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102 二日目:とある事情で新察知魔法に掛かっているデメリット

 農村から街道に戻り、畑地帯を抜けて草原に入った所。

 エンシア王国に向かう途中で見たあの極彩色の牛の群れを発見したのでこれは好機!と思い先程創った察知魔法を使う。


 ただ、クレフォリアちゃんに詠唱を聞かれるのが嫌だったので頭の中で唱える。


(“溢れ滾る我が魔力の奔流を源とし、今此処に静謐の森を創り為す。広く渦巻く魔力の中、常に相違する存在を見つけ出さん。森の監視者ヴァルト・ヴァッヘ”)


 いやだってそんなに精度求めてないし、二つ名がリアルに恥ずかしいんだもん……

 付けておいて何だけど、今のところ変更したい二つ名部門No.1だからね?


 詠唱の通り視界が暗転して、遠くにいる牛の集団が青い影になって見えるように……ならない。

 いくら意識を集中しても見える気配すらない。なんでだろう。


 ナターシャは牛を睨む事を諦め、リュックからスマホを取り出して天使ちゃんに質問する。

 こういうのは天使ちゃんに聞いた方が分かるはずだ。そんな気がする。

 LINEで呼びかけるとすぐさま天使ちゃんが反応する。


天使

[はいはい天使ちゃん。いまおやつたいむ☆]


ナターシャ

[へぇ、何食べてるの?]


 ナターシャが問うと、天使ちゃんはヨーグルトを前にぎこちなくピースするガーベリアママンと自分が映った写真を送ってくる。

 相変わらず綺麗だねお母さん……絵になる……いやまぁこれ実質絵だけど。


ナターシャ

[良い物食べてるねぇ。誰から貰ったの?]


天使

[リターリスさんが貰って来たの。それをなっちゃんのお母さんと味見中♪]


ナターシャ

[良いなー]


 ナターシャは添付された写真を保存しながら質問する。


ナターシャ

[まぁそれより聞きたい事があるの。察知魔法について]


天使

[はいはい?]


ナターシャ

[今、カラフルな牛みたいな魔物に向かって察知魔法を使ったんだけど全然察知出来ないんだ。何でか分かる?]


天使

[……うーん、そこに行くと魔物の特性の話になるんだけど大丈夫?]


ナターシャ

[うん]


 天使ちゃんによる簡単な魔物説明会が始まる。


天使

[まず、魔物は基本的に魔力を利用して生きています。だから魔物。利用方法は様々で、獲物察知に使ったり、行動強化に使ったり]


天使

[そして、なっちゃんの見てる魔物。これはカウフラージュっていう名前の変わった魔物で、自分の身体を迷彩色にしたり魔力を隠したり出来る凄い魔物なんだ。カラフルな見た目は外敵用に魔力察知阻害を展開している証拠だよ。普段は普通の牛みたいに白黒なんだ]


ナターシャ

[えっ、あの魔物そんな特殊だったの?]


 てっきりあの見た目が普通なんだと思ってた。


天使

[うん。でも長時間は隠せないから遠目では休み休み察知阻害、魔力察知を受けたら察知阻害と共に迷彩使って逃走して……で生き残ってるよ。まぁ常時漏れてる魔力で探知する分には反応しないけど、ちょっとでも魔力を使うとすぐ姿を隠すね。面白いよ?]


ナターシャ

[へぇー……魔力使ってみよ]


 ナターシャは意気揚々と魔力を広げようとイメージし始める。

 見えないと不便なので魔力知覚も使い、魔力の流れを見ながら行う。

 体内の魔力は流れ、ナターシャの身体から漏れはする。しかし、いくら頑張っても全部大気に溶け込むように消えていく。

 一向に魔力が伸びていかないので怒ったナターシャは天使ちゃんに質問する。


ナターシャ

[魔力全然伸びないんですけど!]


天使

[まぁまだ魔法初心者だからねなっちゃん。感知範囲広げられるようになるには少なくとも魔法適正Lv5要るかな]


ナターシャ

[それ先に言ってよー!]


天使

[だってヨーグルト食べたかったんだもん?]


 そう言って再びヨーグルトの写真が送られてくる。

 隣には蜂蜜が置いてあり、甘さも十分な事も伺える。羨ましいぞ天使ちゃん……

 まぁそんな事より察知魔法の詳細を尋ねる。感知範囲広げられないのになんで使えるんだよ。


ナターシャ

[察知魔法の範囲を広げられるようになるには魔法適正Lv5必要なのは分かったけど、現状使える理由は?]


天使

[まぁ察知魔法自体はLv2から使えるんだ。ただ感知範囲を広げるには高レベルの魔法適正が必要なの。魔法適正Lv3の場合、なっちゃんの創った察知魔法の稼働率は20%くらいになるね]


ナターシャ

[つまり……どれくらい?]


