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18 姉の疑問に答える時

決闘が終わり一週間経ちました。

現在筋肉痛により寝たきり生活を送っていますが私は元気です。

そして再び姉が部屋に来て……

 額に温かい感触がする。

 柔らかく、ふにふにとしていて、それが額を撫でるような感覚。

 後頭部も柔らかい感覚に包まれていて、その優しさに暫く微睡んでいようと思い、目を開ける事を躊躇(ためら)う。


「……あら、ナターシャちゃん、起きたみたいね」


 優しい声が聞こえる。この声は母のガーベリアだ。

 ゆっくりと片目だけ開けるとそこには荘厳な二子山。視界を遮る程の名峰が目の前に存在する。

 うん間違いなくお母さんだね、と胸囲で判別しながら赤城恵(ナターシャ)は挨拶を返す。


「……おはよ、お母さん」


 母はふふ、と優しく笑うと再び撫でてくれる。

 ナターシャの銀色の髪を掻き分けながら母は額を撫でる。

 蒼い目で母の双丘をぼんやりと眺めながら何故こんな状況になっているのか考える。まぁ考えるまでも無いけど。

 結局剣技だけでは決着が付かず拮抗。そして俺は姉を倒す為、プランBを決行。

 なんとか勝利をもぎ取った物の互いに気絶してしまったという訳だ結構。ラップかな?

 当然姉の様子も心配なので聞いておく。


「……お姉ちゃんは?」


「貴方の隣で膝枕してるわ。まだぐっすり寝てる」


 俺は自分が母の左膝に乗っかかっている事から多分右側に姉が居るだろうと予測して、右に少しだけ首を動かし、姉の様子を横目で確認する。

 姉のユーリカは服が少しだけ焦げている物の命に別状はなく、くぅくぅと可愛い寝息を立てて眠っている。

 その様子に安心し、(ナターシャ)も顔を元に戻し、目を閉じる。


「……こら、起きなさい」

「いたっ」


 ポカッ、と頭を叩かれる。

 目を開けると視界の左側に父の顔が見える。

 ナターシャの近くにしゃがんでいるようだ。


「……戦い方に文句は言わないが、最後のアレはなんだ?」


 その表情には心配と少しの怒りが混じっていて、あぁ、怒っているんだなぁと認識できる。


「……剣で勝てなかった時用のとっておき」


「勝ちたいからってあんな危険な行為をするんじゃない。死んだらどうするつもりだ」


 再びポカッ、と叩かれる。


「ごめんなさーい……」


 俺は目を強めに瞑りながら謝罪する。


「全く……。もうあんな事するんじゃないぞ?」

「はーい……」


 その言葉を聞いてふぅ、と父は顔を緩める。

 そして母の隣に座り、ナターシャをクシャクシャと撫でる。

 ナターシャも成すがままに撫でられる。


「……勝つ為に無茶するのは僕の遺伝なのかなぁ」


「ふふ、かもしれないわね」


 そう呟く母と父。

 母はお姉ちゃんも頑張ったねー、と姉を撫でる。姉は寝ながら笑みを漏らす。

 こういうのが幸せって事なんだろうな、と赤城恵(ナターシャ)は思いながら、目を閉じて微睡む。


 今日は日差しが照り付ける温かい日。

 木陰の下で過ごす4人の家族は、そのまま誘われるように眠りに落ちて行った。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 ……一週間が経ちました。どうも、赤城恵(ナターシャ)です。

