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邪気眼少女の極唱魔法(エクスペル) ~異世界転生したらTSした上に厨二病を再発症する羽目になりました~  作者: 蒼魚二三
ナターシャ7歳編 -テスタ村とハビリス族の隠れ里と、スタンリー秘密工房のアントレ-
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181 捜索開始から休止まで

 テスタ村で再会した、冒険者3人組の話はこうだ。


「村の人に話を聞いてもさー、全然教えてくれないんだよねー?」

「そうなんだ。“余所者のお前らに教える情報は無い”ばかりでな」

「何か感じ悪い村だよな? 近くに良い狩場があるって聞いてたのに、ちょっと損した気分だぜ」


 やはり、この村の裏事情を知らないんだろう。冒険者との確執を。

 まぁ、血気盛んな冒険者らしいから、これはこれでいい勉強になるだろうけど。


『どうしますかマイロード。お教えしますか?』

「んー……」


 判断を任され、考えるナターシャ。

 一応、索敵魔法は常時展開中。

 魔物が集まりそうな場所は、不眠の森以外にもいくつかある事は知っている。


 彼らのランク、ブロンズに適合する場所は、アイアンからブロンズ並みの強さのスカベンジャーという犬系の魔物が頂点で、グレートボアという大猪や、ブルディアーという鹿系統の魔物が中間層に居て、その下に小動物系の魔物が生息している草原……命名するならば草食くさはみの草原かな。

 場所は、この村の南西に進んだ所にある。


 別に行く予定も無いし、教えても良いけど……まずは、相手が何を出せるか聞くか。


「ねぇ、冒険者さん」


「何?」

「なんだい?」

「なんだ?」


「まずは聞きたいんだけど、そっちは何か良い情報を知ってる?」


「良い情報か……」


 パーティーの仕切り役である、フィズが考える。

 彼は暫し思考して、思いついたように語った。


「一つある。これは宿屋の店主の子供に聞いたのだが……ここ近辺には昔、著名な魔導士が住んでいたらしい。君は魔法使いだろう? 試しに探してみてはどうだ。何か良い魔導書や武器が手に入れられるかもしれないぞ」


