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144 先輩冒険者 アウラ が仲間に加わった

 一度仰天したアウラはナターシャからの説明を聞き、仰天の追撃を掛ける。


「ざ、斬鬼丸さんってナターシャちゃんの魔力で姿を保っていた精霊なんですかぁっ!? し、しかもっ、召喚からずっと現界したまま!?」


「しーっ! アウラさん声大きいですって……! ほら、お爺ちゃんがびっくりしてコッチ見てるじゃないですか……!」


 ナターシャの言う通り、アウラのあまりにも大きな声は老人の耳にも届いたらしく、視線の行く末を冒険者からナターシャへと変えて興味津々な様子。とても気まずい。


 兎に角あわあわしているアウラを落ち着かせる為、ナターシャはアウラの肩を抱いて耳元で囁く。


「……良いですかアウラさん。そういう貴重な情報を大声で叫んじゃダメです。今後、何かの取引で使えるかもしれないんですから。……後、この熾天使の紋章については秘密で」


「あ、あぅぅ、ごめんなさい……ついびっくりして……」


 アウラはそう言うなり、しゅんとしてしおらしくなる。7歳に言い包められる年上の少女とは如何に。

 ふぅ、と小さく安堵の息を吐いたナターシャは、そろそろクエストを選びに行く事に決める。

 一旦その場を離れた斬鬼丸がクエストボードに用紙を貼り直して帰って来たからだ。


「……ナターシャ殿。拙者、まずはどのようなクエストを受ければ良いのでありますか?」


「……あ、うん。じゃあカウンターに行こっか。色々と教えてあげる」


「御意」


 ナターシャは椅子から立ち上がり、斬鬼丸を連れてギルドカウンターへと向かう。


「あっ、うぅっ、待ってくださーい……!」


 ナターシャの言葉でアストリカから受けた注意を思い出し、若干涙目になっていたアウラも涙を拭い、置いていかれまいと付いていく。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 カウンターに辿り着いたナターシャは、再度台に乗ってギルド職員に掛け合う。

 客観的な自分の強さを知るにはどうすれば良いか、斬鬼丸に教える為だ。


「すみません」


「はい、どういった御用でしょうか」


「私でも倒せる魔物って何ですか?」


「そうですね……失礼ですが、冒険者ランクと年齢は?」


 ナターシャは自身のランクと年齢を教え、ギルド職員の返答を待つ。

 職員は魔物図鑑を開き、いくつか提示してくれる。


「貴方なら……この、スタッツ国周辺に生息するスライムまででしょう。他は人畜無害な生き物、マイシュルームやストロリザードクラスだと思います」


 まぁ妥当か。次に斬鬼丸について尋ねる。


「……じゃあ、私の後ろに居る護衛が倒せそうな魔物はどんなのがありますか?」


「ふむ……彼のランクは?」


「最近登録したばかりなのでまだ銅です」


「成程……」


 ギルド職員は少しだけ考え、斬鬼丸に質問を投げかける。


「では、そこの護衛の方。今までどんな魔物を倒した事がありますか?」


「討伐経験でありますか……拙者はとても大きく、黒い熊の魔物を倒したであります」


「……と、言いますと?」


「名前は……ブラッディデスベアーであります」


 その言葉を聞いた職員は、ゆっくりと図鑑を閉じながら話す。


「……と言う事は、この首都近辺に生息する魔物の殆どを討伐出来る事になりますね」


「おぉ! では早速強い――」

「しかし」

「――むっ」


 職員は斬鬼丸の言葉を遮り、釘を刺すように注意を述べる。


「……カッパーランクで強い魔物を倒し過ぎると、他の駆け出し冒険者達が真似をして無謀な行為に挑戦する可能性があります。なので今は極力、節度を保った行動を」


「……気を付けるであります」


「はい、お願い致します。……では、どのクエストをお受けになられますか?」


 モノクルを掛けた職員はそう言って、朝方見せてくれたクエストをカウンターの上に広げてくれるのだ。まずはここからだと言わんばかりに。


 途中から静かに二人の様子を見ていたナターシャは、冒険者として名を売る為の心得を斬鬼丸に教えておく。


「……良いかい斬鬼丸。適正ランクのクエスト“ついで”に強い魔物を倒しても文句は言われないからね?」


 斬鬼丸も、ナターシャの言葉でギルド職員の意図を汲み取ったようで、次のように発言する。


「……成程。そういう事でありますか。では、節度を守って強者と戦うであります」


「そうそう」


 ランクが低いうちは、メインクエストが無いと強い魔物を狩れないんだよ。

 名声は無いけど実力はある駆け出し冒険者の鉄則さ。賢い冒険者成り上がり系のテンプレ。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 ……で、元々予定していたマイシュルームとかいうキノコ型魔物捕獲クエストを受ける事になったんだけど、アウラさんもおまけで付いてくる事になった。

