抜け出せない
それは底なし沼のようだった。
趣味の世界は広い、そして、時間は有限だ。
金をつぎ込めば、いいものが手に入る。
それでも俺は納得しなかった。
ゲームの3Dモデリングをしていた俺は、それが仕事ということもあって、フィギュアの原型師もしていた。
原型師は趣味ではあったが、一応会社に話を通して、仕事の勉強ということで有償で少ししていた程度だ。
それがいつしか先生や師匠と呼ばれるようになって、副業が本業になり、本業が副業になっていく。
会社はそこで一つの決断をした。
つまり、俺に辞めるように勧告したということだ。
そこで俺は仕事を辞めた。
3Dモデリングは、これからの成長産業という見込みで動き、そして確かにその通りだった。
一つ、誤算があるとすれば、趣味が仕事になったという点だろう。
それがここから抜け出せなくなるということにもつながった。
他を知らないということは、それだけしか生きていく道がないということだ。
まさに今の俺がそうなっている。
これ以外に道を知らないからこそ、これ以外に生きることができない。
そういうこともあって、3Dモデリング、さらに3Dプリンターを買い、原型師としてさらなる成長をするしか、俺には道は残されていなかった。