105 三日目:かばん屋さんでの買い物と忘れ物
宿から出たナターシャ達が手提げカバンのマークの付いた看板の建物に着く。
朝早く、開店の為に玄関を開けた職人風の老人がナターシャ達を見て驚きながら話す。
「今日はお友達も連れて来たのか」
ナターシャは元気よく返答。
「はい。おじいさんのカバンとっても良い物だから。この子に合いそうな物も1つお願いします」
「宜しくお願いしますっ」
ナターシャに合わせるようにしてクレフォリアは頭を下げる。
老人は頭を上げたクレフォリアに近付くとしゃがんで視線の高さを合わせる。
そして額に皺を寄せ、顎を人差し指と親指で挟むように触りながらクレフォリアの目を見る。
クレフォリアちゃんは少し緊張した面持ちで口をキュッと引き締めている。
「……ふむ。この子には背負うタイプが合うな。付いて来い」
老人はそう言うと玄関を開けて建物の中に戻ってしまう。
バタン、と扉が閉まりポカンとするクレフォリア。その肩をナターシャが叩いて現実に引き戻す。
「中に入ろっか」
「あ、はいっ」
ナターシャに続き、クレフォリア、ガレットと斬鬼丸も続いて建物の中に入る。
建物の中では老人が既にカバンを選んで待っていた。
茶色い革製で、学生鞄のような見た目のリュックだ。留め具はベルト方式。
老人はクレフォリアに今背負っているリュックを降ろすように伝え、背負わせる。
「これは……」
クレフォリアは肩にかかるリュックのストラップを両方持ち、不思議そうに背中を見ようとする。
老人はそれを見て軽く説明する。
「このリュックは学生用だが、あんたに一番似合う物だ。ポケットを多めに作ってあるから紙や本を沢山中に収納出来る。多少の軽食も入れられるぞ」
「……っ」
老人の言葉で一瞬顔が曇るクレフォリア。
しかしすぐに笑顔になり、嬉しそうに返答する。
「……色々と入れられるのですか。とても機能的な鞄なのですね。……どうですかナターシャ様。似合いますか?」
そしてその場でクルン、と一回転してナターシャに見栄えを聞く。可愛い。
「……可愛い」
ナターシャは感情に任せてつい直球で告げる。それを聞いたクレフォリアも嬉しそうに笑う。
「ふふ、とっても嬉しいです」
「良かった」
クレフォリアの笑顔でナターシャも嬉しそうに微笑む。
その後購入するかどうかという話になり、鞄の精巧さでかなり高いのでは、と購入を躊躇う様子のクレフォリアを他所に提示された値段は銀貨2枚。
呆気に取られたクレフォリアちゃんは、失礼ながらも老人に経営状況を尋ねてしまった。
老人曰く経営状況は良好。普段は鞄の修理を請け負っていて、そちらで生計を立てているらしい。
鞄は余り革を流用して適当に作り上げたそうだ。その割には凝った造りをしているよねホント。
ガレットさんも個人的な趣向で小さなコインケースを1つ購入し、一行は退店する。
クレフォリアは元々背負っていた方のリュックをアイテムボックスにしまい、新たに購入した物を背負う。
クレフォリアが軽く身体を浮かせて鞄の動きを確かめている時、ナターシャはその様子を動画に撮ろうと思ってスマホを取り出す。
……そしてアイテムボックスが開いた瞬間、スマホから流れる着信音が辺りに響く。
軽快な着メロを聞き、そう言えば昨夜しなければならないハズの定期連絡を忘れていた事を思い出したナターシャは急いでスマホを取り出してビデオ通話をオンにする。
「は、はろー……?」
少しぎこちない笑みで画面に向かって手を振るナターシャ。
画面の中ではとても心配そうな表情の両親と天使ちゃんの顔が映っていた。
ようやく電話が繋がり、とても安心した表情を浮かべる天使ちゃん。
しかしすぐに表情を変えてとっても怒りながら話す。目が><になっている。
『もー! 心配したよー! ちゃんと毎日連絡してよー!』
「つい眠くって忘れててね……?」
『昨日の夜7時くらいからずっと電話掛けてたんだよー! めっちゃ心配したんだからねー!』
「ご、ごめん。スマホアイテムボックスに収納してると音鳴らないから……ごめんね?」
スマホに向かって申し訳なさそうに左手を立てて謝罪。
天使ちゃんははぁ、とため息をついてナターシャの両親にナターシャの顔を見せる。
それを見てようやく安心したのか、大きく息を抜くパパンとママン。ホントごめんね?
