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15 カッコイイは創れる!

数刻後庭に集まった両親と姉、そしてナターシャ。

互いに用意された木の剣を持ち、いつでも始められる状態なのだがナターシャは何かを探している。

ナターシャの行動に不審がる家族たち。ナターシャは一体何をしているのだろうか。

 数刻後、庭に集合したユーリカとナターシャ。

 その様子を父と母が心配そうに見つめている。


 姉は父から手渡された木剣を手に、前に構えて妹を見据える。

 対するナターシャは辺りを歩き回り、何かを探している様子。


(……一体何をしているのかしら。武器ならお父様が用意してくれた物があるというのに)


 そう、父はナターシャ用にと小さく短い木刀をこの短時間で作成していたのだ。

 しかしナターシャはそれを受け取ったにも関わらず未だ構える気配無く、何かの捜索に没頭中。

 父と母も娘の意図が読めず、小さな声で会話する。


「……ナターシャ、何をやっているんだろう?」


「分からないわ。でも、きっと大事な事なのよ」


 そうなのかなぁ、と父は思う。

 そして数秒後、ナターシャの実力を父は知る事となる。


 ……良い長さの物が無いなぁ。

 そう思いながら辺りを捜索する赤城恵(ナターシャ7歳。

 この木刀は確かに使いやすそうだけど、これだとリーチが足りないんだよね。

 勝つ為にはどうしても長い武器が必要になる。


 そんで、どうも古今の英雄の力は色々と混ざり込んでいるせいで一刀流ではその力を完全に発揮できないらしい。しかも普通の木刀じゃなくて何故か木の棒。何故。


 ……なんで木の棒を求めているのか分かったのかって? 知らねぇよ。バフ魔法使うと身体が勝手に木の棒を求めるんだよ。

 だから丁度いい長さの木の棒を探してるんだけど……見つからない物は仕方ない。作るか。

 ナターシャは庭の木の前に陣取ると木刀を腰に構え、居合切りの型を取る。


“古今の英雄よ、その技力を我が肉体にて再現せよ”……!


 心の中で簡略版の身体強化を発動。一瞬身体が光を発し、英雄の技巧を我が身に宿す。

 これなら今の身体能力でも最大限の威力の技を繰り出せる。身体に無理させなくて済むんですよ。

 ……さて、やりますか。奥義!


 古今英雄流一刀術、疑似剣術奥義。“一刀乃許(ヒトタチ)


 短い木刀を遥か頭上に在るはずの木の枝に向かい振るう。

 通常なら届かない距離。しかし、その身に宿る技巧が不可能を可能にする。


 その斬撃が狙う獲物は枝では無く頭上の空間。

 一人の剣士がとある死闘の末辿り着いたと言われる剣術の極致を利用し、目の前の虚空を斬る事により真空刃として発現させる。

 本来の技の威力は、因果に刻む大切断。

 オリハルコンで出来た城壁だろうと、その剣士の前には一枚の紙切れに過ぎなかったという。


 シュンッ、と空気が斬れる音と共に、見えない風の刃が長い枝を切り落とす。


『なッ……!?』


 家族全員が驚き、声を上げたが、一番驚いたのは父親であるリターリス。


(……ば、馬鹿な、あの技は……っ……!)


 ナターシャの技巧に驚いたのか、狼狽え、眩暈を覚える。


「ぱ、パパ、大丈夫……っ!?」


 ガーベリアが倒れそうになるリターリスを支え、背中をさする。


「だ、大丈夫だ……ありがとうベリアちゃん……」


 ガーベリアの支えを受けながら、リターリスは娘、ナターシャを見る。


(何故、あの子があの技を……あれは“剣鬼”が辿り着く境地の一つだ……!

 ……もしかしたらあの子なら、いずれ……!)


 娘の才能に恐怖を覚えると共に、これからの鍛錬を想像して顔が勝手に愉しそうな笑みを浮かべてしまう。


 剣を振るう物なら誰しもが憧れ止まないその境地。今ナターシャはそれを再現してみせた。


 当然姉であるユーリカもその技を見て目を見開き、自分がどんな存在に決闘を挑んだのかと理解。

 身体が勝手に武者震いを起こし始める。


(ま、まさか、あんな才能を持っていたなんて……!)


 木刀を持つ両手を緊張で握り締め、父と同じような笑みを浮かべる。


(所持スキルに剣術Lv0があったけど、まさか、ナターシャはLv0であの領域だと言うの……?

 もし本気で鍛錬を行っていったらあの子、一体どうなってしまうの……!? ふ、ふふ……!)


