表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
邪気眼少女の極唱魔法(エクスペル) ~異世界転生したらTSした上に厨二病を再発症する羽目になりました~  作者: 蒼魚二三
ナターシャ7歳編 -国と地方と農村と、邪気眼と中二病のヴィアンド-
220/263

219 スラミーへの声帯降福式《ベネディクション》

 次の日、朝日と共に目覚めたナターシャは、やわふわすぎて寝癖がちな髪をシュトルムに梳いてもらいつつ、久しぶりに自分のチャンネルを覗いてみた。


―――――――――――――――――――――


 ユリスタシア・ナターシャch

 チャンネル登録者数2.2万人


―――――――――――――――――――――


「登録者多いなぁ」

「そうなのか?」

「うん。私のチャンネルなんて底の方を漂ってそうなイメージなんだけど」

「それは流石に卑下し過ぎだろう。ジークリンデの容姿は勿論だが、例の――呪われし魔剣(ダーインスレイブ)事件後の言動は、間違いなく世界に通用するぞっ!?」

「あはは、そうだねー……」


 目を輝かせるシュトルムに、つい愛想笑いを浮かべるナターシャ。

 ついでに、最新動画のコメント欄も確認してみた。


―――――――――――――――――――――


 ネームレス 8時間前

 1コメゲットwwww

 イエーイ天使ちゃん見てるー?wwwwww

 グッド4 バッド 返信

 ▽1件の返信を表示


  ☆天使ちゃん☆【異世界公式だよ!】 8時間前

  あー取られたー! 次は負けないからねーっ!

  ぷんっ(。-`ω-)

  グッド1 バッド 返信


 ☆天使ちゃん☆【異世界公式だよ!】 8時間前

 天使ちゃんユニコーン好きじゃないなぁ

 だって12歳以下の子にしか懐かないんだもん

 普段の語尾は『ござる』だし、

 笑い声も『デュフフ』だし

 グッド364 バッド 返信

 ▽20件の返信を表示


  あまぞう 8時間前

  糞みたいな生物で草

  グッド2 バッド 返信


  やきいも 8時間前

  処女厨でロリコンでキモオタとか死ぬべきやろ

  グッド10 バッド 返信


  綾森涼香 7時間前

  @やきいも 他人に簡単に死ねって言ってはいけ

  ませんよ

  ユニコーンだってちゃんと生きてるんですよ

  グッド1 バッド 返信


  やきいも 7時間前

  @綾森涼香 ほなお前にユニコーンやるわ

  グッド0 バッド 返信


  綾森涼香 7時間前

  @やきいも 気持ち悪いのでいりません

  グッド40 バッド 返信


  ボーズ 7時間前

  @綾森涼香 草

  グッド0 バッド 返信


  ヤミルトン 7時間前

  @綾森涼香 草

  グッド0 バッド 返信


  あさ顔 7時間前

  @綾森涼香 あかん草生える

  グッド0 バッド 返信


  ゆーた 6時間前

  @綾森涼香 しょうじきすぎwwwww

  グッド0 バッド 返信


  採火 6時間前

  @綾森涼香 笑ったw

  グッド0 バッド 返信



 まゆみ 8時間前

 私のユニコーンがそんなに気持ち悪い生物なハズな

 い

 あんなイケボなのに

 グッド4 バッド 返信


 えりたん 7時間前

 天使ちゃん嘘だよね?

 上のコメントだけが異世界の現実じゃないよね?

 グッド1 バッド 返信

 ▽3件の返信を表示


  ☆天使ちゃん☆【異世界公式だよ!】 7時間前

  大丈夫、貴方の思うユニコーンを信じて☆

  それは必ず存在するから!

  グッド1 バッド 返信


  えりたん 7時間前

  ありがとう……

  ちょっとだけ落ち着きました……

  グッド1 バッド 返信


  ☆天使ちゃん☆【異世界公式だよ!】 7時間前

  (*'▽')b

  グッド1 バッド 返信


 田中角〇 6時間前

 そもそもなんでロリコンとキモオタを

 発症したんだよユニコーンは

 グッド10 バッド 返信

 ▽14件の返信を表示


  ☆天使ちゃん☆【異世界公式だよ!】 6時間前

  この異世界では昔ね、処女誘引漁っていう手法で

  大量のユニコーンが狩られたの!

  それが絶滅寸前まで続いた結果、ユニコーン達は

  ついに大人の未通女性を信じられなくなって、

  森の奥に引きこもっちゃって、

  そのままキモオタを発症した感じかな?

