180 ゴブリン村捜索へ出発。
修正:流石に無理があったので、テスト配信はLIVE配信から通常の動画に変更しました
着替え・朝食などの諸々の準備を終え、コタツでのんびりとしていたナターシャ。
ぼーっとしていると、天使ちゃんからLINEが入った。
天使
[なっちゃーん、テスト動画が非表示になってないよ? アプリの設定ミスった?]
ナターシャ
[マジ? スグに消す]
確認したらマジだった。速攻消した。
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323 名前:名無しのリスナー
あ、つべの動画消えた
325 名前:名無しのリスナー
動画見れないんだが
334 名前:名無しのリスナー
俺まだ見てないんだけど
351 名前:名無しのリスナー
こんなこともあろうかと
https://www.〇outube.com/watch……
ついでに〇コニコにも上げて良いか?
357 名前:名無しのリスナー
>>351
でかした!
360 名前:名無しのリスナー
>>351
構わん、やれ
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ナターシャのテスト動画は、消された事によって更に拡散されていった。
◇
ナターシャ
[ありがと天使ちゃん。マジで助かった]
天使
[いーのいーの♪ いっぱいサポートするって決めたからね♪]
優しいなぁ。
……あ、そうだ。
ナターシャ
[それと……これから配信者をしていくなら、動画編集も覚えなきゃいけないって思ってるんだけどさ、そういうアプリってどれ使えばいいかな?]
天使
[あぁ、そういうのは気にしなくても大丈夫♪ コチラがちゃんとサポートします☆ カメラの映像やヘッドセット・マイクの音声は、天界にある配信用のPCに直接送られてね? そこでりびるん達が色々と調整した後、なっちゃんのチャンネルで配信されるの☆]
天使
[もし編集して欲しいなら、配信アプリの詳細設定で“サイトに合わせた動画編集を行う”をチェックしておいてくれれば、ちゃんと編集した動画をアップロードしてくれるよ♪]
ナターシャ
[おぉー]
まさかの人海戦術。
ちょっと驚くナターシャ。
ナターシャ
[ホントに至れり尽くせりだね]
天使
[でも動画の長さによっては投稿が遅れたりするから、それはごめんね!]
ナターシャ
[いや、全然遅れても良いよ。編集代行してくれるだけでもありがたいのに、それ以上を求めるなんて流石に……]
天使
[フフ、完璧を求めっちゃっても良いんだぜ? 何せ我々はプロですから☆ ま、そういう天界サイドのお話はさておいて、なっちゃんは気にせず自由に配信すると良いよ♪ 配信する上で大事なのは、リスナーさんが楽しめる場所にする事だからね☆]
それもそうだな、と思う。
配信を見に来る人は、配信者の楽しむ姿が見たいから来るのだ。
ナターシャ
[分かった。ありがと天使ちゃん。配信がんばる]
天使
[うん! 頑張って♪ ……あ! 配信アプリにSNSアカウントの登録をお忘れなく♪ こまめな更新もお願いね!]
ナターシャ
[うん。ちゃんと更新するよ。あと、今日中に挨拶動画を撮って、アップロードさせて貰うね]
天使
[わーい♪ 天使ちゃんがなっちゃんの動画に一番にコメントするんだー☆]
ナターシャ
[お楽しみにー]
天使
[待ってるねー♪]
LINEを終了し、背負っているバッグにスマホを収納したナターシャ。
軽いウォーミングアップを終え、静かに待機している従者二人を見て、出発を告げる。
「よし、じゃあ行こっか」
『はい』
「御意」
◇◇◇
魔導服姿のナターシャは、外に出てから魔女帽子を被り、魔法でテントを片付けた。
リズールは4体のゴーレム達に魔法陣の護衛を指示し、斬鬼丸は適当に見張り。
今は、朝日が昇り始めて少し経った午前帯。
「今日は雨が降りそうだねー」
『そうですね』
「そうでありますなぁ」
風上から降りてくる雲の波と、少し湿っぽい空気を感じて、何となく天気を予想する。
空気が湿っぽいのは、昨日の魔法で焦げたり、氷が溶けて湿った空き地のせいなのかもしれないが。
「だったら早いうちに終わらせて、村に戻ってこないとね」
『そうですね。索敵魔法を全力で使用し、ゴブリン村近辺にギルド支給の座標石を設置して、昼頃までには帰還するのが適切です』
「だよねー」
強い魔物とのバトルはまた明日にしよう。
テスタ村には2日か3日くらい駐留する予定だから、タイミングは何度かあるだろうし。
じゃ、さっさと終わらせるべく。
