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21‐閑話 兄との久々の会合

筋肉痛が直り、リハビリに励むナターシャ。

今日も今日とて廊下を歩いて運動していると、階段を上がる足音が。

誰だろうと待つと、顔を見せたのは久しぶりの兄。

ナターシャは喜んで兄に話しかけます。

 どうも、赤城恵(ナターシャ)です。姉との決闘からおよそ一か月が経ちました。


 筋肉痛自体は3週間ほどで治って、現在は適度な運動をして筋力を戻している所です。所謂リハビリですね。

 朝起きて全身のストレッチから始まり、軽い筋トレ、そして廊下を歩く訓練をしています。

 異世界人の身体は元の世界の人間と違って丈夫なのか、比較的すぐに身体を動かせるようになりました。まぁ、それでも時折フラッとしますが。

 しかし中々動けず、スマホを弄るしかなかったあの頃よりかは大分解放感に溢れています。


 そして、ひと悶着あった姉の事なのですが、3週間前に魔道具……スマホの事です。

 それと組織の概要を説明したら納得して満足したのか、今では父との修練に励んでいるようです。

 父も“鬼気迫る勢いだ”“珍しく死を感じた”とこの前部屋に来た時に話してくれました。きっと決闘で負けた事を悔やんでいるのでしょう。頑張るのは良い事です。

 母は私が動けるようになった事で安心したのか、今はもっと元気になるようにと手を掛けてご飯を作ってくれています。この前食べた豆のスープは絶品でした。また食べたいですね。


 さて、最後に一つだけ皆さんにお伝えする事が。

 なんと、魔法創造(厨二)のレベルが遂にLv2になりました。やりました。

 無駄にダラダラとスマホを弄っては飯食って寝る生活をしていた訳ではありません。ちゃんと出来る事をやっていたのです。

 天使ちゃんも、


天使

[Lv2おめでとー! どんどんぱふぱふ♪ これでデメリット解消にまた一歩近づいたね!]


 と褒めてくれました。後5つレベルを上げればLv7です。頑張ります。

 それと、創れる魔法の幅が増えたようです。これもついでに天使ちゃんに聞きました。

 範囲攻撃魔法(10人規模)、詠唱加速魔法、ステータス超UP・DOWN魔法など、聞いているだけでとってもワクワクする魔法ばかりです。


 特に、範囲攻撃魔法を手に入れられるのは大きいです。

 そろそろ村近くの森に出向いてLv上げを行おうと思っていたので、集敵魔法を使って範囲魔法で殲滅するというパワーレベリングが出来ます。

 いやぁ、楽できるって便利ですね。


 ……あぁ、そうそう。決闘で使用した磁壊雷神撃(サンダーボルテックス)の本来の使い道は自身を触媒にした自爆攻撃らしいので、厳密に言うと範囲魔法では無いらしいです。

 余波で雷撃が飛んで、その結果範囲攻撃化するらしいですね。

 まぁあの技はかなり痛かったので出来ればもう使いたくないです。ブラック企業に勤める精神的辛さよりはマシですが。


 まぁそんなこんなで今は某天才医師漫画、〇ラックジャックのリハビリ時代のように壁に手を付けながら廊下を歩いて一階への階段に向かっている最中ですが、階段を上がってくる足音が。


 誰だろうと少し止まって前を向いて待っていると、見覚えのある銀髪に金髪メッシュのイケメン。

 その名をユリスタシア・マルス。ナターシャの兄です。


「……ナターシャか。身体の調子は大丈夫か?」


 心配そうな顔で此方を見てくれています。優しいですね。


「うん、大丈夫。もう動けるよ。お兄ちゃんは何で今家に居るの?」


 7歳の少女の純粋な目線が兄の心を突き刺します。

 その言葉に少し眉を顰めながらも説明する兄。


「お前中々酷い言い方するな……。今日は所用で家に居るんだ。ガリバーさんにもちゃんと許可取ってあるぞ。」


「……ホント? 神父様にイタズラした時みたいに無許可で水槽に入ったりしてない?」


「あれは入ったんじゃなくて落ちたんだって言ってるだろ!? 事故だ事故!」


「じゃあ、ファリアちゃんに告白した時みたく歌劇風味(ミュージカル)に断られるなんて事を向こうでもやられてないよね?」


「やられてねぇよ! それに俺はまだ諦めたわけじゃ……ってなんでそんな事お前が知ってるんだよってそういう話じゃねぇ! 所用だよ所用!」


 兄はナターシャの毒の入った言葉にツッコミながらも話を元に戻します。


「……今日は俺がガリバーさん所に留学する前に忘れていった物を何個か取りに来たんだよ。まぁ、そんだけ元気ならもう心配する事もないな」


 そう言うと兄はナターシャの頭を撫でます。

 ナターシャも抵抗せず素直に受け入れます。撫でられるのは嫌いでは無いからです。


「……お兄ちゃんの手ちょっと大きくなった?」


「ん? そうか? ……なら、ちょっと大人になったって事だな」


「そうだね。……家を出発する日にまさかおねしょするなんて誰も予想してなかったけど」


 ふふふと笑ってお兄ちゃんを言葉で虐めます。

 それに怒った兄が両手を使ってナターシャの頭をわちゃわちゃさせます。


「あ゛ぁ゛ぁ゛~~~っ゛!!!」


 ……数秒後、髪の毛がくちゃくちゃに絡まって大阪のおばちゃんのようなパーマヘアーになったナターシャの姿がありました。お兄ちゃんに虐められてショックなのか泣いています。

