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邪気眼少女の極唱魔法(エクスペル) ~異世界転生したらTSした上に厨二病を再発症する羽目になりました~  作者: 蒼魚二三
ナターシャ7歳編 -テスタ村とハビリス族の隠れ里と、スタンリー秘密工房のアントレ-
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189 夕暮れ時のラプソディ

 オークとの戦争か? というナターシャの疑問を、斬鬼丸が否定する。


「否、あれはただの負け犬の遠吠えでありますよ」

「だよねー」


 いくらシバ兄妹が追われてる身だからって、軍を送る程じゃないよね。

 ナターシャはそれで納得したのだが、ハビリス族の男性陣はそう安々と信じられなかった。


 彼らはそもそも、隔絶された地に住まう種族。

 他の種族に里を襲われた際の教訓などは無く、戦闘経験も殆どない無知・無学な農民たち。

 不安が憶測を生み、その憶測が悲惨な末路を導き出した事で、彼らとは違う、否定的な意見を出した斬鬼丸の元に男性陣が殺到するのは時間の問題だった。


「お、おい人間さん! オークは襲ってこないのか!?」

「人間さん教えてくれ! お、俺達は怖くて仕方ねぇんだ!」

「む、むむむ、お、落ち着くであります。順を追って説明する故に――」

「この里をオークから守るにはどうすればいいんだ!? 俺達は何をすれば良いんだ!?」

「――ま、待たれよ皆の衆……! うぐぉぉ……!」


 斬鬼丸はそのまま、ナターシャの傍を離れるように飲み込まれていく。

 彼が親指を立てながら溶鉱炉に沈んでいくシーンは涙無しには見られませんでした……


「……なーんて。はい、これで終わりだよ。行ってらっしゃい」

「ありがとう人間の女の子! お、俺にも教えてくれェー……――――」


 と脳内でボケつつ、最後の一人の治療を終えたナターシャ。

 銀髪の少女は丸太椅子から立ち上がると、少し離れた位置で考え事をしていたハルヤに話し掛ける。


「ハルヤさんどうしたの? 困り事?」


 突然話し掛けられたハルヤは驚いてビクッとした後、朗らかな笑みで返答した。


「あっいえ、困ってる訳じゃないんです。ただ、オークとはまた戦う事になるんだろうなぁ、と思いまして」


 どうやら彼女も里の防衛について考えていた様子。

 なのでナターシャは、対話形式で相手の思考を整理させる相槌マンになる事に決めた。


「……あー、そうだろうね。シバさん達がここに居る事を知られちゃったから、情報を聞いた新手がまた来るだろうね」

「はい。なので、何とか里の防衛を強化したいんですよね。今、その手段を考えていて……」

「それが思いつかない感じ?」

「いえ、ナターシャさんのお陰で一つ思いつきました。……ナターシャさん」

「はい」


 ハルヤは改まって相手に目を合わせ、ナターシャに一つの提案を持ち掛けた。


「私達の里のために、暫くの間ここに留まって貰えませんか?」


 滞在依頼かぁ……

 どうしよっかなぁ、という気持ちを顔に出すと、ハルヤの隣に居た狩人がいくつかのハンドサインを行った。

 俺が此処に来るまで、お前達はこの里で待て、という感じの意味だと思う。


「ん、狩人さんも此処に来るの?」

「……」(肯定するように頷く)

「えっ!?!!?!?!?」


 彼のハンドサインを読み取ったナターシャが確認の為に尋ねると、ハルヤが文字通り跳ねた。

 途端に、恋する乙女のようにあわあわと戸惑い、狩人を受け入れる為に何をすべきか呟き始め、ダッシュで家の掃除をしに行ってしまった。

 命短し恋せよ乙女ってこういう事なのかも。実際に存亡の危機だし。


 ……というか、滞在の返事してないけど良いのかな。

 ま、良いか。ここに滞在してても別段困る事ないしね。ここに居てあげよう。

 走り去っていくハルヤの姿を見ながら、ナターシャはそう決めた。


 そしてその場に残された二人だが、狩人はハルヤが離れた事で現界出来なくなったようで、そのまま(かすみ)のように消えてしまった。

 彼とはもう少しだけ話がしたかったなぁ……


 なのでナターシャは、次なる人物に話し掛ける。

 今度は、オーク逃亡時からずっと責任を感じて黙しているシバ兄妹だ。

 可憐な美少女ムーブで近付いて、警戒心を解きながら、こう。


「お二人さん?」

「……」

「……ナンダ、人間ノ子供」


 シバは余りの罪悪感に話せなくなっていたので、トコが代わりに返答する。

 くっ、美少女ムーブが効いてない。ま、まぁ良いだろう。

 ナターシャはそんな二人に対してこう言っておいた。


「大丈夫。私、運は良い方だから何とかなるよ。だから気に病まないで」

「オマエ……」

「じゃ、そういう事で。私はリズール探しに行ってくるから」


 銀髪の魔女は後ろ手を軽く振りながら、ふらふらと里の散策を始める。

 とても7歳とは思えない落ち着いた行動だが、そのおかげか、シバは幾分か気が楽になったようで、その少女に小さく感謝の言葉を呟いた。





 ナターシャは隠れ里の中をうろうろとした後、見つけた切り株の上に座ってスマホを弄り、天使ちゃんとのLINEをしていた。


ナターシャ

[強敵ともを探して遠征したら合法ロリショタ種族の村に暫く滞在する事になった件]


天使

[ん、ハーフリングの村?]


