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邪気眼少女の極唱魔法(エクスペル) ~異世界転生したらTSした上に厨二病を再発症する羽目になりました~  作者: 蒼魚二三
ナターシャ7歳編 -テスタ村とハビリス族の隠れ里と、スタンリー秘密工房のアントレ-
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176 遊牧民テント魔法の評価

「――“仮初の天幕、氷獄を凌げし安息の穹廬(きゅうろ)。柔軟で大いなる寝具と寝台、食糧秘めたる明光の蔵をその身に宿し、この大地により顕出し、周囲を灯して平穏の地帯を創り為せ。“仮寝床メイク・リクラインブース””」


 村外れの空き地で新テント魔法を詠唱すると、まず白い魔法陣が地面に描かれた。

 その次に、とても短い円柱の上に円錐が乗ったような、白い革製の遊牧民族テントが生えて、その周囲を照らす水晶柱が沢山生えてきて完成。ちょっとカオスな絵面である。


 魔法陣は詠唱の通り、安全地帯を生み出す為にそのまま地面に刻まれて、魔除けの結界となる。

 周囲の灯として水晶柱が生えるとは思わなかったけど、何だか魔を退けるような神聖な感じがするし、良い物なのかな?


「リズール。この光る水晶って何?」


光晶聖柱ホーリーライト・クオーツですね。水晶に光の精霊の残骸が混ざり合った物で、ダンジョンや洞窟などの安全地帯のみに顕出けんしゅつします。とても神聖な力を持っていて、粉末状にした物をアンデットに掛けると成仏させる事が可能です』


「へぇー」


 この水晶が生えてる所は安全だよっていう印なのか。

 神聖な力を持ってるみたいだし、これでお守りとか作ったら売れそうだなぁ。


「採取出来る?」


『出来ます。アクセサリーを作製しましょうか?』


「いや、後で良いや。先にテントの中を確認する。入るよ」


『分かりました』

「御意」


 ナターシャは二人を連れて、テントの入口から中に入った。

 内部の広さは8畳ほどで、床は暖かい絨毯じゅうたん張り。

 照明には外の水晶の小型バージョンが使用されていて、壁は綿を詰め込んたキルト生地でしっかりと断熱されており、中央には料理が出来そうなストーブ、左奥にはふかふかの白いベッド、右奥には食糧庫への入口があった。


 出来たての床を汚すのは何となく嫌だったナターシャは、その場でブーツを脱いで、そのまま食糧庫を覗いてみると、この中も綺麗で明るい。

 そして内部の棚には、フミノキースで買って、ナターシャのアイテムボックスに入れていた食料が自動補充されていた。


「おぉー!」


 よし、上手くいった。

 後ろに続いていたリズールも中を見て、改めて自己見解を話した。


『“蔵をこの身に宿す”とした事で、“このテント魔法は収納魔法の保管場所を内包している”とみなし、収納魔法と同期させる事で制限を突破。更に、アイテムボックスに食料を入れれば食糧庫に自動補充されるようにした、と。流石の発想力ですね我が盟主マイロード


「ふふーんっ」


 鼻高々なナターシャ。

 やっぱり褒められると嬉しい。

 まぁ、そこまで深く考えて創った訳じゃないけど。

 ……で、だ。


「これで、食料保存に関する問題は解決だよね。後はやっぱり……」


『そうですね。改造点があるとすれば、テントの設備の方でしょうか』


「だよねー」


 このテント、お風呂とトイレが無いもんね。

 早速改良しないと。


『それと個人的な事なのですが、部屋中央に生成されたストーブが気になります。ナターシャ様、一緒に動作確認しませんか?』


「ん? 分かった」


 二人は食糧庫から目を離し、まずは部屋中央にあるストーブの調査を行う事にした。


 ……あ、斬鬼丸ね。

 彼も床が汚れるのを気にしたのか、入口に座って自分磨き(物理)をしていたので、急いでリズールに水を貯めた桶と雑巾を創らせて『ごめん斬鬼丸』と言っておいた。

 内部の確認を優先してしまって本当に申し訳ない。


 で、ストーブ。

 見た目は薪ストーブっぽい感じなのだが、窓から薪を入れられないし、煙突も無い。

 その代わりに温度調整をするツマミと、点火スイッチが付いていた。


「……コイツ動力源は何?」


『それが気になるんです』


「成程」


 とりあえず動作させてみよう、という事で、ナターシャが点火スイッチを押した。

 するとストーブの内部に青い炎が灯り、窓越しに温かさが伝わってきた。

 それを見て、思いついた事を言うナターシャ。


「電気ストーブ?」


『いえこれは……魔導ストーブですね』


「魔導ストーブ」


『はい。テントの下の魔法陣を通じて、魔力が供給されているようです』


「へぇー」


 なんか凄い。

 でも何でそんなモンが生成されたんだ。


「何でストーブが出来たの?」


『予測ですが、詠唱が強すぎたからでしょう。このストーブは何らかの手段で呼び出されたか、はたまたどこからか召喚されたか……』


「魔法で生成された訳じゃないんだ?」


『理論上は可能ですが、不可能です。まずは、ナターシャ様が装置の設計図を完璧に記憶していないと――』


 二人が議論し合っていると、ナターシャのスマホが鳴る。

 天使ちゃんからのLINEだ。


天使

[なっちゃん! 天使ちゃんのストーブをアイテムボックスから持ってっちゃった?]


