔法力:70      上着:フード付きコート

 魔法防御:51    ズボン:厚手のスカート

 敏捷性:50       靴:長いブーツ

 運:190       アクセ:なし


 -------------------------------------------


 所持スキル一覧


 剣術Lv0 魔法適正Lv3 会話術Lv1 神の加護(

 魔法)Lv2 ???の血筋Lv5

 

 -------------------------------------------


 はい。皆が思ってるより強いんじゃない?

 魔法適正は意外と早くLv3になりました。まぁそれでもおよそ2か月かかったけどね。

 ステータスは攻撃と防御の伸び率が悪くて、魔法と魔法防御の伸びが良いのが魔法使いって感じがして良い。


 ただ運。なにこれ。神の加護のせいかわかんないけど伸び率オカシイでしょ。

 Lv8で190ってヤバすぎ。

 電卓で計算したけどLv1上がるごとに+24くらいとか意味わかんねぇよ。バグってんじゃねぇの?

 更に計算したらLv42辺りで999超えるってよ。下手なゲームなら999でカンストだぞ。

 ……まぁ、999になってもまだ伸びる可能性もあるけど。


 確かに運が良い分には困る事無いけどさぁ。ホント助かるけど、良いのだろうかこれで。

 恵まれ過ぎていて少し不安になるナターシャ。


 いつか鑑定の魔法でも創って他人と自分のステータスを比べて是非を確かめようと思いつつ、スマホの電源を落として辺りを見る。

 木々の隙間から差し込む光は紅い。もう夕暮れのようだ。


「……あー今日も疲れたなぁ。お家帰ろっと」


 ナターシャは再びスマホを起動。

 最近天使ちゃんが[新配信だよー♪]と送ってくれた“テンリン‐迷える子羊をいつでもNAVI‐”という名前の地図アプリを起動する。

 ……多分地図会社の〇ンリンさんは関係ないと思う。多分。

 もし関わってるとしたら凄い事だと思います。異世界測量屋さん。カッコイイ。


 あぁ、家の位置は既にマーク済みです。オートNAVI機能で道に迷う心配もナッシング。俺はただスマホを見ながら先へ進むだけ。

 たまに出会う道端の魔物は雷光破砲(ライトニング)で蒸発させつつね。


 人工衛星無いのになんでNAVI出来るんだって?

 そりゃあお前、天界から直接下界覗いて位置特定してるんだろうよ。

 ……あれ、常に天界から見られてるって事はプライバシーが無いのでは……と疑問に思ったが振り切り、家に帰る。


 自宅に着くと、母が玄関の前で俺の帰りを待っていた。

 ナターシャがるんるんしながら近付くと、今日の出来事を聞いてくれる。


「おかえりなさいナターシャ。今日は何処に行っていたの?」


「村の近くの草原ー!」


「あら、そうなの。でも、森は危ないから近づいちゃ駄目よ?」


「はーい!」


 俺は当然のように営業スマイルで嘘を並べつつ、母と一緒に家に入る。


 すると今度は、父が待っていた。

 壁に寄りかかり、長い木刀を肩にかけている。


「……」


(えぇ……)


 母はナターシャに手を振ると、キッチンへと向かう。

 俺も手を振り返し、不思議そうな表情で父を視認。

 ……なんでこんな所で黄昏てるんだろうお父さん。


 ナターシャはその場ではてなマークを浮かべて停止していたが、父が待っていたと言わんばかりにこう告げる。


「……ナターシャ、元気に動けるようになったね」


 どうやら俺の事を気遣ってくれるらしい。

 んー……取り合えず返答しつつ、ここに居る理由を聞くか。


「うん。もう元気だよ。どうしたのお父さん、剣なんて持って」


「……僕はね昔、一つ考えた事があったんだ」


「うん」


 突然自分語りを始める父。

 トントンと木刀で肩を叩き、目を瞑って話し始める。


「剣を極めた剣鬼が、もし、魔法を使えるようになったらどうなるのか。って」


「うん」


「……僕は昔から剣一筋に生きてきたから、魔法がどうやったら使えるようになるのか知らなくてね。騎士団に入ってから、必死に魔法を習得しようと訓練していたんだ。でも、結局魔法は使えなかった。魔法には、才能が必要だったからね。」


「……うん?」


 話が読めない。一体何の話なのだろうか。


「だから、期待したんだ。もし……僕の子供が、魔法と剣の才能両方を持っている子だったら。僕が夢見た剣術を使えるんじゃないかって」


「……う、うん」


 冷や汗が流れる。嫌な予感がする。


「ユーリカは頑張れば魔法を使えると思うんだ。ただ、長い期間の訓練が必要だと僕は思ってる。だから、使えるようになるまで気長に待とうと思っていたんだけど……ナターシャ」


 目を開け、見つめられる。

 あっ、これ知ってる。先輩とか上司が残業押し付けてくる時の期待した目だ。

 ナターシャは即座に自室への逃亡を図るが、“しかし まわりこまれてしまった!”……ってか、お父さん早い! 動いたの見えなかったよ!?