ナターシャ

[いやハビリス族だってさ]


天使

[あーゴブリンと人の混血の子達ね! マイナーだけど天使ちゃん知ってるよ!]


 マイナーなんだ。まぁそれは良いや。


ナターシャ

[というかハーフリングも居るの? この世界って小人=ハビリス族じゃ無いの?]


天使

[居るよ? ハーフリングは精霊族の亜人種で、ハビリス族は純粋な亜人みたいな感じ♪ 容姿は似てるけど別モノだね☆]


ナターシャ

[へぇー……因みに、ハーフリングって何の精霊なの?]


天使

[草原とか旅とか指輪とか小さな幸せとか、後は靴かな?]


ナターシャ

[司ってる物が多いなハーフリング……ってか靴って何さ。〇リム童話?]


天使

[まぁまぁ。そういう沢山の信仰を気軽に受け入れられる大らかな精霊って事よ♪ 数は少ないから滅多に会えないけどね!]


ナターシャ

[そうなんだ……会えたら良い事ある?]


天使

[旅用の靴を貰えるんじゃないかな?]


ナターシャ

[タダで?]


天使

[いや有料で☆]


ナターシャ

[それただの靴商人じゃん……]


天使

[でも丈夫で長持ちするって評判らしいよ!?]


ナターシャ

[へぇー……]


 というような雑多な会話を行っていると、天使ちゃんが動画のアイデアを出してきた。


天使

[……あ、そうだ! なっちゃんなっちゃん!]


ナターシャ

[どしたん?]


天使

[次の動画、ハビリス族さんと一緒に撮るのはどう? 見た目的にハーフリングで通せると思うし♪]


ナターシャ

[ナターシャちゃん的はそういう無神経な事をする人になったらダメだと思うなっ♪]


天使

[あっ、天使ちゃんのモノマネだ! なっちゃん! 無断ゆるパク罪で逮捕する!]


ナターシャ

[ざんねーんここは異世界なので現代の法律は適用されませーん]


天使

[おのれ異世界人め! 我らが次元魔法を覚えた暁には必ず捕らえてみせるぞー!]


 ハンカチを噛むスタンプを投稿する天使ちゃん。

 そこまでは脊髄返信していたナターシャだが、自分の投稿を見てふと理解した。


ナターシャ

[……あ、そうか。ここって異世界なんだ。現代法に囚われる必要は無いのか]


天使

[何故改めて納得!? 天使ちゃん的にはもう分かってるモンだと思ってたよ!?]


 そして驚愕スタンプを投稿する天使ちゃん。

 いやぁ、ネットに入り浸ってると異世界に居る感覚が薄れるからつい。

 でもなぁ……


ナターシャ

[でもさ、やっぱり動画っていう概念を知らない無知な人々を出演させるのはどうかと思うよ?]


 素人物のいやらしいビデオじゃあるまいし。

 しかし、天使ちゃんからの反論が来る。


天使

[でもね? 異世界の人々にその概念を教えるには、まずは彼らを映像に残さないとダメなんだよ。だからなっちゃんには、その礎になって欲しいなって天使ちゃんは思うなっ♪]


ナターシャ

[なるほどー……]


 そう言われると、この世界に住む人達を映さざるを得なくなる。

 どんな世界でも技術は発展していく。そうなれば、フルボイスの動画は最高の娯楽になる。

 現代社会において、テレビやパソコンが生活必需品になっているのが何よりの証拠だ。

 この世界の今現在の技術力は分からないが、いつかはそういう時が来るだろう。

 だけどもそれは、今生では実現しないかもしれない。


 ……しかし、しかしだ。

 俺が彼らを映像で残しておけば、それは未来において、学術的価値のある映像になるのではないのだろうか。

 文献や絵画でしか語られない彼らの生を動画で残せば、今を生きる賢明さが、未来の人々にも伝わるのではないのだろうか。

 だったら……――――いや、だからこそ映すべきだ。

 今を生きる人々を。その生き様を。

 この仕事は、俺にしか出来ないのだから。


 ナターシャは、義務遂行の意志のままに返信する。


ナターシャ

[……そんな事を言われたら、もう無断で映しまくるしかなくなっちゃうよね?]


 動画っていう概念を教える為にも。


天使

[よくぞ吹っ切れたなっちゃん! 天使ちゃんは信じてたよ!!!!!!]


 クラッカーを鳴らすスタンプを投稿し、喜びスタンプで乱舞する天使ちゃん。

 ナターシャもそこに混ざってLINE上で暴れ倒した後、少女はさっそく動画撮影の準備を開始した。


 時刻は夕暮れ近く、空を覆う雲が茜色に染まり始めた頃。

 左右に使い魔型の撮影機器を浮かばせ、左手の小指に充電指輪をセットしたフルアーマー・ナターシャが爆誕した。

なんかキャラが突然ハッスルし始めた

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