クラスメートのあいつと森に飛ばされました。
クラスメートのあいつと森に飛ばされました。
「なんか亜子が水神のこと好きらしいよ」
休み時間、友達の藍と沙希がやってきて、そう言った。
「は、アス?だれそれ」
「唯川亜子!まったく……クラスメートの名前くらい覚えなよ……里亜は本当に、興味がないことは覚えられないよね」
「いや、仕方なくない?まだ中3始まってから2週間だよ?覚えてるほうがすごいんだって」
ていうか、唯川さんが水神くんのこと好きって私に言われても……。なにかしろってことなの?どっちとも仲良くないんだけど。
「里亜、亜子は過激な子だからうわべだけでも協力してあげたほうがいいと思うよ」
「いや、具体的になにするの?私たちに出来ることってほぼなくない?」
「いや、この後の授業で委員会決めるじゃん?その時に亜子が立候補するから投票して欲しいんだって。で、男子の方は水神にするってわけ」
「おけ、要するに唯川さんと水神くんに票を入れれば良いってことだね」
それくらいならできそうだよね……。
唯川さんは過激な子って言ってたから、敵にはならないほうが得だよね。
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「学級委員には、 黄元沙希さん、東雲純くんに決まりました。これから先はこの2人に仕切ってもらいます」
「よろしくお願いします。精一杯頑張れ、イケメン東雲」
「俺?俺が頑張るの?……えっと、次に美化委員、体育委員、給食委員、生活委員、図書委員、放送委員、新聞委員の順番で決めます」
東雲くんの声に合わせて、沙希が黒板に委員会名を書いていく。書くスピードは速いのに、字はものすごく綺麗だ。人をまとめる能力は東雲くんにあるし、沙希は書記能力で選ばれたようなものなのだろう。
委員会には必ず入らなくてはならないわけではないから、私は今まで委員会に所属してこなかった。今回も委員会に入ることはないだろう。
「美化委員に立候補する人はいますか?」
「はいはい!あたし立候補するっ!」
今元気に手を挙げた彼女が、唯川さんだ。うん、めちゃくちゃ校則破ってる。膝より明らかに10センチ以上高いスカート、肩より長い髪は茶色に染まっていて、ワイシャツのボタンは3個くらい空いている。……なるほど、これは過激な子だ。
「女子は唯川さんの他にいないから、信任で決めます。男子は立候補者がいないようなので、推薦にしたいと思います」
唯川さんの恋、クラス全員で応援してるのかな?美化委員っていったら、委員会の中で一番仕事がなくていつも人気なのに……。
「俺、誠がいいと思う」
そう言ったのは、浅葱恭介。なんだか軽薄そうだが、偏差値は70越えというものすごいギャップを持つ。
「は?俺?……まあ、いいんだけどさ」
不満なのかなんなのかわからない返事をしたのが水神誠。
「水神のほかに推薦される人もいないよね?……じゃあ、この2人でいい人は拍手してください」
え、多数決じゃなかったじゃん。
とりあえず手を叩いておく。
「なあなあ、赤崎赤崎」
「……なに?」
隣の席の丹色朝日が声をかけてきた。こいつはものすごくかまってちゃんで、放っておくとずっとしゃべっている。
「俺さ、お前のこと体育委員に推薦してもいい?」
「……丹色お前さ、いつか私に刺されることを覚悟しておいたほうがいいと思うよ?」
「怖!お前ほんと多重人格だよな。安心しろよ、冗談だから」
丹色は私が体育が苦手なことを知って、こんなことを言っているのだからタチが悪い。通り魔に刺されるとか酷い目にあえばいいと思う。
「言っていい冗談と言っちゃいけない冗談があるんだよ?」
「へーい、ごめんね」
その時だった。急に頭が割れるように痛み始めたのは。
「赤崎?どしたん?」
「おい、大丈夫かよ水神?」
水神くんも体調悪くなってるのかな……?
風邪には気をつけてたはずなのに……。
限界を感じ、机に突っ伏した。
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肩を思いっきり揺すられて、目が覚めた。
「おい、起きろよ」
「てめー誰だよ」
「おめーこそ誰だよ!」
「私は赤崎里亜」
「俺は水神誠」
「ここはどこ?」
「……森?」
気がついたら、クラスメートと森の中にいた。