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17 ナターシャの戦い方と最後の一手

魔法剣士として戦う妹と次第に強さを増す姉。

この勝負の行方は一体何処に。

 妹の構えを見て、驚愕の顔を浮かべる姉ユーリカ。


(あ、あの構えは、騎士団長ユーシア様の構え……! 何故妹があの構えを知っているの……!?)


 そして、妹に質問する。


「……ナターシャ、その構えは何処から知ったの?」


「……これ? 身体が勝手にね」


「……そう」


 その答えにもならない言葉を聞き、思考を巡らせるユーリカ。


(……ナターシャがたまたまあの構えに行き着いた可能性は否定出来ない。

 でも、もし、もしもだけどナターシャの裏に団長様が関わっているとしたら……?

 えぇ、この強さも納得できるわ……。明らかに強すぎる。

 つまり“組織”には、団長様も関わっている可能性があるというの……!?)


 次第に明らかになるナターシャの裏。その事実にユーリカはギリリと歯を噛み締める。


 ……まぁ本当は全然関係などないのだが、心を読めないナターシャはそんな事知る由もないので攻撃を始める。


「行け! “火球”!」


 ボボウ、と音を立ててナターシャの背後に浮かぶ炎の球がユーリカに向かう。

 当たれば火傷は免れない。

 

 しかしユーリカは、避ける事を拒否。

 迫りくる火球を見据えて中段に構え、精神を研ぎ澄ませる。


(……お父様から授かった対魔法使い用剣術。ここで使わせてもらいます!)


 次第に近づく炎の球。その数3つ。

 ユーリカは自身の感知領域に入るまで引き付け、息を止め、その時を待つ。そして――


「……ユリスタシア流剣術奥義、“魔斬り三連”ッ!」


 一本の木剣から放たれた瞬息の三連撃が、炎の球3つを瞬く間に両断。この場から消し去る。


「……くはっ、ハァッ……、ハァッ……!」


 止めていた呼吸を始め、肩で息をするユーリカ。ニッコリと笑う。

 更に、少し焦げた木剣をナターシャに向け、大胆に言い放つ。


「……これがお父様直伝の剣術。少しは驚いてくれたかしら?」


 対するナターシャも、驚愕の表情を浮かべる。

 ……マジで? 魔法を斬って落とすとかファンタジーじゃん。

 と思いながらも次の魔法を練る。


「……凄いね。でも、ここからだよッ!」


 妹は地面を踏みしめ、飛び、間合いを詰める。

 対する姉も同じく踏み込み、突撃する。


 再び激突する両者の武器。乾いた音を立て、再び剣戟が繰り広げられる。


 両者一進一退の攻防。

 姉が攻めれば妹は防いで魔法を撃ち、姉がそれを斬り落とす。

 だが、接近戦では姉に軍配が上がり始めている。元々の体力の差が違うのだ。

 ナターシャもそれに気付いているようで、接近戦と中距離戦を上手く使い分けながら戦い続ける。


 頭上から振り下ろされる姉の一撃。

 それを木刀で受け流し、木の棒で斬り返す。

 姉は後ろに飛んでそれを避け、下段に構え再突撃。

 ナターシャはその場で動かず、あたかも息を整えているような体勢を維持。


 姉をギリギリまで引き付け、タイミングを見計らい――今!


「“火球”!」


 瞬間的に生成した火球を地面に放ってくぼみを作り、姉の足を引っ掛ける。

 

「うッ!?」


 姉は体勢を崩して倒れるのをこらえる為、ワザと前のめりになり重心を更に前に移動。

 無理矢理次の足を前に出して距離を詰めつつ、体勢を整える。


「……ァアッ!」


 しかしそこを見逃す妹ではない。身体を限界まで捻り、勢いに任せて両太刀で斬り込む。


「ハッ!」


 木刀は外れたが、木の棒が胸部に当たり、ユーリカはうめき声を上げる。


「ぐぅっ……!」


 そこでユーリカは一瞬の思考。


(飛んで少しでも威力を逃がすべきだけど、これは完全に入った。逃がせるのも微々。

 ならば次の一手の為、この技の威力を利用する……ッ!)

 

 ユーリカはそのまま真面に受け、身体を横に吹っ飛ばして妹との距離を取る。


「“火球”!」


 そんな姉を逃がすまいと、バンバン、という音を立てて放たれる火の玉。

 姉は空中で横回転しながらそれらを見切って斬り落とし、着地すると同時に疾走。

 妹との距離を詰めに掛かる。


(……近距離ならば押し勝てる!)


 ナターシャはそれを防ぐ為、火球と水球を混ぜ合わせ、水蒸気の煙幕にして姉の視界を遮る。


(面倒な……!)


 視界を取り戻すべく、霧を打ち払わんと剣を薙ぐ姉の足元には、既に構えを取る妹。


「なぁっ!?」

「ハァッ!」


 交差する斬撃が姉の胴を狙う。

 咄嗟に対応出来ず、再びまともに喰らう姉。


「ぐぅ……っ!」


 しかし、吹き飛ばされるのだけは踏み止まった。

 衝撃でザザザ、と後ろへ滑ったユーリカは、受けたダメージが大きいのか片手で腹を抑える。


(これがナターシャの本気……!? なんて戦略的な戦い方なの……ッ!?)


 妹の強さに次第に追い詰められていく姉、ユーリカ。

 しかし、追い詰められているのは互いに同じであった。


 クッソぉ……! 魔法斬れるなんて聞いてないぞ……! 


