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世界の平和より自分の平和  作者: 三ツ葉きあ
第四章『味方の中の』
138/280

第三十一話『青の四天王』―5




◆◇◆◇




 深叉冴(みさご)が現れたのは、鈴音と別れてすぐだった。


 太陽が世界をオレンジ色に染め、ガラス窓がサンストーンのように輝いている。そんな輝きを眺めていたところ、唐突に出現したのだ。自分の婚約者と同じ顔をした、黒装束の少年。着物の前合わせは、左が上になっている。


(あるじ)殿! 怪我はないか!?」

「怪我?」


 珍しく慌てた様子の深叉冴に、(ひかる)は少しばかり呆気にとられた。


 話を聞けば、光の通う山相学園に、合成生物(キメラ)が押し寄せたのだと言う。深叉冴は光の気配を辿って直接会いに来たらしいが、光の兄である(てる)は学校へ向かったのだとか。深叉冴が光の居場所を伝える前に疾風丸(はやてまる)に跨がり、飛び出して行ったらしい。


 他の《自化会》の会員が多く通う活麗園には、拓人が向かったらしい。


(かける)は? 学校には、まだ(けい)君と(かい)君が残っているはずよ」


 界が補習を受けている事は、翔も知っているだろう。友人の危機ともなれば、動きそうなものだ。だが、彼の名前は出てきていない。


「翔は怪我をして療養中じゃよ」

「怪我!?」


 学校に居た時は無傷だった。帰り道で何かあったのか、あの家庭教師に何かされたのか、はたまた……。


「どういった経緯かよく分からぬが、自分で自分の腕をへし折ったらしいぞ」

「や、やっぱり……」

挿絵(By みてみん)


 わけがわからない。いや、わけがわからない事をしでかすのが、翔だ。自分で自分の腕を折る? 有り得る。大いに有り得る。だからこそ、光も思わず『やっぱり』と口から出てしまった。


 光が言葉をなくしていると、深叉冴が豪快に笑い飛ばす。


「はっはっは! 一時間は安静にという事なので今は家に()るが、すぐに動けるはずじゃ!」


 自然治癒力の高い翔が、一時間安静にしなければならない状態というのは気になるが……。光は取り敢えず、胸を撫で下ろした。

 だが、翔の事以外は不穏なままだ。


「九州に居る筈の合成生物(キメラ)が何故神奈川(ここ)に現れたのかしら」


 深叉冴は、それなのだが、と僅かに顔を曇らせる。


「詳しい事は、儂は聞いておらぬのだが……。拓人が言うには、《自化会》に内通者が居るらしくてな」


 光は少し考える素振りは見せたが、すんなりと事を受け止めた。そして以前、嵐山が、夕方は養子である寿途(としみち)の迎えに出ている事が多いと耳にした旨を思い出す。


「そうなの……。じゃあ、深叉冴さんはその事を嵐山さんに伝えて」

「主殿はどうするんだ?」

「アタシは《自化会》の本部へ行くわ。誰に伝えればいいかしら?」


 深叉冴は腕を組んで、ううん、と唸る。


「洋介か千晶か祝辺りなら……。洋介は一応、会員の中では一番の古株でな」


 洋介の名前を聞いてあまりいい顔をしなかったが、部外者の光には他にあてもないので仕方がない。光はそのまま、《自化会》の本部へ行く事にした。





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