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132 五日目:冒険者ギルド到着までの道筋と首都の景観

 首都に入場した一行の馬車は、冒険者ギルドへ向かって街の中を練り歩く。

 ナターシャとクレフォリアは御者台から顔を出し、通り過ぎていく街の景観を眺める。


 城壁の中の街並みは至ってシンプルに中世。

 景観はエンシア王国と似ては居るが、ちゃんと異なる部分もある。


 現在の通りは石畳。灰色。同型の石を交互に並べ、その間には白い接着用の建材。

 歩道と道路の区別は無く、全て平面。時折家の間に見える路地まで丁寧に石畳で舗装されている。

 所々薄い黄色や赤など、色違いの石が使われているのがオシャレ。


 そして通りの左右、何処となくウィード商会と似た雰囲気の建物群は殆どが2階建て。

 稀に3階建てを見受けるが、極々一部に過ぎない。


 屋根に使用している瓦は全て赤。

 新品なようで色褪せておらず、エンシア王国の平べったい瓦と違ってアーチ状にカーブしている。

 壁面にはモルタルが塗られていて、全ての階層が白に統一。

 技術不足による凹凸や亀裂が一切無く、非常に美しい。まるで熟練の職人が仕上げたようだ。

 建物の玄関もエンシアと違い、両開きのドアが殆ど。

 形状は自由だがサイズは規格化されているようで、馬車が入れる程大きい入口も、階層も無い。


 そして面白い事に、ロスタリカで確認した街灯が無い。

 更にあの、発光する上に上空を浮遊する謎の魔道具が出てくる様子は無く、街の住民も食材を手提げの編み籠に入れて帰路についている。

 時折耳に入ってくる、今日も疲れた、明日も頑張らないとね、という住民の世間話からそう推測したまでだが、やはり夜でも活動出来るエンシア王国やロスタリカが特殊なだけなんだと思う。


 と、ナターシャが色々と考えながら景色を眺めている内に馬車列は通りの最奥にあるT字路に到達。そのまま左に曲がり、右に向かって緩やかに弧を描く道を進んでいく。


 そして、ここら辺から商店らしい建物が左右で店構えを始める。一部には石造りの物も。

 その石造りの建物だが、何の店かは分からないがとても人気店らしく、夕方にも関わらず人が行列が出来ている。

 とても美味しそうな匂いが漂ってきたりするので、多分総菜屋か何かなんだと思う。明日絶対行く。


 クレフォリアも良い香りに釣られてナターシャの方に近付いたり、離れたり。とても忙しく動いている。


「お腹が空きました……」


「分かる……」


 ナターシャに近付く度に空腹を訴えるクレフォリア。ナターシャも同意。

 そんな行動を繰り返している内に馬車は二度目となる岐路、今度は十字路に辿り着く。

 暫く左右を横切る馬車の為に停止した後、一行を乗せた馬車はゆっくりと右折する。


 右折した先にあったのは巨大な円形広場。道路は馬車3台が並んで進める程広い……はずなのだが、広場には貸し馬車や乗合馬車用の待合スペースが作られていて、実際通れる幅は馬車1つ分。


 因みに広場中央には公園、内部には噴水があり、公園の隣には巨大な貯水塔。十数メートルの高さはある。最上部のタンクからは配管が複数繋がっていて、一番下方にある蛇口では兵士が水の販売を行っているみたい。


 広場に繋がっている通りは先ほど通って来た道である北、反対側の南、そして東の3つ。

 方角が分かる理由は単純で、貯水槽に白の塗料で方角が掛かれているからだ。


 ナターシャ達の馬車は流れに乗って、反時計回りに広場を進む。

 道中、スタッツ国の兵士が笛を鳴らしながら交通指揮を行って馬車を止め、広場中央に向かって進む歩行者を優先させていた所に関心した。

 停車が遅い馬車の前には石壁を発生させていたのが驚き。問答無用過ぎる。


 ナターシャ達はその足止めを2回程受けつつ、東の通りへと馬車を進める。


 東の通りは最初の道、つまり西の通りよりもかなり広い。馬車3列は並んで進める程だ。更に、通りの両側には歩道がある。


 ……で、歩道と車道の間。

 此処には水路があり、西から東に向かって水が流れている。

 建物前の路面には停車エリア、水路には大小さまざまな橋が掛かっているので、馬車も建物前で停車、更には建物に付属された倉庫内へと入れるし、歩行者も気を付けながら反対側に渡る事が可能だ。

