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世界の平和より自分の平和  作者: 三ツ葉きあ
第一章『鳥人間と愉快な――』
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第二話『召集』―2




 臣弥、深叉冴、そして『ヒデ』こと秀貴は《自化会》を作ったメンバーだ。

 付き合いは二十年程になる。

 元々は高校が同じだというところから始まった、腐れ縁だ。


 会長は臣弥。

 組織の基盤を作ったのが、彼だ。


 臣弥と深叉冴は同級生である。


 深叉冴は数年前、三十二歳という若さで他界している。

 生きていた頃は今とは全く違う姿で、茶色いストレートの髪に、茶色い瞳だった。

 おまけに童顔で身長も低く、女物の服を着ているレディース男子だったとか……どうとか。


 そんな彼は、翔の父親だ。


 翔の許嫁が悪魔召喚術を使えた事で器を得て、現世に戻ってきた。

 但し、身体は人間ではない。

 あくまで“悪魔”に分類される。

 翔に瓜二つなのは、許嫁の趣味だ。


 翔と違う点は髪色と声くらいのものなのだが、表情豊かな深叉冴は、表情の乏しい翔とは似ても似つかない。


 因みに、深叉冴の姿は普通の人間にも見える。

 空を飛んだり空間転移も出来る、便利体質だ。


 そしてこの場に居ない秀貴。

 彼は臣弥と深叉冴のひとつ年上だ。

 呪禁師を生業としている。


 拓人の父親。


 かなり厄介な体質をしていて、あまり人の多いところに近付きたがらない。

 殆どを国外で過ごしている。

 放浪癖があり、仕事のない時はふらりと一人で何処かへ出掛けてしまう。




「あぁ。そうだ、ミサ。今週末は、久し振りに会議を開こうと思うんですよ」


 臣弥の言葉に、深叉冴が首を傾げた。


「だからどうした。儂には関係無かろう?」

「残念ながら、関係あるんですよ。ほら、最近物騒ですから。ね?」


 深叉冴が、ここへ来て初めて神妙な顔をした。

 が、一瞬で表情を解く。

 机から飛び降り、やれやれと手を振った。


「そういう事は早く言え。儂はヒデを探しに行く。早い方が良いのだろう?」


 臣弥は返事の代わりに満面の笑みを作った。

 わざとらしいその顔に、深叉冴は大きな溜め息を吐いて、その場から消えた。

 誰も居なくなった机の上に向かって、臣弥は手を振って見送った。


「会長、今回の件……どう見ます?」


 今まで傍観していた滝沢が、話題を切り出した。

 臣弥は卓上に肘を突き、両手を組んで苦笑う。


「《S級》の子が二人殺された件ですか? 近江くんと山城くん。良い子たちだったんですけどねぇ」


「斬り口を見ましたが、相手が相手なだけに厄介ですよ。やはり、会長は一人で出歩かない方が宜しいかと」


 一息吐き、臣弥がパタパタと手を振る。


「自分の身くらい、自分で護れますよ」


 滝沢の「何もない所で転ぶ人が……」という小さな小さな呟きは、臣弥の耳には届いていない。


 臣弥は立ち上がり、伸びをした。

 机の上に散らばっている食いカスをごみ箱へ払い落すと、椅子を机の下へ滑り込ませる。


「さぁ、私は《SS級》の子たちの所へいきますから。滝沢は《A級》と《S級》をお願いしますね」


「あ、はい。お気を付けて。何かあったら、すぐに連絡を下さい。絶対ですよ」

「ふふ。分かりました。滝沢も気を付けて」


 言い交し、二人揃って部屋を出た。




◇◆◇◆




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