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クラスメートのあいつと話し合います。

「は?MORI?てかあんたの名前なんだっけ?」

「水神誠!お前いい加減覚えろよ」

「いや、これ聞いたの二回目だし」

「お前教室でも散々聞いて来ただろうが!俺と今同じ班だろ?班員表に名前書くときに何回も聞いて来たんだよ!」

「は?何キレてんの?」

「キレてねーし!」

ていうか、私の通う中学校の近くに森なんてあったか?そもそも、あの市に森と呼べるような緑の集合体なんてあったっけ?森の中に入ったことなんて数える程もないわ。

じゃあここはどこなんだろう。なんでこいつと2人でいるのだろう。2人きりになるんだったら東雲くんが良かったわ。いじるの面白いから。

「ねえ、他の人は?たしか委員会決めしてたよね?あんたと唯川さんをくっつけたあとに確か頭が痛くなって……」

「ああ。俺も頭痛くなって気づいたらここにいた。俺と唯川をくっつけるって何?」

「え、知らないの?」

「知らねーよ」

これって本人に話して良い内容なのかな?知らないんだったら教えない方がいいかも……?

「ああ、あれか。唯川が俺のこと好きらしいな。だから委員会一緒にさせられたのか」

「知ってるんかい」

「あれは分かりやすすぎだろ」

「確かに」

って言っても、私は興味なかったから知らなかったんだけどね……。それを知った上でわざわざ同じ委員会に入ったということは、こいつも唯川さんに気があるのでは?

そしたら、教室に戻ったら2人の恋はもう応援しなくてもいいってことだ。やったね。

「ま、俺があいつに惚れるなんてないけどな」

「うっわ!クズかよ!」

「はーい、クズでーす」

唯川さん、男見る目ないわ。こいつのクズさはヤバイレベルだわ。

いや、それよりも今はこの状況だ。

太陽がだいぶ傾いている。今どこにいるかはわからないが、下手したら今日中に帰れないのかもしれないのだ。位置を把握しないと……。

「おい、お前。木に登ってここがどこか見てきて」

「なんで俺?……って、そうか。赤崎お前めちゃくちゃ有名だったな。運動おんちで」

「うん。ま、そのかわり頭はいいんだけど」

「嫌味かよ」

「うん、嫌味」

言いながらも、ものすごい勢いで木を登っていくあいつ。やべ、また名前忘れたわ。

すごいな。この木、7mくらいはあるぞ。枝の先は細いし、高いから怖いはずなのに……。あいつの運動神経がいいのか、それとも恐怖心がないただのバカなのか……。この場合は前者だと信じたい。ただのバカなら、丹色と同じってことだからな。