 現在、少しだけ動けるようになったのでベットの上でスマホを弄っています。

 天使ちゃんは“一か月くらい筋肉痛に――”と言っていましたが、意外と治りが早いようです。若さって素晴らしい。


 ただ、未だに痛い事には変わりないです。まず脚。持ち上がる気配すらありません。

 今まで使った事の無い筋肉を使用したからなのかなんなのか、力むたびに激痛が走ります。

 ついでに腹筋やその他大勢の筋肉も同じくヤバいです。そのせいでずっと寝転がりっぱなしです。

 腕も痛いのは痛いのですが、スマホ中毒気味なお陰でリハビリが上手くいき、なんとか操作出来ています。


 首元は母に言ってクッションを重ねて貰って少しだけ上を向いています。そのおかげでスマホの画面が見やすいです。

 ただ稀に手が滑ってスマホを顔に落としたりするのがとても痛い。角はやめて角は。

 食事やトイレなのですが、定期的に母が見に来るので、その際に無理矢理起こしてもらって連れて行って貰ったり、食べさせて貰っています。

 本当に母には頭が上がりません。涙が出ます。……あ、痛みからではないです。


 今日も何も出来ずにただ漠然と魔法の詠唱を考えてスマホを弄っていると、コンコン、と部屋をノックする音。

 急いでスマホをボックス内に隠してどうぞーと声を掛ける。


 ガチャリ、とドアを開けて入ってきたのは姉のユーリカ。

 あの日はあのまま一日眠り続けていたらしいけど、次の日には目を覚ましてくれて良かった。

 まぁコッチはまだ暫く動けないだろうけどな!という恨み言は置いておいて、大分申し訳なさそうな顔をしている。


「……息災かしら、ナターシャ」


「まぁ、見ての通りだよ」


「……そうよね」


 その言葉尻にも引け目が感じられる。

 うーん、困ったなぁ。こういうよそよそしい感じになるの苦手なんだよね……。

 湿っぽい空気を払拭するように俺は笑顔で話しかける。


「け、決闘の事なんだけどさ」


「……何かしら」


「あの時のお姉ちゃん生き生きとしてたよね。心の底から楽しんでた」


「……そうね」


「ま、また機会があれば戦ってみたいなぁなんて」


「……やめておくわ」


 大分落ち込んでいる様子。姉の声音から、負の感情が伝わってくる。

 それでもめげずに話を続けようとするナターシャ。


「そ、そっかー残念だなー。またあの魔法斬る奴見せて欲しかったなー」


「……」


「でも凄いよね。魔切り三連、だっけ?同時に3つも魔法を斬っちゃうなんて」


 あははと笑う。しかし姉はそうでもないわ、と反応が薄く、会話が続かない。困った……。

 そして暫く無言になる二人。


 姉はナターシャのベットの淵に腰掛け、思いつめたような表情を浮かべている。

 うぅ、この状況をどうした物か……とナターシャが考え込んでいると、姉が遂に口を開く。


「……ナターシャ。その……聞きたい事があるの」


 なんだろう。聞き返す。


「……何を?」


「……貴方の秘密」


 少しドキリとする。

 秘密……!? 赤城恵(ナターシャ)は思い当たる節が多すぎて困惑する。


「な、何の事かな」


 なので、あえて知らないフリをして相手に会話を促す。


「……言いたくないのは分かっています。でも、姉として、家族として、聞いておきたいと思ったの」


「……どんな事を聞きたいの?」


「……まず1つ。貴方の持っている魔道具の事」


 あぁ、スマホの事かと理解する。

 まず1つって事は、まだ何点か聞かれるのかとも覚悟。

 しかし、スマホ絡みの問題は既に解決済みなハズだ。


「……決闘で無かった事になったんじゃ?」


「……えぇ、両親には私の気のせいだったという事にしたわ。魔法でも練習していたんだって」


 その言葉に少し安心するナターシャ。

 でも、わざわざ聞いてくるって事は気になってしょうがないと。

 やっぱり、お姉ちゃんに教えなきゃダメなんだろうか。

 でもまた困惑されるの困るしなぁ……。

 設定もまだ作れてないし、まだ隠しておきたいんだけど……。


 そんな妹の思考を読んだように、姉は懇願する。


「……お願い、教えて。じゃないと私、納得できない事が多いの……!」


 そう言いながら姉のユーリカは立ち上がって振り向き、今日初めて妹の顔を見る。

 とても不安に満ちた顔だ。言葉によっては絶望してしまうかもしれない、そう思わせる程。