 そして妹の将来を想い、感激しながら羨望(せんぼう)する。


(……やっと理解したわ。“本気を出せ”とはこういう意味だったのね……。

 確かに、あの子の本当の実力からしたら、私なんて足元にも及ばない。

 挑戦者は最初から私だった、という事なのね……!)


 次第に嬉しさで酷くなる顔を右手で抑えて隠し、妹を見つめる。

 これはもう姉として、騎士としてではない。

 父の弟子、一人の剣士として、全霊を以て妹と対峙する事を決める。


 ……と、先ほどの技に憧れを抱く二人の剣客に対して、妹であり娘でもあるナターシャは斬って落とした枝を脳天に受けて(うずくま)っていた。

 その弱弱しい絵面は、どこからどう見てもそん所そこらの7歳の少女である。


 痛い……メッチャ痛い……。

 ナターシャはジンジンと痛む頭頂部を抑えながら、呻く。

 そして早く痛みが無くなるように、心の中で回復魔法ヒールを唱えている。


“回復”……“我が主よ、その恩恵を分け与え給え、我が傷を癒し給え”……


 ポワン、ポワン、と回復魔法で緑色に光るナターシャ。しかしすぐには回復しない。

 ヒールが行うのは自己治癒力の向上であり、効果が出るには少しだけ時間が掛かるのだ。

 本来傷の急速修復にはハイヒールを使わなくてはならないのだが、ナターシャはその事を知る由もない。


 ヒール全然効果無いじゃん……天使ちゃんの嘘つき……今度ダメ天使ちゃんって呼んでやる……


 天使ちゃんへの逆恨みを心の中で十分に高めつつ、少しだけ痛みが引いてきたので行動開始。

 落とした木の枝を拾って不要な枝を折り、少し形の歪んだ木の棒へと加工する。


 ……よし、長さも十分。

 これで晴れて短い木刀と木の棒という変わった二刀流になった。


 ナターシャは完全に痛みが引いてから姉に向き直り、歩きながらバフ魔法を詠唱する。


「“我が肉体よ、保有せし武器よ、その脆弱さを無くし堅牢なる鋼へと化せ”――」


 強靭化。

 表皮が魔力で覆われ、鎧の如き硬さを持つ。

 木刀は更に硬くなり、木の棒も木剣に負けない程の強度を持つ。


「“我が肉体よ、軍神の加護をその身に宿せ”――」


 軍神の加護。

 異世界の軍神の祝福がナターシャの身体に新たなる力を与え、潜在能力を引き上げる。


「“この世界に存在せし古今東西の英雄よ、その膂力、脚力、技術を我が身体にて再現せよ”――」


 疑似英霊化。

 ナターシャ脳内に轟く戦士の鬨声(ウォークライ)がリミッターを外し、少女の筋力を限界まで引き上げる。

 そして、英雄達が培った技術が自然に身体を動かし、支え、威風堂々とした歩き姿へと変化。


 僅か7歳の娘が見せる歴戦の覇者の風格。

 その歩く姿の美しさ、完成度は見る者全てに息を呑ませ、これから始まる戦いの苛烈さを未来視させる。

 対する姉のユーリカも自然と構えを取り、父もゆっくりと母から離れ二人の間に位置を取る。


 ……既に勝負は始まっている。

 ただ、ナターシャが許可を出していないだけなのだ。


 ナターシャは一歩、また一歩と姉へと近づきながら右手に木刀、左手に木の棒を持ち、両腕を斜めに広げる。

 その異質な風貌、威圧感に、場の緊張感が更に張り詰める。

 

 もう少しで姉の間合いに入る、と父が思った所で、ナターシャはピタリと停止。

 目を瞑り、精神統一を開始する。

 

 今にも歩きだしそうなそのフォルムからは、一切の意図もこの後の動作も読み取れない。

 これが頂きの一つなのか……と、姉ユーリカは息を呑む。


 対するナターシャは、精神統一で逸る心がようやく落ち着いたのか、一言だけ呟く。


「……お父さん、初めて」


 その声で父リターリスも正気に戻り、審判として開始の合図を口に出す。


「二人とも構え!」


 ユーリカが剣をナターシャに向ける。

 ナターシャは動じず、視線だけを向ける。


「……始めッ!」


 剣の頂きを疑似再現した(ビックマウス)と、それに立ち向かう(チャレンジャー)

 今、二人が激突する。

一応剣と魔法タグ付けてるんでいっその事と融合させてみました。

皆も魔法で剣技を身につけよう。

ジェットコースター的な落差を大事にして執筆していきます。後中二病もね。

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