「おい、見てきたぞ。何考えてんだよ?」

「いや、何も考えてないから。それより、どうだった?」

「おう、周りには木しか見えなかった。ここから抜けるのは結構厳しいと思う」

「うん……木しか見えなかったっていうのは相当ヤバイと思う。学校から徒歩圏内ではないよね」

ますます分からなくなった。私とこいつという組み合わせもそうだし、周りに木しか見えないのだというのなら、車は使えないから運ぶのにだいぶ時間がかかるはずだし。

考える私の前に、ウサギがあらわれた。ウサギは、立ち止まってこちらを向いて

「へいよー」

と言った。

「ん?」

「どしたーん?里亜ちん。あんま驚かないからこっちがびっくりだわあ。ほら、まこちゃんの方は驚きすぎて尻もちついてるのに……やっぱ、頭のいい人は違うってことなの?」

「その呼び方やめろ、煮るぞ?」

「いやんっ、まこちゃん怖ーい」

ハートがつきそうな調子でウサギがいう。

今はウサギが喋ることより、早く帰ることを考えたいんだけど……。

「あ、帰る方法ってかここにいる理由ならこのうさぴょんが知ってますぜ」

「おい、お前」

「俺のこといってる?」

「うん。そのウサギ焼いていいからそのまま吐かせて」

「水神誠な。そんくらいなら楽勝だわ」

「え、ちょ、そんな事しなくてもうさぴょん喋るよ?ねえ、焼くって冗談だよね?ね?……うわ、ライター持ってる!最近の中学生怖ーい!」

ま、このライター本物じゃなくて偽物なんだけどね。しかも消しゴムだし。

見た目は普通のウサギなんだけどな。どうやって喋ってるんだろう?高性能ロボットとか?うん、それならありえる。

「喋るよ!ていうか冗談に見えなくて怖いからやめてよー。でもさ、喋る代わりに約束してくれない?」

「……できる範囲なら約束する」

スクワット50回とかだったら水神くんにこのウサギ仕留めてもらおう。なんかできそうだし。

「うさぴょんが喋ってる時にツッコミ入れないでね?悲しくてうさぴょん死んじゃうかもしれないから。特にまこちゃん、こらえてね」

「我慢くらいできるわ」

「うん、頑張って我慢して」

今はこのふざけたウサギの言うことでもいいから、多く情報を集めた方がいい。

「まずね、里亜ちんとまこちゃんがいるここ!ここはね、2人が元いた世界じゃないんだ。ほら、小説でよくあるやつだよ。異世界転移ってやつ。なんか普通より魔力保持量が多い魔導師がね、自分の力を試すために異世界から人を連れてこようって思いついたの。まあ、成功したっちゃしたんだけどさ、転移させた君たちの転移先をその魔導師が設定し忘れちゃったらしくて。みんなバラバラにこっちの世界に来たんだよね。まあ、転移させられた人数は少ないみたいなんだけど。2人の席の周りにいた人くらいかな。なんでうさぴょんが2人の前に来たかっていうと、転移させられた人の中で一番能力が高いからさ。それと、この森でうさぴょんがさっきまで昼寝してたから……。んで、2人にお願いしたいことがあるんだけど…… 転移させられた人を一箇所に集めて欲しいんだ。いくらうさぴょんといえど、何回も連続して世界をまたいだ転移魔法は使えないからね。魔力がなくなって消滅しちゃうかも。あ、ちなみに君たちをこっちに連れてきた魔導師は死んじゃったから」

「まず、聞きたいんだけどさお前何者なの?」

「ん?この森の神さまってところかな?」

「マジで?」

「うん、本当だよ。この姿、可愛いでしょ?この世界だと、白い動物は神の化けた姿なんだ。覚えておいた方が便利かもね」

白い動物は、神の化身ってことか。白い蛇とか、白いのが珍しい動物ならわかるかもしれないけどウサギが白いのは別に普通じゃない?

「ていうか、ここでは普通の動物の方が珍しくてね。魔物がほとんどなんだ」

「へえ……ごめん、あんま興味ないわ」

「ひどい!まこちゃんがひどいよ、里亜ちん!」

「うん、こいつクズだから」

「毒舌と言ってくれ」

いや、さっき自分でクズって言ってたじゃん。

「やってほしいことは分かったんだけどさ、この森から抜ける方法を教えてくれない?」

「あ、そっか!ごめん。アイテム色々渡すからさ、まずレベル上げしてくれない?」

「なんで?」

「ここから一番近い町に入るには、最低レベルが5なくちゃダメなんだ。だから……ね?」

いや、“ね”って言われても……。

レベル上げとか、ゲームの中でしかやったことないし。そもそも方法がわからないし。

「大丈夫だよ、ここら辺に出る魔物はとっても弱いから!それに、うさぴょんが今から渡すアイテムは神話級の武器もあるからね。一撃よ」

戦いとか……運動じゃん。私、終わったじゃん。50m走をしただけで10分動けなくなる私にどうやって戦えっていうわけ?

「里亜ちんは魔術師タイプだね。まこちゃんは剣士かな。ま、2人ともレベル5になる頃には上級職になってると思うけど」

魔術師なら、動かないで済むか……。

危なくなったら水神くんのことを盾にしよう。

「はい、アイテムとそれ入れるボックスね。指輪型になってて、念じればそのアイテムリストが頭の中に浮かんでくるし、頭の中でそのアイテムが出てくるように願えば出てくるから安心して?使い方簡単でしょ?」

念じるだけなら簡単だな。このウサギ親切……。

「あと、困った時のこの世界の説明書ね。うさぴょんお手製だよ」

世界の説明書って……ちょっと気になる。後で見とくか。

「ありがと」

「あげたアイテムの説明とかも書いてあるから、読んどいてね!じゃあ、うさぴょんはここら辺で失礼するよ。2人とも頑張ってね!」

そう言って、ウサギは煙のように消えた。

「消えちゃった……」

「そうだな」

水神くんと2人で顔を見合わせる。

これから知らない場所で、名前以外あまり知らないクラスメートと過ごさなければならないなんて……。少し頭が痛くなった。

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