 遂に焦りの表情が顔に現れ始める赤城恵(ナターシャ)

 効果時間は身体が自動で動くお陰でカウント出来ているが、そろそろ切れてしまう。

 そしてバフ魔法の効果切れと共に、今まで無茶させていた肉体が悲鳴を上げ、動けなくなることは明白。

 一気に畳みかけようにも、体力の関係で近接戦では既に姉に上回られている。

 今、俺が肩で息をしているのが何よりの証拠だ。


 魔法も、この近接戦メインの戦いでは思いつきやすい単語魔法しか使用できず、更に中距離で戦おうにも魔法が斬られると来た。

 距離を離して良い単語を思いつこうにも、姉の身体能力のせいで距離なんてあってないような物だ。一瞬で距離を詰められてしまう。


 手詰まりだな……と改めて思う。

 プランDを最初から使っていれば勝てたかもしれないが、そもそもここまで強いなんて誰が予測したよ。

 普通お姉ちゃんとかお兄ちゃんって転生した主人公の噛ませ役になるんじゃないの? というラノベ的発想が脳内を駆け巡る。

 対する姉も痛む部位を抑えたり、多少肩で息をしている物の、その目からは闘志の炎が消えていない。むしろ燃え上がっている。


 あれこれお姉ちゃんが主人公なのもしかして、という思考に包まれるナターシャ。

 互いに少し呼吸を整えていると、先に準備を終えた姉が猛攻を開始。


「ハァァッ!!」


「くッ……!」


 ナターシャは上手く防ぎながらも策を巡らし、つつくように一撃、一撃と与えていく。

 攻撃を当てる度、次第に剣筋が鈍ってきているのは感じるが、それでも姉の限界が見えない。

 やはり時間が無いのが厳しい。プランD以降なんて考えてないし、良い単語思いつこうにも語彙力無いし思いつかないし……


 その無駄な思考が足枷となったのか、姉のフェイントに引っかかってしまう。

 ただ途中で剣筋を止めるだけという単純な物だが、この一手は致命的だ。


「しまっ……ッ!」(バシィッ!)


 空を切った木の棒は蹴りによって右腕ごと弾かれ、好機と見た姉の剣が脳天を捉える。

 ナターシャは咄嗟に身体を左に逸らすも、姉の木剣が肩に当たり、ミシリ、と嫌な音を立てる。


「ぐあっ……!?」


 痛む身体、軋む骨の音。残り少ない体力と効果時間。

 既に限界に近いナターシャは、このまま諦めて倒れてしまおうかと思ったが、一つ。




 たった一つだけ、策がある事を思い出した。




 ナターシャは両手の武器を投げ捨て、全力を以て姉の木剣を掴む。


「何ッ!?」


 突然の妹の行動に驚き、剣を引き抜こうとする姉。しかし妹の膂力により動かない。


 この技は使いたくなかったんだけど、許してお姉ちゃん……!

 ナターシャは自身の中で、“プランB”の発動を承認する。


「“我が心に猛りし鼓動よ、眠りし力を稲妻へと変え、――”」


 早口で詠唱される聞いた事の無い魔法。

 姉は即座に剣を手放そうとするが何故か手が痺れ、貼り付いたように動かない。


(な、なんで!? 手が、離れなっ……!?)


 ユーリカが疑問に思った途端、ナターシャの身体に紫電が走り、お互いの身体から放電現象が起こり始める。


 それもそのはず。

 ナターシャが使った魔法は自身の体内に電気を発生、増幅させ、強力な電流を創り出す魔法。

 その電流があまりにも強力すぎる為にユーリカの腕は既に感電していて、筋肉が弛緩(しかん)し、力が入らなくなっているのだ。


「“――我が身体に満ち満ちて流れ狂え狂騒の雷”!」


 詠唱を終え、紫電を放ちながら凶悪な笑みを浮かべて姉に笑いかける妹、ナターシャ。


「ちょっと……いや、かなり痛いけど我慢してねお姉ちゃんッ!」

「何をッ……!?」


 その笑みを見て恐怖の表情を浮かべる姉。しかし、もう遅い。

 ナターシャは覚悟を決め、叫びながら魔法を起動する。


「“磁壊雷神撃サンダー・ボルテックス”――――ァッッ!!!!!」


 ――瞬間。

 ナターシャの体内で暴れ狂い、逃げ場を求めていた電流は、ユーリカを巻き込みながら完全開放。

 二人の身体は、紫を超え、青白く輝く雷の奔流へと飲み込まれていく。


「ぐあっぁあぁぁあぁああああああああああああああぁぁあッッッ!!!!」

「ぐぅぅぅぅ……っっ!!!」


 身体の芯を貫く強大な痛みと痺れに叫ぶ姉と、それに耐える妹。

 その稲妻に打たれたような感電は四秒程続き、魔法の効果が終わった後、姉は燃え尽きたように妹へと崩れ落ちる。

 二人の服の端が焦げ、プスプスと黒い煙を上げているのが生み出された電力の凄まじさを物語る。


「ぐ……あ……、こんな……の……反則……よ……」


 痛みと痺れで動かなくなる身体でナターシャに寄りかかり、呻くように告げる姉。


「ハァ……ハァ……ッ、ごめん、お姉ちゃん……。負けるわけには……いかないから……ッ」


 対するナターシャも非常に荒い呼吸をしながら、未だ健在な姉の意識を気絶魔法で刈り取る。

 姉は完全に気を失い、相手に抱き着いた状態で膝をつく。


「……お父さん。」


 そしてナターシャが父を呼び、勝敗の決定を促す。

 父は困惑しながらも勝者を宣言。


「……しょ、勝者、ナターシャ!」


 その声を聞き、姉を抱きしめる形でナターシャも崩れ落ちた。

ウッソだろお前と思う方、大体合ってます。

そそそもノリで書いてますのであまり気にせず読んだ方がいいと思います。

〇で理論ですよ、ゆ〇理論。

というかこの相打ちしたかったが故にこの文章書いてましたごめんなさい。

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