クラスメートのあいつの殺傷能力が高いです
「里亜っ」
「了解。サンダーアロー」
呟くようにそう言うと、モンスターめがけて一直線に電撃が放たれた。モンスターはビクッと体を震わせて……それ以降動かなくなった。
「うわぁ……毎度思うけどさ、死に方グロくね?」
「まあ、モンスターだって生き物なんだし……仕方ないでしょ」
「つーか、里亜の特殊攻撃がエグいんだって!あのモンスターもほら、白目むいて口開いて舌も出てるし」
「感電してるんだから仕方ないんだって。りぴーとあふたーみー!モンスターも生き物!」
「も、モンスターも生き物……」
小声ながらも、私の言葉を繰り返してくれる誠。ちょっと前じゃあり得なかった光景かもしれない。
「誠の殺り方もだいぶヤバいからね?首元スパッと……初めて見たときは腰抜けたわ」
「そのまま俺に運ばれ、ベッドイン」
「そうそう、誠に運ばれて誠と……ってベッドインしてないわ」
「バレたか」
「そりゃバレるわ」
運ばれてしまったのは事実なので、反論のしようがない。それにしても、誠の殺り方はエグすぎるのだが。断面がものすごくキレイなことは認めよう。一撃でモンスターを殺してしまうほどの必殺能力があるのも認める。だけど、血が噴水のように出るのが視覚的にも精神的にも危ういのだ。怖い、血の噴水怖いよ。トラウマになってしまう人もいるはずだろう。自分でモンスターを倒すことにも慣れてきてしまっていたので、一回見てしまえばなんてことなかったけど。
「つーか、今レベルなんくらい?」
「あー……最低5あればいいって話だったっけ?」
「うん」
こっちに来てから、5日くらい。
1日に1個は確実にレベルが上がっているとは思うんだけど……。
ステータス、オープン。
『ステータスプレートを出します』
頭の中に声が響く。
空中に浮かんだ光る板のような物をつかむ。このプレートを見るのは、実は初めてだったりする。ていうか、こんな板でてくるのなんて知らない。ウサギめ、説明が足りないわ!
『赤崎 里亜 Lv.12
職業:魔法少女(G2)
体力:5
腕力:300
魔力:5200
知力:3000
耐性:500
魔耐:2600
運気:良
スキル:最果テノ魔女
「全属性適性」「全属性耐性」「混合魔法」「高速魔力回復」「魔力感知」「魔力操作」「無詠唱」「思考加速」』
……いろいろ突っ込みたい。
職業の魔法少女の横のG2って何?つーか、体力5て……まあ、わかるけどさ。全体的に良いのか悪いのかの判断もつかないし……。平均値とかないのかな?
「おっ、さすがだな。体力5って……」
「笑うな!そういう誠はどうなんだよ」
「お、俺?俺は良いんだよ」
「スティール」
「あ、ちょ……」
魔法で誠のステータスプレートを奪う。
どれどれ、私の体力をバカにした誠のステータスはどうなってんのかな?
『水神 誠 Lv.15
職業:剣聖見習い(G3)
体力:3000
腕力:5000
魔力:540
知力:1200
耐性:2100
魔耐:240
運気:災厄級に悪い
スキル:天性の剣聖
「付与攻撃」「斬撃」「衝撃耐性」「熱耐性」「魔力変換」「気配感知」「能力操作」「詠唱短縮」「運気+」』
「ふっ……ごめん、吹く。ギャハハハハ!」
「笑うんじゃねー!」
「スキル名がいかにもって名前だし、体力と腕力はさすがだなって思う。……でも、運気が『災厄級に悪い』ってどういうこと?まず、災厄級って何?あ、笑う要素無かった。笑いたいだけだったわ」
「意味わかんねーよ!」
「誠、突っ込みすぎて興奮しちゃダメだよ」
「お前のせいだわ!」
「きゃー、怖ーい」
「すんげー棒読み!」
こうやって誠と言い争ってるのが不思議。接点とか、同じ班のメンバーくらいだったのに。
「なんか、意外だな」
「ん、なにが?」
「誠ってもっと静かで冷静な人かと思ってたのにさ、気は短いし、騒がしいし」
「里亜だって、クラスではTHE女子って感じだったのに、か弱くねえし、喋りやすいし」
「それって褒めてる?褒めてるよね?」
「うるせー!男っぽいってことだよ!」
「照れるー」
「また棒読みかよ!」
てか、THE女子ってなんだよ。
そんなに女子女子してたかな?たしかに、教室ではあんまり男子と喋んなかったけど……。あれ、ていうか……。
「女子っぽいってなんだよー!」
「いきなり叫ぶんじゃねー!」
「誠だって、いっつも叫んでるじゃんか」
「お、ま、え、の、せ、いっ!」
「いちいち区切らなくても聞こえてますから」
まじで女子っぽいってなんだろう。
可愛ければ女子?生活態度がきっちりしてたら女子?持ち物が可愛ければ女子?腹黒ければ女子?……うーん、分からん。
「せーくん、女子っぽいってどーいうことですかー?」
そうたずねると、誠は顎に手を当てた。考える人みたいに。
「イメージだよ、俺の場合。赤崎里亜は天然で、運動音痴で、か弱くて、頭良くて、可愛くて、天使のようだって言われてたからな」
え。なにそれ。
天使のようなのは藍で、それに比べたら私なんて道端に落ちてる石ですけど?