 まぁ実際は分かっててやったので悲しくもないし別に怒ってないです。


『どうしたのー……?』


 ナターシャの泣き声を聞きつけたのか、一階から女性の声が。

 トタトタと階段を上がってくるその音は次第に二人に近づいてきます。


「……あらナターシャちゃん。大変な事になってるわね」


 母は大声を上げて泣くナターシャに近づき、髪を手櫛で直してくれます。


「もうマルス。あんまり虐めちゃ駄目よ?」


「虐めてないし。仕返ししただけだし」


 マルスも流石に自分が悪いとは思っていません。

 ナターシャもそう思いますが泣くのはもう年齢上仕方ない事だと諦めています。

 まぁ、物理的な暴力に出ない所に兄の優しさを感じますね。


「ほら、これで直ったわ。もう大丈夫よナターシャ」


 そう言って母はしゃがみ込み、ひくひくと嗚咽を上げるナターシャと視線の高さを合わせ、頭を撫でてくれます。優しいです。


「マルスも、ほら」


 そして二人の仲裁をするように母は兄の頭も撫でます。

 兄も悪い気はしないようで撫でられています。


「……まぁ、母さんに免じて許してやるよ」


 少しバツの悪そうな顔でそっぽを向くアルス。

 もう、お兄ちゃんったら素直じゃないですね。


「……ごめんなさい」


 ナターシャも小さな声で謝ります。


 それを聞き遂げて、母も安心した様子で立ち上がり、二人をギュッと抱きしめてから一階に降りていきます。母も父も仕事があるのです。

 二人はそれを見送って、再び向き直ります。


「……今回はお母さんに免じて謝ってあげるよ、お兄ちゃん」

「……たく、ちょっとは反省しろ。」


 お兄ちゃんも頭を掻きながらナターシャの頬を開いている手の人差し指でぷにっとして、廊下の奥へと進んでいきます。きっと元自室へと向かうのでしょう。

 ナターシャも後ろを向き、兄の後を付いて行きます。

 そして到着したのは兄の部屋。荷物やベットなどは出て行った時のままです。

 ……流石におねしょの処理はしてあります。


「……なんだ、何も面白い事なんてないぞ?」


「ううん、お兄ちゃんの“鑑定”スキル、たまには見ようと思って」


「……お前も物好きだな。まぁいいけど」


 そういうと兄は手を前にかざし、精神集中します。

 私は兄の脇腹を触ったりしてちょっかいをかけます。


「ぐふっ、おいっやめろっ。集中できないだろっ。……こ、“広域鑑定”っ」


 そう兄が言うと手の平から青い波長が発生して、部屋の隅々まで広がります。

 そして、兄の思考内で今必要としている物が青い光を帯びて発光し始めます。


「……相変わらずお兄ちゃんのスキルって物探しに便利だね」


「冒頭に相変わらずってつけなきゃ誉め言葉なんだがな……じゃあ探すから、邪魔するなよ?」


 兄は光る物の回収に入ります。

 ナターシャも部屋に入って兄のベットの下を覗いて宝物探しを……あ、この本青く光ってる。なんだろ。


「ってぇおまっ、お前何でそんなとこ覗いてんだ! 勝手に探るな!」


 兄はナターシャが見ようとしていた本を回収して荒い息を立てています。きっとそういう本なのでしょうね。


「……お兄ちゃんもそういうお年頃なんだね……」


 ナターシャはワザとらしく頬を染めて戸惑うような仕草をします。

 あざとさを重視しているので兄もぐぅっ、と唸るような声を出しています。


「ちっ、違うからな! 変な本じゃねえし!」


 そういうと兄は急いで光る物を回収し、置いてあったトランクに物を詰めて立ち上がります。


「じゃあ用事は済んだ! 俺は急いでスタッツ国に戻る!」


「うん。私の事、忘れないでね? 私、ずっと覚えてるから……。」


「何をだよ! 家族なんだから忘れる訳ねぇだろ! じゃあな!」


 兄は早歩きで部屋から出て、廊下を進み、階段を降りていきます。


 ……いやぁ、兄を揶揄(からか)うのは楽しいですね。これからもやっていきたいと思います。

 ナターシャはゆっくりと立ち上がると、再びリハビリへと戻るのでした。

はい。これにて第一部“姉との決闘編”完です!

仕事があるんで暫く投稿が空きます。ご容赦下さい。


あぁ、ついでにお兄ちゃんを書きました。

忘れていた訳では無いですが元々こういう役割を任せようと思っていました。

まぁ元々この話は書く予定は無かったんですが幕間のような感じで。

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