  グッド334 バッド 返信


  やきいも 6時間前

  @☆天使ちゃん☆【異世界公式だよ!】 

  あまりにも悲しすぎるやろ……

  グッド3 バッド 返信


  ゲェジ棒 6時間前

  @☆天使ちゃん☆【異世界公式だよ!】

  おお、もう……

  グッド0 バッド 返信


  ぶらまーとん 6時間前

  @☆天使ちゃん☆【異世界公式だよ!】 

  面白すぎるキャラ設定からの

  メチャクチャ悲惨な過去は辛くなるのでやめろ

  グッド0 バッド 返信



 カエル 6時間前

 ユニコーンの歴史が学校に行かなくなった

 俺に似てる

 グッド0 バッド 返信


 キモオタ 5時間前

 鬱だ氏のう

 グッド0 バッド 返信



―――――――――――――――――――――



「おぉう……」


 ユニコーンの生き様が悲し過ぎる……

 というか天使ちゃん、コメ欄で現代の人達と仲良くなってるじゃん。

 そのお陰で順調に登録者が増えたのかな?


「にしては、チャンネル開設する気配ないよね天使ちゃん……」

「ほう、そうなのか?」

「うん」

「ふーん」


 そのままポチポチ、とスマホを弄って、画面を切る。

 するとシュトルムも、同じタイミングで梳き終えてくれた。


「終わったぞ」

「ありがと。よいしょ」


 椅子から降りて、スマホをポケットに収納したナターシャは、頭にスラミーを乗せながら出発を告げる。


「よし、じゃあ行こうか」

「あぁそうだな。今日は何をするんだ?」

「んーまずねー……――――


 ナターシャ達は今日も転移して、冒険者達の装備に素材合成をしては家に戻り、冒険者ギルドでクエストを受けて、消化する一日を送った。

 途中、リズールに掛け合って、


「ねぇリズール」

『はい、なんでしょうか?』

「実は昨日、ギルドの支払い代行プレート貰ったんだけど、私には身に余る代物だから預かって貰えないかな?」

『それは……私が使用しろ、という認識で宜しいのですか?』

「うんそういう事。私は金貨千枚あれば十分だし」

『分かりました。そういう事でしたら、効率よく使用させて頂きます』

「任せたよー」


 的な緩い感覚で、ギルドのクレジットカードを預けた。

 まぁこう見えても元オタクなんで、自分の財布の紐の緩さは自覚してます。

 カードを使う快楽を覚える前に、進んで節制の道を歩む事が重要なのだ。

 今はお金を貯めたいからね。


 そう結論付けつつ、ギルド受付で今日のクエストを達成した。


「よーし、報酬ゲット。今日の生態調査クエストも終わったね!」

「お疲れ様だジークリンデ。しかし……フッ、またあの魔物――シルバー・ハードパンチャーと戦いたい物だな。硬い装甲を貫いたあの感覚が忘れられないぞ」

「あれ凄かったよねー」


 今日の回想をし始める二人。

 すると、ナターシャの頭の上に居るスラミーが跳ねる。


「!」

「うわっ、どうしたの?」


 慌てて降ろすと、スラミーは顔に口(?)っぽい凹みを作った。

 コテン、と首を傾げるナターシャ。


「どゆいみ?」

「!?」


 スラミーがショックで固まる。


「声帯石の事じゃないか?」

「あーなるほど」


 シュトルムがフォローを入れた事で、ナターシャは理解した。

 とりあえずギルドの受付に掛け合って、声帯石を販売している場所が無いか聞いた。

 するといつものモノクルの人(彼女は俺担当になったようで、別の人に掛け合ったら入れ替わりでやって来た)は『当ギルドで販売していますので、お二階へどうぞ』と誘導してくれた。


 二階の応接間で待っていると、今度はアーデルハイドさんが出てきて、ギルド謹製の声帯石ペンダントを5点ほど見せてくれた。失語症の人向けの商品らしい。

 犯罪に利用される可能性が高いので、一般流通はしていないようだ。


「このペンダント達ってどんな声質なんですか?」

「分かりました。ご説明しましょう」


 アーデルハイドさんは、至極簡単に教えてくれた。

 全て女性用で、大まかに分けると高音のクリアボイス、高音のハスキーボイス、低音のクリアボイス、低音のハスキーボイス、ヘッドボイス(裏声)との事。


「なるほどー」


 ナターシャは納得した後、スラミーに選択を任せた。


「じゃあスラミー、好きなの選んでおいで」

「!」


 机の上に置かれたスラミーは、全てのペンダントを見た後、迷うようにたじろぎ、後ろを向いて口を凹ませる。選べないから試したいって事か。


「アーデルハイドさん、スラミーに試着させても良いですか?」

「それは構いませんが――」


 アーデルハイドは少し考えた後、こう言った。


「――ナターシャ様の従魔に、体内に取り込まれた後、分解はしないように注意して頂けますか?」

「分かりました」


 ナターシャはスラミーに深く注意をした。やっちゃダメだよ、と。

 スラミーは理解したように何度も頷いた。よしこれで良いな!