 まぁ既に見られたのは事実だし、このままモヤモヤしたまま過ごされて家族関係がギクシャクするのも嫌だしなぁ……。

 やっぱ説明した方が良いよね……。隠し場所とかも。

 仕方ないのでナターシャは、見せる事に決める。


「……隠しててごめん、お姉ちゃん」


「……やっぱり、持っているのね。魔道具を」


「……うん」


「……何処に隠しているの?」


 俺はアイテムボックスからスマホを取り出す。

 その奇怪な現象に、ユーリカは驚愕の表情を浮かべる。


「……なっ、今の……どうやって……!?」


「魔法だよ。神様に教えてもらったんだ」


「魔法……!? 神様……!? まさか、洗礼の時に現れたあの人……ッ!?」


 口元を手で押さえ、辺りを見渡すユーリカ。

 いや、そこら辺に神様は居ないと思うよお姉ちゃん。


「でも、何故ナターシャは神様に魔法を教えて貰えたの……?」


 当然の疑問だよね。

 なので適当に言い繕う為、スキルを見せる。


「……秘密だけど、お姉ちゃんには見せてあげるね」


 ナターシャは“ステータスオープン”と唱え、自身のステータスを表示。

 そして再び、姉が驚愕の声を上げる。


「なっ!? う、薄い板が現れて、浮いて……!?」


 ……あれ? 皆が知ってる魔法なんじゃないのかな?

 10秒くらいで出来たから開発されてると思ったんだけど。

 まぁいいか、と考えながら説明に入る。


「……これはステータス画面って言って、洗礼後に神父様から教えて貰えるスキル一覧とかが見れる物。お姉ちゃんも使えると思うよ」


 その言葉を不審に思う姉も、疑心暗鬼なまま魔法を唱えると表示され、また驚く。


「……凄い。この魔法があれば魔道具や鑑定士様に鑑定して貰わずに済むわ」


 消すときは右上の×マークを押してね、というナターシャの言葉通りに行動すると画面が消え、再び驚く。

 そして唱えては消して、を繰り返して楽しんでいる。


「……うふふ、嬉しいわ。こんな不思議な事、私が出来るなんて思わなかった」


「嬉しいの?」


「えぇ。魔法を初めて使った気分よ」


 なるほどなぁ、と頷くナターシャ。

 確かにそれは嬉しい。俺も初めて単語魔法使った時は興奮したもん。

 ……アイテムボックス?ノーカンです。


「……じゃあ、私のスキルの所を見てくれる?」


 ナターシャは遊んでいる姉を呼び戻してスキル一覧を見せる。

 低レベルのスキルが並ぶ中、堂々と存在する神の加護(魔法)Lv1。


「……これ。この神の加護(魔法)ってスキルを貰ったから魔法を授けてくれたんだ」


 それを聞いて疑問に思う姉。


「……神の加護って、運気が良くなるスキルって言われているわよね。ギャンブラーが欲しがるスキルだって。……何か他にもあるの?」


「うん。スキルを貰う代わりに神様にちょっとした試練を与えられたからね。今それを何とかする為に頑張ってる所なの」


「ちょっとした試練……?どんな物なのかしら。」


ナターシャは少し物憂げな顔を見せ、申し訳なさそうに告げる。


「……ごめん、教えられないんだ。神様との約束だからね。」


 その言葉に、ユーリカは全てを理解する。


(そうか、ナターシャが毎日死に物狂いで魔法の勉強をしているのは、

 神様に貰ったスキルのせいなんだ……。)


 まぁその思考で大当たりなのだが、ユーリカの思考は更に別方向へとシフトする。


(でも、神の試練なら生涯かけても良いハズ、何故こんなに生き急いでいるの……?

 謎の魔道具、“組織”、神から授けられた魔法、あり得ない程の剣の才能、

 “悪事には関わっていない”……

 ま、まさか、ナターシャの試練は、世界の巨悪と戦う事……!?)


 そう、ナターシャという個人の存在理由についての1つの結論に至ってしまったのだ。

 いや現実はただのふわふわゆるゆる系幼女なんですけどね?ついでに世界と戦っていたのは過去の話なんですけども。

 遂に結論へと至ったユーリカは勇気を出して、ナターシャの闇に踏み込む事を決意する。


「……ナターシャ、教えて。“組織”って何なの?」

後半は元々考えていた話を無理矢理くっつけています。

なんでちょっと無理矢理感出てるかもしれないですけど無理矢理通します。


まぁ真相に迫っていく系なんでちょっとシリアス。

面倒だからこの設定絡ませたくないんだけどいつかまた出てくるかもね。

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