「なるほど」


 うん、悪くない情報だ。

 でもまぁ、その捜索は後回しで良いや。


「面白い情報、ありがとうございます。じゃ、私がお勧めする狩場を教えますね――――」


 ナターシャは上流階級の伝手つてですが、という裏技を使いながら、南西にある草原の事を教えた。

 話を聞いた冒険者達も、それなりに満足したようだった。


「ふむ、初日の力試しとしては悪くないだろう」

「だな! 楽しみだぜ!」

「早速向かいましょう!」


 冒険者達はナターシャ達に別れを告げて、急いで南西に向かっていった。

 中々良い事をしたと思う。

 疲れたナターシャは軽く首を回し、従者二人に告げる。


「んじゃ、ちょっと時間食っちゃったけど、ゴブリン村に急ごうか」


『はい』

「御意」


 再度同意を得て、ナターシャ達は南東に進んでいった。



◇◇◇



 暫く進んで、ゴブリン村の近くに着いた三人。

 感知されない位置まで近付き、草原に伏せて、ゴブリン村の様子を確かめた。


 内部には、ゴブリン達が作った簡易な住居がいくつかと、10匹程度のゴブリン。

 村の中央では宴を開催しているらしく、獲った獲物を解体して、生のまま食べていた。


「結構文明が進んでるね」

『はい。ですが、最近出来たばかりの村のようですね。メスが見当たりません』


 そうなんだ。でも、ゴブリンと言えば。


「……ちょっと気になったんだけどさ、ゴブリンって他種族のメスを攫ったりは?」

『する事もあります。その末路は言うまでもないですが』


 やっぱそうなのか。

 やはりゴブリンは悪い魔物だな、という偏見が固まった気がする。


『現状はまだ、様子見でも大丈夫ですが――殲滅しますか?』

「む、出番でありますか?」


 個人的見解を話すリズールと、少しやる気が溢れた感じでナターシャを見る斬鬼丸。

 しかし、ナターシャは首を振る。


「……いや、今は座標石の設置だけで収めておくよ。発見情報は村にも流して、その反応次第で判断する。そうした方がテスタ村の人達の防衛方針と合わせられるからね」


『分かりました』

「合理的でありますな」


 という事で、座標石をこの場に設置する。

 座標石とは、特殊な魔力反応を出す魔導石の一種で、現代で言う所のビーコンのような物。

 専用の魔道具を使用する事で、設置された方角や位置を特定出来る優れものだ。

 冒険者ギルドはこれがあるからこそ、危険地域の注意喚起や、高難度魔物の住み家を特定して、的確な討伐依頼を出せる。


 座標石のビーコン効果を発動するには、“起動スタートアップ”と唱えて地面に突き刺す。

 くぎのような形状なので、簡単に地面に刺す事が可能だ。


「――――よし、終わり。ゴブリン達に気付かれない内に退散しようか」

『分かりました。次の村はここから北に進んだ場所です。向かいますか?』

「いや、そろそろ雨が降りそうだから一旦帰る。残りは明日以降に回そう」


 動画の撮影もあるからね。

 従者二人からも同意を取り、ナターシャ達は次第に暗転してきた空模様を見ながら、テスタ村に帰還した。



◇◇◇



 ナターシャは、不眠の森の近くでゴブリン村を発見し、座標石を設置した事を、村の見張りをしていた男性に伝えた。


「――どうするでありますか? 必要ならば、拙者が駆除するでありますが」


 伝え終わった後、斬鬼丸が後ろから問いかけた。

 つまりはそういう事だろう。


「それは有難い申し出だが、今、ゴブリン達を刺激するのは待ってくれ」

何故なにゆえ?」


 疑問を呈する斬鬼丸。

 見張りの男性は『コチラにはコチラの事情がある』とだけ言って、静かになった。

 彼はそれ以上は話したくない雰囲気だったので、ナターシャ達は別れを言って、その場を去った。


「……ふむ、やはり嫌われていると実感するでありますな」

「しょうがないよ。彼らには彼らなりのプライドがあるんだし」

『そうですね。必死に村を守ってきた彼らからすれば、私達のような冒険者は突然現れた若輩者じゃくはいもので、異端者ですから』

「そうそう」


 もしこの村で、冒険者が嫌われている事を知っていなかったら、今の塩対応がショックで寝込んでいただろう。

 俺のメンタルはオランダの涙の尻尾並みに脆いのだ。

 折れると爆発するし。


「ま、話をしてくれるだけマシだよね。酷い時にはそれすら出来ないだろうし」


 心の底から嫌われてるならそもそも村に入れないし、下手をすれば総出で殺しに掛かるのが村社会の恐ろしさ。

 犯罪者達が村を追われ、徒党を組んで野盗になるのも当然だろう。

 斬鬼丸も納得し、諦めた感じで同意した。


「……確かにそうでありますな。真面に話せるだけで行幸ぎょうこう也」

「そーそー。じゃ、空き地に戻ろっか。駆け出し冒険者らしく、宿代は節約してかないとね」


「御意」

『はい』


 ナターシャ達は再び、村の外れの空き地へと歩を進めた。

 冒険者が語っていた、著名な魔導士については気になるけど――今は空模様の方が大事だ。


 少女が見上げた空は灰色で、所々黒く、ゴロゴロと怪しい音が鳴っている。

 これは大雨になるだろう。



◇◇◇



 ポツ、ポツ、と空から雫が降り始めた頃に、ナターシャ達はテントに入った。

 ナターシャは入って早々、ブーツを脱ぎ捨てて、全速力でコタツに入ってしまう。


「ふぅ……」


 落ち着く。さすがコタツ。

 詠唱解除をしない限り、熱源が消えないのもグット。


 そして靴を脱ぎ、服の埃を払ったリズールもコタツに入り、足裏を拭き終わった斬鬼丸も何故か入る。


「……皆もコタツ好きなの?」


 ナターシャはコタツに顎を乗せながら聞いた。

 二人の反応はこうだ。


『いえ、特にする事もないので、我が盟主マイロードの真似しようかと』

「拙者も興味本位でありますが、中々良いでありますな」

『同意します』

「そっか」


 コタツは精霊やゴーレムも駄目にする、究極の暖房器具だという事がここで証明された。

 まぁ超どうでもいい事だけど。


「んー……」


 よし、そろそろ動くか。

 早いうちに動画を撮って、アップロードしてしまおう。


「よし、動く」


 ナターシャはコタツから抜け出した。

 そしてまずは、気分転換にシャワーを浴びる事にした。


「ちょっとシャワー浴びてくる」


『行ってらっしゃいませ』

「……ふむ」


 主が行動を始めたのを見て、従者二人――主に斬鬼丸が、思いついた事をし始める。


「リズール殿。魔法でオセロを召喚して欲しいであります」

『初耳ですね。詠唱は知っていますか?』

「あれは確か――」


 斬鬼丸はリズールに詠唱を教え、二人はオセロをする事になった。

 その事をまだ知らない主は、風呂前に作った簡易脱衣場で、見えない空を見上げながらぽつりと呟く。


「今日の天気は荒れてるなぁ……」


 外では雷が落ちる音が聞こえる。少し怖い。

 俺が撮影を始める事には、多少はマシになっているだろうか?

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― 新着の感想 ―
[良い点] 作者さん、投稿はお疲れ様です! 村民達は冒険者を全然歓迎しないですね。。。 ナターシャさんは案外に賢そうです。メンタルは普通そうですけど。 とりあえず、こちらこそ、引き続き宜しくお願い致し…
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