天使

[半径3㎞の20%で600メートル……いや、風なんかの関係でもっと短いね。大体300メートルくらい。直径でね]


 メッチャ弱体化してる……

 20%どころか5%くらいに下がってるんですけど……


ナターシャ

[弱体化しすぎじゃない?]


天使

[天使ちゃん的に言うなら100メートルでも十分長いと思うよ? 半径150メートルって東京ドームのグラウンド2枚分よりちょっと小さめくらいの範囲なら見つけられるって事だし]


 あー……まぁそう言われれば広いような気がする。


天使

[何にせよなっちゃんの創った魔法のお陰で察知魔法の最大直径が100メートル延びたわけですからこれは快挙♪ しっかり皆に広めていってね!]


 広める……か。

 天使ちゃんの言葉でちょっと良い事を思いつくナターシャ。


ナターシャ

[……魔法は冒険者ギルドに販売する形で広めて良いかな?]


天使

[良いんじゃない? これぞ天使ちゃんのギフテッド☆ まぁ創ったのなっちゃんだけどねー!]


 天使ちゃんは笑っているスタンプを連投し、ナターシャは片頬を吊り上げるように笑って悪い子になる。

 よっし、スタッツに着いたら早速アーデルハイドさんに掛け合って察知魔法売り込もう。そして金稼ぎだ。

 へへ、創造系チートは販売ルートさえ確立してしまえばこういった金稼ぎが出来るから素晴らしい……

 沢山便利な魔法創って売って大金持ちだ……そうだな、次はどんな魔法を創ろうか……


 個人的な目標が増えた事で察知魔法が弱体化している事など忘れ、スタッツ国への到着が待ち遠しくなるナターシャだった。

 これが転生という事情はあるものの、可憐な7歳少女の思考回路なのだから末恐ろしい物である。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 順調に旅を続けている冒険者ギルドとナターシャ一行の馬車列。

 街道の周囲の草原が再び農地に変わり、それから暫くして農村っぽい宿屋街が見えてくる。

 あれが今日宿泊するサウド村らしい。


 ツギーノ村と違って少し小さく、大きな宿屋は無いが大きな倉庫は健在である。

 馬車は村の入口を通って村の広場に停車する。

 昨日と同じようにアーデルハイドさんとガレットさんが宿を取りに向かい、大きな倉庫が付属された宿屋へと一行は向かう。


 日はツギーノの時と比べて沈んでおらず、空もまだ赤く変わっていない。

 スマホを確認したが時刻は3時半。多少観光する時間はあるようで少し楽しみ。


 ガレットさんに続いて宿に入ると、宿の一階は案の定酒場。

 テーブル席と、部屋の中央には暖炉と丸底鍋。……しかし、宿の部屋割がツギーノとは違った。

 ナターシャ達とアーデルハイドさんは個室だが、冒険者達は大部屋で寝る事になる様子。

 大部屋かー、何言ってんだいつも通りだろー、と楽しく言い合ってる冒険者を見て微笑ましく感じる。


 大部屋は一階酒場の右にある梯子を登った場所。

 気になったので見に行ったが、沢山のベッドと床に固定された鍵付きチェストボックスがベッドの隣に沿え付けられている。

 対してナターシャ達の部屋は左の階段を上がった先の3部屋の内2部屋。

 一番左が男部屋で中央が女部屋。右の部屋は空室の様子。

 内装はツギーノとほぼ同じ。大分質素なイメージを受けるが、それでも上等な部屋だそう。

 個人的にはベッドが柔らかくて寝やすければそれで良いので特に気にする事は無い。


 ナターシャは部屋で休むガレットさんに許可を取り、軽く観光に出る事にする。

 クレフォリアちゃんは部屋でガレットさんとオセロをしたい様子。相当嵌まってるねクレフォリアちゃん。

 という事でここで一旦お別れ。


 一階に降りると同行している冒険者が飯を食べたり、宿屋の看板娘さんをナンパして……カレーズ……まぁ色々やっていた。

 宿屋の店主と冒険者の話し合いを盗み聞きすると、冬場は商人の商隊くらいしか団体客は来ないので驚いたもんだ、との事。

 夏場は逆にエルフォンス教皇国に向かう客が多くて大賑わいだそうだ。相当重要な街道みたいだね。


 ナターシャはツギ―ノでは出来なかった村の観光に期待し、胸を膨らませながら宿の外に出る。

 そして、当たり前のように後ろに付いて来ている斬鬼丸に話しかける。


「……斬鬼丸、護衛は任せたよ」


「御意」


 さ、旅の醍醐味の始まりだ。

 一体どんな感じなんだろうね。

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