ナターシャ

[もしかしてこれ?]


 リズールと一緒に自撮りをして、そのオマケ程度な立ち位置のストーブの写真を送る。


天使

[それそれー! てかリズールさん超美人! 美の極致だね♪]


 どうやらこのストーブは、天使ちゃんの持ち物だったようだ。

 リズールにその事を伝えると納得し、家具の生成に取り掛かり始めた。

 ナターシャはその場で、適当にLINE雑談を始める。


ナターシャ

[悪いね天使ちゃん。この子は私専用なんだ]


天使

[ずるーい天使ちゃんも欲しいー! ま、それは良いとして、どうやって持ってったの?]


ナターシャ

[逆に聞きたいんだけど、天使ちゃんは何で持っていかれたの分かったの?]


天使

[天使ちゃんのアイテムボックスは防犯対策ばっちりだからね♪ 誰が天使ちゃんの物を持って行ったのかすぐ分かるようになってるんだ☆]


ナターシャ

[秘密なハズのアイテムボックスから勝手に物取られるとか天界って世紀末なの?]


天使

[それは違うよ! ただね? 天界では収納異空間を活用した物流が発達してるし、それは天使ちゃんのお仕事にも利用されてるから、効率化の為につけざるを得なくなっただけなの!]


ナターシャ

[あぁ、天使ちゃんの天界一位って営業成績の事なんだね……]


天使

[ちがーう人気一位って事なのー!]


 ぷんすこスタンプを連投する天使ちゃん。可愛いもんだ。

 ナタ―シャが何度か謝罪スタンプを投稿して、天使ちゃんも矛を収めた。


ナターシャ

[ごめんごめん。んでまぁ、ストーブの事ね。新しいテント魔法を使った時に、良く分かんないけど一緒に召喚されたっぽい。なんでか分かる?]


天使

[新しいテント魔法で召喚? ちょっと調べるね]


ナターシャ

[はーい]


 少しして、情報を整理した天使ちゃんが戻ってきた。


天使

[なっちゃん分かったよ。収納空間の指定が曖昧だったから、私となっちゃんのどちらからでも必要なアイテムを取り出せる状態になってるみたい。空間が繋がってる弊害だね]


ナターシャ

[マジか。詠唱直した方が良いかな?]


天使

[あー大丈夫。それはコッチで対処するね。天界でもよくある物流事故だし]


ナターシャ

[へー。どうやって対処するん?]


天使

[(。´・ω・)ん? そりゃもちろん、気合でタグ付け☆⌒v(。-`ω-)]


ナターシャ

[懐かしい顔文字使ってるけど要は人力で分類するんですね?]


天使

[そうでもしないとやってられないんだよー(´;ω;`)ブワッ つい昔に帰っちゃうくらい大変なの……空間魔法って複雑で嫌い……ウワァァン(ノД`)・゜・。]


ナターシャ

[まぁ、うん。頑張ってね?]


天使

[頑張るよー(*'▽')]


 しかし懐かしいなぁ……まぁ、それは置いておいて。

 ナターシャはLINEを終了し、トイレとお風呂の増築方法を考える事にする。


 ふかふかのベッドに乗り、天井を見ながらぼーっと考える。

 真っ先に分かる事と言えば、テント魔法の詠唱に追加するのは悪手。詠唱が長くなりすぎるから。

 だったら索敵魔法のように追加詠唱型にして、風呂とトイレの入口をテントの壁と合体させればいいのではないか。と思いついた。


「よし、そうしよう」


 じゃあまずは、トイレとお風呂の性能を考えよう。

 トイレを使った後のブツは、テントと共に消えるように設定するとして、出来れば水洗式がいい。

 お風呂は今後の事も考えて、自動でお湯が供給されて、大きくなってもゆったり浸かれるような湯舟と、朝に気軽に浴びれるようなシャワーが欲しいし、身体を洗うスペースも姿鏡も欲しい。

 つまりはシステムバスルーム的な風呂場。


「流石に求め過ぎかなぁ……?」


 でも魔法だし、意外と何とかしてくれそうだよね?

 さ、詠唱を考えよう。

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― 新着の感想 ―
[一言] 詠唱·改 世界を別つ境界よ 災禍を絶ち斬る城壁と成せ 断絶の境界線(イージス·ホライズン) 次元と空間を絶ち斬る結界の一種
[良い点] 作者さん、最近の更新もお疲れ様です! とりあえず、リズールさんは凄く有能、そして魅力的な美人さんですね! そして天使さんも何か可愛いかも! 続きも楽しみにしています〜 また、蒼魚さんから…
[一言] 災厄を絶ち斬る城壁よ 壁と成りて害を退け
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