「じゃあスラミー、左の――高音のクリアボイスから試してみよっか」

「!」


 指示を受けたスラミーは、アーデルハイドから受け取ったペンダントを体内に取り込む。


「よしスラミー、ちゃんと話せる?」


 ちょっとした期待感が出る中、スラミーは透き通った女性の声を出した。


「はなせるー!」


 とても子供っぽくて、全文を平仮名で話しているような声。

 ナターシャは絶対音感に従って、答えを導き出した。


「こ、この声質は……!」


 オタクだから分かる。

 間違いない、この声はCV.花澤香〇だ。

 甘〇寺蜜璃の中の人って言えば分かるだろうか。


「でもキャラ的にクレフォリアちゃんと被ってるから駄目。ペンダント没収」

「なんでー!? あ゛ーっ!」


 ナターシャは容赦なくスラミーに手を突っ込み、ペンダントを回収する。

 更にアーデルハイドさんに目配せする事で、次の声帯石――高音のハスキーボイスを取り込ませた。


「あるじー! ひどいー!」

「こ、この声は!」


 次に聞こえてきたのは、〇ガレンの主人公の声。

 そう、役作りのためにヒトカラで喉を潰していた伝説の女性声優、朴〇美さんだ。


「これはマルス兄っぽいから駄目。没収。次」

「や゛ー!」


 その後の低音のクリアボイス(CV.〇井麻美)、低音のハスキーボイス(CV.小山〇美)という完全にアウトな声帯石も没収しつつ、最後にヘッドボイス(裏声)の声帯石を取り込ませた。


「しっかりえらばせてー!」


 可愛い裏声でとっても怒るスラミー。

 最後の声は〇咲美保さんだった。転〇ラの〇ムルで分かるよね?

 喋るスライムなら、やっぱりこれが一番しっくりくると思う。


「うん、やっぱこれが一番個性があって――――」

「待てジークリンデ、何を躍起になっているのだ? スラミーに自由を与えてやれ」

「――――ハッ」


 そこでシュトルムに諭された事で、ナターシャは我に返った。

 沸騰していた頭を抑えて謝罪する。


「ご、ごめんつい熱くなっちゃった。声被りしてる後続キャラは没個性になるって相場が決まってるよね……」

「それはなんの相場なのだ?」


 目が点になるシュトルム。

 その後、もう一度スラミーにペンダントを取り込ませて、自由に喋らせた結果、


「すらみーこのこえがいいー!」

紅莉栖(クリス)……!?」

「クリスって誰だジークリンデ?」


 低音のクリアボイス(CV.今〇麻美)に決まった。

 我ながら暴走していたと思うが、オタクにとっての声優決定談義とはそういう物なのだと分かって欲しい。

 東〇Project界隈とか、二十数年経っても未だに揉めてるのが何よりの証拠だ。

 〇魂の坂〇銀時とか、デレ〇スの森〇保とかみたく、CV発表したタイミングで『完璧にこの声だわ』ってなる方が珍しいのだ。


 という事で、スラミーの声優談義は本日を以て閉廷。

 ほっこり笑顔のスライムと共に、ナターシャ達は席を立つ。


「アーデルハイドさん、ありがとうございましたー」

「またねー! あーでるはいどさーん!」

「また相まみえようッ!」

「えぇ、またのご来店をお待ちしております」


 支払いはユニコーンの角の販売額から差し引く(販売額は秘密)らしいので、ナターシャ達は会計をせずに家に帰った。

 そして帰り道では、頭の上のスラミーがCV.今井麻〇で喋る様子が嬉しくて嬉しくて、ナターシャは涙を流していた。


「うぅっぐ……ちょっと解釈違いだけど……〇ンゴスの声が生で聞けてる……っ! 嬉しい……っ!」

「フフッ、良く分からんが良かったなジークリンデっ!」


 シュトルムに肩をポンポンとされるのが、何だか論争の末に勝利をぎ取ったような気がして、とても嬉しかった。

 俺のスライムはCV.今井〇美なんだよ、と。

我ながらやりたい放題やり過ぎてて怒られそう……

次話は9月13日予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 有名の声優さんの声を遊び放題ですか!?凄いけどスラミーさんには可哀想でしょうw
[一言] ???「わたしは歌で、ぶん殴る!!」 これも分かりやすい
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