リターリスは早速現状報告を求める。
『それで、今どういう状況なんだいナターシャ』
「今はこんな感じー」
ナターシャはスマホを動かし、鞄の中のポケットを確認するクレフォリアちゃんとそれを眺めるガレットさんと斬鬼丸の様子を映す。
「サウド村を出発する前にちょこっと観光してる所。クレフォリアちゃんに新しい鞄を買ってあげたんだ」
『そうなのかい。良さそうな鞄だね』
「あ、私も斬鬼丸も新しい鞄買ったよ。お揃いのヤツ」
ナターシャはボディバッグを前に移動させ、それも映す。
「ほら、蓋とか堅いからとっても使いやすいんだ」
『おぉ……良いなぁ……』
ナターシャが蓋をパカパカさせる様子を見て、羨ましそうな声を漏らすリターリス。
現状の簡単な説明を終えたナターシャはバッグを後ろに戻し、再び画面を見る。
「今はこんな感じだよ。何か気になる事はある?」
『いや、もう大丈夫。しっかり旅を楽しんでいるようで何よりだ。……ただ、ちゃんと毎日連絡するようにね?』
「ごめんなさーい。ガレットさん達ともお話しする?」
『あぁ、お願い出来るかな』
ナターシャはガレットさん達に話しかけ、今実家にいる両親と会話している事を告げる。
ガレットさんは少し驚いた様子で、斬鬼丸は物珍し気にナターシャの見せるスマホの画面の中を覗き込んでいる。
『おはようございますガレットさん。斬鬼丸さん』 『おはようございます。娘がお世話になっています』
画面の中でリターリスとガーベリアが手を振りながら話す。
それに戸惑いながらも手を振り返すガレットさんと、楽しそうに手を振る斬鬼丸。
「……おはようございます。今の所は順調に旅の行程が進んでいますよ」
「おはようであります。お二人も元気そうでなによりであります」
『今は確か……サウド村でしたか。なら、今日が一つ目の山場ですね。道中魔物に気を付けて進んで下さい。危ない時は斬鬼丸さんも不殺の心得を止めて全力でお願いしますね』
ガレットさん達もその言葉にそれぞれの思いを返答する。
「えぇ。平穏を祈るばかりです」
「ハハ。もとよりそのつもりであります。今日は慈悲を捨て、本気で行く事にするであります」
『はい。娘とクレフォリアちゃんをお願いします。それじゃあナターシャ、最後にクレフォリアちゃんとお話させてくれるかい?』
「分かった」
ナターシャはリターリスの指示通りにクレフォリアを映す。
……お父さん昨日滅茶苦茶ビビってたのに順応早いなぁ。やっぱり副団長ってそれくらいじゃないと務まらないんだろうか。
『おはようございますクレフォリアちゃん。元気ですか?』 『クレフォリアちゃん元気? 怖くない?』
両親の心配する声を聞き、緊張しながらも元気よく話すクレフォリア。
「あっ、はい! とっても元気ですっ! 新しい鞄を買って貰えたので気分も一新出来た気がしますっ!」
「ふへへ」
ぎゅっと両腕を小さく前で構え、元気一杯でドヤ顔。
それを見てナターシャは小さく笑う。これでも中世ファンタジーの世界なんですから不思議な感覚ですよね。
一行の様子もしっかり分かった事で完全に安心した両親。
最初の方の不安だった表情が嘘のように、元気で嬉しそうな顔で会話終了を告げる。
『じゃあ、定期報告はこれくらいで十分だよナターシャ。もう一度言うけど、宿泊する村についたら絶対報告するように。心配するからね』
「はーい。スマホは音が鳴ったら分かるようにバッグの中に入れておくよ」
仕切りがあって狭いけど、一か所だけギリギリ入るスペースあるからね。そこに収納する予定。
アイテムボックスは便利だけど倉庫として使うのが一番良い使い方だって言う事が分かった。
『じゃあ、ヨステス村まで何もない事を祈っているよ。皆に旅人神の加護あらんことを』
『皆も病気しないように気を付けてくださいね』
両親に声を掛けられた面々も画面に向かって手を振り、ナターシャも手を振って会話が終わる。
スマホはバッグに収納し、出発時間が来るまでもう少し店を見回る事にする。
何か面白い物があるなら1個くらいは買っておこう。
「……ナターシャ」
ガレットさんが少しワクワクしているナターシャを呼ぶ。
はてな?と思いながらナターシャはガレットさんを見て話す。
「なんですか?」
「今から他の店も見回るつもりでしょう? 何か良い物を買おうとするのは良いですが、良い物だからといって買い過ぎないように注意しなさい」
「……はい。」
買い物前に釘を刺される。
ガレットさんには色々とお見通しだな……
アルトネリコ2のメタファリカ聞いてると楽しい
特に天地創造とか中二病すぎて妄想ひろがりんく