「誰がそれ言ったんだよ?」
「俺もそう思うわ。多分、丹色辺りだとは思うがな」
「なんで?」
「一番言いそう」
「なるほど」
ウサギの話が本当なら、丹色は私の隣の席だし、こっちの世界に来てるよね?……しばき倒して、吐かせよう。
「呼んだぁ?」
「出たよ、クソウサギ」
「クソとは何だよー」
「てか、呼んでないし」
何もない場所から、自称神のウサギが出てきた。これも何かの魔法なのだろうか。ぜひ教えていただきたい。移動に便利そう。
「なんか、予定よりもレベルが上がってるみたいでびっくりしたよ。さすが、チートだね!」
「この世界の平均値がわからないからなんとも言えないよ……」
「普通は運が良ければ1週間に1つ、この世界で生まれたチートの子達は1日で1つが平均だよ!」
「へぇ……」
つまり、私は2.4倍、誠は3倍で成長してるってことか……。
まあ、走ったりしてないからな……。誠みたいに、身体動かしてないし……。レベル違うのは仕方ないと思いたい……。あー、なんか気になってきたじゃん!
「でも、一番すごいと思ったのはレベルが10を超えたのに、上級職に変化してないことなんだよ!普通はね、10を超えたあたりで自然に変わっちゃうんだ。成長が限界に近づいていくからさ……でも、まだG3とかなんだ……どんだけ成長するんだよ……」
わかんない単語が出てきたよ……。Gってなんだよ、ゴリラかよ。人間って進化するとゴリラに近づくのかな?生命の神秘だね。
「あ、Gっていうのはgradeの略で最小1、最大5なんだ。わかりやすくいうと、その職業の習得具合ってとこかな。G5になってしばらくすると、上級職になるよ」
「へえ……知らねーよ、てか、説明書に書けよ」
「相変わらず口悪いね!まこちゃん!」
「……そういえばさ、理由はだいたいわかるんだけど、そのまこちゃんって呼ぶのやめてくれね?俺、"せい"って名前なんだけど」
「誠って漢字、まこととも読めるからいいじゃん!せいくんより、まこちゃんの方が可愛いでしょ?ね?」
このウサギ、頭沸いてるんじゃないの?
おっと、誠の口の悪さが移っちゃったかな?口悪いとすぐ喧嘩になるから、直しておかないと……。
「……せいくんでお願いします」
「えー、まこちゃんがそこまで言うならせいくんにしてあげるよー」
「普通はそうだろ」
「うさぴょん、普通とか分かんないし」
「首の根搔いたろか」
「いやんっ、怖ーい」
見てるこっちがムカついてくるような顔で、体をクネクネさせているウサギ。どこまでも腹立たしいやつだ。
「そういえばさ、ウサギお前なんか用あったから出てきたんじゃないの?Gのこと説明しにきたんじゃないでしょ?」
「あー!そうだそうだ!Gとは違う用事で来たの!忘れるところだったー、危ない……里亜ちんありがと!あのね、一番近い街に入れるようなレベルになったでしょ?だから、街に行って欲しいの。住むところは、用意したからさ」
「まさか、また2人で一緒に生活するとかじゃないよね?」
「そのまさかでーす!2人一緒だよ!仲良いから良いじゃん、一緒でも」
「メ○ゾーマ」
ウサギを中心に炎の柱が立つ。
やっぱりこのウサギ……頭沸いてるとしか思えない!
「ちょっとちょっと!里亜ちんそんなに怒らないでよ!熱かったじゃん」
さすが神。ほぼ無傷である。
「里亜、落ち着けよ。家は一緒だけど、部屋は違うんだろ。たぶん」
「そういう問題じゃないわ!」
家族以外の男子と1つ屋根の下一緒にいること自体が苦痛なんだよ!
誠は何も感じないわけ?それとも、私が今まで極端に異性と接してこなかったせい?
「うん、そうだよー。里亜ちんも過剰反応しすぎなんだって」
「うるせー!」
「いやん、怖い」
語尾にハートがつきそうな勢いでウサギがいう。もう一回、メ○ゾーマ食らわせてやろっかな?
「とにかくね!そういうことだから!」
「あ、おい。その瞬間移動みたいなの教えろ」
「えー。しょうがないなー」
というわけで、瞬間移動を教えてもらいました。
街?家?誠?……知らんな。