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1 始まりと終わりのプロローグ

「紅蓮の炎よ――――」


 塔の上、一人の少女が立ち勇む。

 少女が紡ぐは魔法の言葉。

 杖に宿りしその魔力は、深紅の炎へと姿を変える。


「我が血潮よ、深紅の魔力よ――――」


 少女の眼前に広がるは数多なる軍勢。その総数約100万。

 全てがおどろおどろしい声を上げながら、少女の聳える塔へと進む。


「紅天に浮かぶ灼轟の太陽に導かれし、己が心を焦がし尽くす灼熱の業火よ――――」


 そしてその軍勢は人に非ず、魔に連なる物。

 合成獣人(キメラ)、魚人、食屍鬼(グール)

 凡そ人とはかけ離れたその姿は異形と言うに相応しく、そして同時に死に果てている。

 死に絶えながらも動くその肉体からは肉が爛れ、腐り落ち、開く隙間から骨が透けて見える。


「燃えよ、燃えよ――我が魂を糧にして、其の煌焔を燃え滾らせよ――――――」


 その光景を目にしても尚少女の顔は変わらず、眼前の敵を打ち滅ぼす魔法を編む。

 掲げる杖に集まる魔力は過剰にて極大、その全てが炎へと変わり、地上に神の奇跡を作り為す。

 そう、少女の扱う魔法は熱く煮えたぎる灼熱の太陽。その片鱗をこの大地へと穿つ事。


「そして灰燼滅却の力と化し、我が覇道の前に立ち塞がる敵を燃やし殲滅せよ――――」


 詠唱が終わり、日輪の鼓動が大気を揺らす。

 少女の頭上には暗き夜を照らす赤き輝きが其処に在る。

 杖を降ろし、狙うは直中。

 落陽し、ゆっくりと、しかし確実に軍勢へと終焉が近づく。


「――極唱魔法が一つ、“烈焔灼滅撃フレアノヴァ・ソル”」


 その小さな夕紅は大地を焼却し、100万の軍勢を一瞬にて掻き消した。

 今日も今日とてハゲ部長に怒られ、不手際(ミス)を処理する日々。

 合コンは疲れ切った容姿のせいで上手くいかず、会社の飲み会では一気飲みを強制される。

 部長の都合でどうでもいい残業ばかりさせられ、慣れて手際が良くなってきた所でまた何かしらのトラブルを起こす。それを解決する日々。


 いい加減こんなブラックな職場辞めてしまいたいが、俺のような不器用な奴が生きていける程社会は甘くない。

 この会社にしがみつき続けるしかないのだ。


 そう思いながら帰る俺の名前は赤城 (ケイ)、26歳。童貞。

 今日もコンビニ弁当片手に家に帰っている。


 あぁ死にそう。


 今日でめでたく100連勤目に突入した俺は、祝勝祝いも兼ねてハゲ部長の写真をビール漬けにしてやろうかと企んだが、どう考えてもビールがもったいないのでやめた。


「……アハハッ」


 仕事漬けでワーキング・ハイ気味な俺は、目の下に隈が色濃く残る、瘦せこけた顔で楽し気に電柱に話しかける。


「ハァイ電柱さん。俺と役割替わってくれない?」


 勿論電柱が喋る訳が無いので、『何だよ喋れや』と理不尽に蹴りを入れる。

 そのまま壁やネコに話しかけながら歩いていると、運悪く信号に捕まってしまう。


「信号かぁ。良いよなぁコイツらも。ただ青と赤に変わるだけで良いんだもんな。俺もYESかNOかはっきり言えるようになりてぇよ……」


 そうブツブツ漏らしながら、信号が変わるのを待つ。

 待機している十字路には車通りが無く、ただ夜風と共に、静かな時間が流れる。


 ……よく考えたら、車通ってないのに待ってるとか馬鹿じゃね?

 そう思い立った俺は信号無視して歩き始める。

 ルンルン♪ 赤信号、車が来なけりゃ怖くない、だ。


 しかしそれを良しとせず、ツッコミを入れに来たのが4tトラック。


 漫才師のツッコミよりもキレのあるスピードで俺にブチ当たり、華麗な急ブレーキ音と共にフルスイング。

 運動量保存の法則に従って俺をぶっ飛ばしてあぁクッソ超痛ぇ――――


 そこで俺の意識は途切れた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 青魚さん。少しずつ読ませて頂きますね。この作品が現在連載されている作品の一作目で間違いないでしょうが。 まず、女神様……説明テキトーですね(笑 そして主役。大分、ブラックな会社で働いてい…
[良い点] 文章は丁寧に書かれている印象を受けた。 [気になる点] あくまでも、個人的な意見。 数多くある転生・転移ものだと、スタートからよっぽど他の作品との差異を感じないとページを捲る意欲はわかない…
[気になる点] 黒くて見にくい
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