ナターシャはリズールに魔法を仲介させながら、索敵魔法を全力で拡散した。
「“――――森の監視者”」
詠唱が終わり、ナターシャとリズールを中心にして下降気流が起きる。
普段は外部をゆっくりと漂うだけの余剰魔力が、本格的に動き出したからだ。
空の雲が渦を巻くようにしてナターシャ達の頭上に集まり始め、これでは局所的な災害が起きてしまうと危惧したリズールが、急いで魔力流量の調整を行った。
『……マイロードの魔力量には驚かされます。まさか、動かすだけで天候を左右出来るとは』
「まーね」
それがチートってもんよ。
ナターシャは、索敵する魔物をゴブリンのみに定め、歩いて行ける範囲内での自動捜索を行った。
「……なるほど?」
半径5km圏内に見えるゴブリンの8割は、3~5匹程度の集団を作って狩りをしていて、残りの2割は草原の窪地や山間の洞窟などを利用し、集団生活を行っている。
ナターシャ達が発見して座標石を置くのは、後者の集団生活を送るゴブリン達の住処だ。
今回のクエストでは一人1つ、合計3つの村を探す予定となっている。
そして、そういった集落には100%と言っていいほど知能の高い個体が居て、人間の居住区を奪取せんと、虎視眈々と力を蓄えている。
つまり彼らは、いつ農村を襲うか分からない危険分子。
なので、発見次第滅ぼすか、ギルドに報告する事が義務付けられている。
「でも、俺の知ってるゴブリンは、対話出来るような個体も居るハズなんだけどねぇ……」
しかし如何せん、この世界のゴブリンは悪の感情に侵されてしまった土の精霊の末路。
性善説は通用しない、という事なのだろう。
どこかの銀等級冒険者は『人前に出てこないのが良いゴブリン』って言ってたし。
「ま、向かいますかー。リズール、位置情報はゲット出来た?」
『出来ております。此処から一番近いのは……南東に1㎞ほど進んだ場所にある、草原の窪地ですね。不眠の森の傍に居を構えているようです』
不眠の森……カッコいい……
「その森って、魔物が冬眠しないって言うあの森?」
『そうです。テスタ村の人々からはそう呼ばれています』
「へぇー……」
そこなら……突然横から魔物が! 何てこったF.O.E.だ! の可能性もある。
二人の会話を聞いていた斬鬼丸も、期待を込めるようにグッとガッツポーズした。
「んじゃ、一つ目はそこで決まりだね。そのゴブリン村に向かってしゅっぱーつ!」
従者二人も同意を返し、ナターシャ達は農道を通ってテスタ村を横切りながら、南東のゴブリン村へ向かう事にした。
◇◇◇
テスタ村の景観は特筆すべき所は無いが、どことなく疎外感を感じる視線が多い事。
それもその筈、実はこの村には常駐している冒険者は居らず、自警団が村を守っているからだ。
お金・昇給目的で魔物を倒すような冒険者とは違い、あちらは村や住民を守る事に命を懸けている。
気まぐれに訪れ、必要な仕事だけを終えて去っていく冒険者が嫌われるのも当然だった。
まぁ、お互いにお互いの事情を知らないからこそ起こる齟齬だが、別段困る事は無い。
それが閉鎖された村社会での常識だからだ。無理して正す必要は無い。
お互いに嫌い合っているままでも、人は交流する事が出来るしね。
まぁやっぱ、寂しいけど。
「……おい、良いとこの嬢ちゃん」
「何ですか?」
ナターシャが村内を歩いていると、大柄な体躯で、過酷な戦いを送って来た証であるスカーフェイスの男性が話し掛けて来た。
服装は、ちょっと古風な狩人のようだ。〇ラッドボーンとかに出てきそう。
「もしかして昨日、村の外れで爆裂魔法を使ったか?」
どうも口下手らしく、必要な事だけを直球で聞いてくる。
ナターシャは正直に話した。
「はいそうです。……ご迷惑をお掛けしましたか?」
男性は大きく頷き、注意を促した。
「……あまり村を脅かすような事はするな。分かったか」
「はい、ごめんなさい」
丁寧に謝る。
どうやら、昨日放ったドラゴンブレスが迷惑を掛けていたらしい。
「分かったならいい」
男性はそう言って、去っていった。
子供に甘いところが、村を守る人間としての優しさを感じる。
ま、次からは気を付けよう。
男性の大きな背中を見送った後、再び歩き出そうとすると、昨日ぶりに出会った冒険者三人組が。
「……お、斬鬼丸さん達じゃないか!」
「とっても良いタイミングだねっ!」
「そうだな」
何か情報を求めてそうな表情なので、ナターシャ達は何となく察する。
「あぁこれは、良さそうな狩場について聞かれるね」
『でしょうね』
「そうでありますな」
ま、これも一期一会だ。
三人に近付き、情報交換をする事にした。