 そして父はナターシャの前でしゃがみ、両肩を掴んで一言。


「……ナターシャ! 僕と一緒に剣の高みを目指そう!」


「やだ!」


 俺は断固拒否する。顔を横にブンブン振り、不服従の証を見せる。


「頼む後生だ! 僕が若いうちにユリスタシア流剣術を完成させたいんだ! 手伝ってくれ!」


「やだっ!」


「頼むよーナターシャー! 君が僕の理想なんだよー!」


「やだーーー!」


 父が泣きながらナターシャに縋りつく。

 ナターシャな俺は、剣士への道を開かせてなる物か俺は魔法使いになるんだ、と父が喋るたびに拒否の言葉を言って首を振り続ける。

 そんな様子を見ている微笑ましく見ている母が、ファイト、とポーズを見せて……ってお父さんの方を見てる!? ママが味方じゃない!? 嘘だろ!?


 母が敵に回った事に動揺を隠せないナターシャ。その間も父は懇願し続ける。


「お願い! 一回だけ! 一回だけで良いから! 奥義の作成を手伝ってくれるだけで良いから!」


 普段の頼りなさそうな顔が更に倍増した顔で抱き縋ってくる父。

 うぅ、そんな顔しないで。チワワに見つめられるお父さんな気持ちになってしまう……。どうする、〇イフル。

 俺はその必死さに遂に負けを認め、はぁとため息をつき、渋々許諾。


「……分かった。一回だけだからね。」


「っしゃああああああああ!!!!!!」


 リターリスは悲愴な顔から転じて歓喜の表情で立ち上がり、ガッツポーズ。

 母も嬉しそうに微笑んでいる。相変わらず美人だ。


 話はそこで一旦終わりだろうとだれもが思った時、リターリスが声を挙げる。


「よし! 早速やろう! すぐやろう!」


「今から!?」


 ナターシャも流石に驚愕の声を出す。

 明日からとかじゃないの!? 今日もう日が落ちてるけど!?


 父は満面の笑みを浮かべながらナターシャを抱き上げる。

 ただ気負い過ぎたのか焦っているのか分からないが、持ち上げすぎて俵担ぎに。

 ……これお米様抱っこって言うんだっけ。

 そういうの詳しいから知ってるけどやられた側たまったもんじゃねぇなコレ! 不服すぎる!


「ちょっとお父さんこの担ぎ方やだ! 降ろして!」


 ナターシャは必死に拒否の意を表す。

 なんか神父様に水槽パイルドライバーされた時の事思い出すよこの感覚!


「大丈夫ベリアちゃんがご飯作ってくれるまでの時間で終わるから! 大丈夫すぐ終わるから!」


 駄目ですね全然話を聞いていません。頭の中は剣術の事でいっぱいのようです。

 母は通りすがりに「パパ、頑張って!」と応援していた。いつも俺の味方だった母は何処に!?


 足をばたつかせてなんとか降りようとするもガッチリとホールドされていて動けない。

 いや流石に多少は動けるだろとか思ったんだけど、お腹万力で挟まれてるぐらいに動けねぇ! お父さんのパワーどうなってんだよ!

 ちょ、やだっ、今日はやりたくない! せめて明日からにしっ、待っ――


「あ゛ぁ゛ぁ゛ーーーー…………!!!!」


 ナターシャとリターリスの姿は、廊下の先にある裏庭のドアの奥へと消える。

 バタリ、と閉まった扉はその後二度と開かなかったという。


 ……まぁ心配した母が助けに来てくれましたが。

 流石に2時間も戻ってこなかったら心配してくれますよね。うん。


 そしてその日から暫く、ナターシャは笑顔に戻れなかった。

割と雑め。

まぁ次の部につなげる為の導入のような話ですので流し読み程度で。


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