 理由は単純で、先輩のアストリカ含む、俺達の護衛に携わった冒険者は暫くお休みするから。

『護衛依頼の後は流石に一週間くらいサボらないと魔物狩りなんてやってられない』とアストリカ達に言われたらしい。


 アウラさんはギルド職員に『先輩冒険者らしく、彼らに色々と諸注意を行うように』と言われていたので現在、彼女にカウンターから少し離れた場所で、クエストに関しての注意点を教えて貰ってる訳だが……


◇◆◇


「まずは捕獲したマイシュルームを持ち運ぶ為の背負い籠を借りましょう!さぁギルドを出て、二軒隣にある倉庫の備品貸し出し窓口に……」


「あ、アイテムボックスがあるんで良いです」(異空間からロッドを取り出す)


「何ですかその便利魔法!?」


◇◆◇


「……ふ、ふぅん、天界の魔法を授けて貰ったんですね。ま、まぁ、神様ならそういった魔法を造れるでしょう。次は森で迷わないようにする為の道しるべの付け方ですが……」


「あ、魔道具に地図入ってるんで良いです」(ミノフキース周辺の地図を画面に表示して見せる)


「何ですかその便利な魔道具!?」


◇◆◇


「……そ、それも神様からの授かり物なんですね。さ、流石我らの神様。つ、次……次は……そ、そう!ナターシャちゃんの服装! それは駄目です! 激しい動きが出来ませんっ!」


「? 今回は討伐クエストじゃないので、別にこれでも問題ないと思います」


「如何にも。荒事は拙者にお任せを」(剣の柄を叩く)


「た、確かに。斬鬼丸さんが居るなら…………うぅっ、もう教える事が無い……っ!」


 ショックなのか、膝を付くアウラ。

 しかし三度目は流石に曲げないようで、グッと立ち上がるとナターシャの前にしゃがみ込み、両肩に手を置いて告げる。


「……でも、何があるか分かりませんからっ! 冒険者用の服を買いましょうナターシャちゃん!」


 ナターシャも少し考えたが、これから冒険者として活動していくなら動きやすい服装が必要だ。

 まぁ、一着くらいは買っても良いだろう。ただ問題は……金額か。アウラさんに聞こう。


「冒険者用の服って一着幾らくらいでしょうか」


「んー……それはー……その街の時価、ですかねー……?」


 とっても目が泳ぐアウラ。この目は値段を知らない目だ。

 なので、ナターシャは言い方を変える。


「じゃあ、アウラさんの装備は幾らだったんですか?」


「えーっと……私の装備はーその、アストリカさんに見繕って貰ったのでー……」


「お金をどれだけ渡した、とかは?」


「実はー……ですね。その場にお父さんとお母さんも居たのでー……」


 ……あぁ駄目だこの先輩冒険者。完全に箱入り娘じゃないか。

 色々と諦めたナターシャは肩に架かるアウラの手を優しく持ち、両手で包んでから告げる。


「……ちょっとギルド職員さんに聞いてきます」


「は、はいぃ……お役に立てなくてごめんなさい……」


「お気になさらずに。では行ってきます」


「うぅ……ショック……」


 その場で再度膝を付くアウラを放置し、ナターシャはギルドカウンターへと向かう。


「……何度もごめんなさい。質問しても良いでしょうか?」


「はい。どのような御用でしょうか」


「子供用の冒険者服は何処で買えますか? それと、値段も教えて貰えますか?」


「……畏まりました。少々お待ちを」


 ギルド職員は、地図を取り出して子供用の冒険者服を売っている商店、そして平均価格を教えてくれた。

 販売地域は首都の西南西。平均価格は銀貨7枚。まぁそんなもんか。


 ナターシャは職員に感謝を告げてその場から離れ、やる気満々の斬鬼丸、対照的にしょぼんとしているアウラと共にギルドを出て販売地域へと向かう。

 ……そうだな、ついでだ。一度家に帰って、これからクエストで森に向かう事を皆にも伝えておこう。

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