 東通りの最奥には城門が見えるので、コチラからも城壁の内外に移動する事が可能な様子。


 一行を乗せた馬車は東通りを半分程進んだ後、目的地である冒険者ギルドへと到着する。

 3台は一度、路面に作られた白い停車エリアに停車。

 前と後ろの馬車からは冒険者が降りて、ギルド内へと向かっていく。


 前方馬車の面子は一様に疲れたー、報酬貰ったら良い飯食うんだ……など、自身の気持ちを正直に表しながらギルドへ入り、後方馬車の面子は御者台から顔を出しているナターシャとクレフォリアに軽く手を振りながらギルドの中へ。


 ナターシャ達の馬車からはガレットさんがため息をつきながら降り、アーデルハイドと共にギルドの中へと入っていく。

 ギルドの馬車2台は搭乗者が居ない事を確認した後、上手く動いて車道へ戻り、冒険者ギルドの隣の隣にある格納庫へ向かう。


 ぽつんと残されたナターシャ達の馬車内では、静かにお座りして待つ少女二人と胡坐を組んで待機する西洋鎧。御者の男性は欠伸をしていて明らかに眠そうだ。


「暇だねぇ……」


「そうですねぇ……」


「そうでありますなぁ……」


「……外でも見る?」


「そうですね」


「そうでありますな」


 3人は何となく御者台から身を乗り出し、御者の男性は少女二人だけでなく斬鬼丸まで来たことに驚いて軽く跳ねる。


 ナターシャはもう一度、確認の意味を込めて冒険者ギルドの外観を目に焼き付ける。だって建物の場所や見た目忘れたら困るし。


 冒険者ギルドは3階建て。他の建物と合わせるように、アーチ状の赤瓦と白いモルタルの壁面。

 1階は分厚い木窓、2階、3階はガラス窓という不思議な構造。一階層につき窓が3つ開いている。

玄関は両開きのスイングドア。中の様子はエンシア王国とほぼ同じ。


 そして、魔物を乗せた荷車の列がギルド隣の魔物回収場に並んでいるのは相変わらずと言った所。

 黄色の紙に討伐した魔物の名前と評価点が掛かれる方式も同じのようだ。証書の内容で冒険者達が一喜一憂する姿は見ているだけでも面白い。

 ナターシャはこの嬉しい感情を共有したくなり、クレフォリアちゃんに話しかける。


「なんだか、スタッツ国にやっと辿り着けたって実感するね」


「そうですねっ!」


「この後は……余った食料をギルドに売るから、私達も格納庫に行くのかな?」


「きっとそうだと思いますっ!」


 ……なんかクレフォリアちゃんが全肯定BOTみたいになってるがまぁ気にしない。

 そのまま少しの間だけ街を眺めていると、アーデルハイドと共にガレットさんが戻ってくる。

 アーデルハイドは御者の男性を労った後、食料の買い取りを行うので車両格納庫まで付いてきて欲しい旨を伝える。

 それを聞いた男性はナターシャ達に一旦降りて待つ事を伝えて全員降ろし、今度はアーデルハイドを乗せて格納庫へと向かっていく。

 ガレットさん曰く食料を積み下ろすのに少しだけ時間が掛かるらしい。換金証は明日、俺の宿泊場所に届けられるってさ。


 その為ガレットさんは少女二人の手を引き、斬鬼丸にしっかり護衛する事を告げて冒険者ギルドの中へと入っていく。安全第一だ。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 冒険者ギルド内の酒場では、報酬を受け取ったディビス達が早速宴会を開いて酒を飲んでいた。

 仕事が終わった解放感から相当はっちゃけているようで、ジョッキに注がれた物をノリで一気飲みしたりしている。


 元気だなぁ……と生暖かい目線を送るナターシャは今、ガレットさん含む女子三人で夕食代わりにスコーンを食している。5つで小銀貨1枚とお手頃価格。それを3セット。付け合わせには少し硬めの牛乳クリームとジャム。これも小銀貨1枚だが、1回だけお代わり可能。安いね。


 しっかり甘露を味わい、お腹も膨れた所でアーデルハイドが戻ってくる。食料の積み下ろしが終わったようだ。

 ナターシャ達は外で待機している自分達の馬車へ乗り込む。

 馬車は食料や水樽、エール樽が無くなったので広くなったが、テントセットと予備の車輪が邪魔なのはもう仕方ない。


 そしてこれから向かうのは、クレフォリアちゃんの親族が宿泊している場所。

 もうクレフォリアちゃんとはお別れか。寂しいな。


 御者の男性はナターシャ達が乗り込んだ事を確認し、手綱を操作。

 アーデルハイドに見送られながら東通りを戻り、中央広場へと向かう。

ぼんやりとしたイメージだけだった首都内部の詳細地図を作る羽目になり、執筆まで時間が掛かりまくりんぐ……

でもようやく終わりが見えてきた、楽しい冒険者生活まで後少しだ頑張れ俺……

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