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世界の平和より自分の平和  作者: 三ツ葉きあ
第三章『敵と味方』
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第二十七話『正義のヒーロー』―1




 ミコトは、四天王の中で一番の古株だ。マヒルともイツキとも、付き合いが長い。四天王のリーダー的存在でもある。

 そんな彼女に“クビ”が言い渡され、その場に居る全員――イツキと尚巳以外――に戦慄が走った。


 一番慌てているのは、《天神と虎》の団長であるマヒルだ。棒付きの大きな飴をブンブンと振り回しながら、何でだよ!? とイツキに詰め寄った。


「マヒル、落ち着いて。ミコトには、マヒルの側近にあたってもらうから」


 ぱちくり。そんな音が聞こえそうな程の大きな瞬きをして、マヒルはイツキとミコトを交互に見た。


「じゃあ、イツキはどうするんだ?」

「僕は、《自化会》の件が終わるまで単独で動きたいんだ。相手は大きな組織だからね。だからこそ、四天王で一番強いミコトに、マヒルの近くに居てもらいたいんだ」


 分かってもらえるかな? とマヒルを見れば、マヒルは、しゃーねーな、と飴を口へ突っ込んだ。


 ふたつ返事で『OK』を出したマヒルに、尚巳は「いや、あっさり許しすぎだろ」と脳内ツッコミを展開したが、マヒルの、イツキに対する信頼の表れだと思うと納得し、無言で突っ立っていた。


 イツキに指名されたミコトはと言うと、イツキ様からのお願いじゃ仕方ないねー、とマヒルと似たような反応だ。


 そんなミコトだが、ところでさぁ、と派手な爪を尚巳へ向けた。


「イツキ様は尚巳(そいつ)の事をえらく気に入ってるみたいだけど、そんなに強いの?」


 いや、おれそんな強くないですよ。という言葉を尚巳が言いこらえていると、イツキは朗らかな笑みを湛えたまま、尚巳の背に手を当てて言った。


「彼、《自化会》出身だから、色々と協力して貰おうと思っているんだ」


 ザワッ――と、またしても場の空気がどよめいた。


「いや、敵ちね」


 赤いアキトのド直球なツッコミ。


「大丈夫だよ。彼は《自化会》から追い出された人だから」


 ね? と話を振られ、尚巳が初めてまともに口を開いた。


「まぁ、追い出されたっていうか、元相方に殺され掛けたから逃げたっていうか……」

「え、《自化会》ヤバくなーい? 普通、相方殺そうとするぅ?」


 ミコトが悲痛な声を上げている中、尚巳は、団員射殺する方がヤベェと思うけどな、と胸中で呟いた。


「でも、そいつが本当の事を言ってる証拠がねーじゃんさぁ! 嘘ついてるかもしんねーだろ?」


 黄色のゴロウが尚巳を指差して言うと、新しい声が加わった。


「大丈夫だよ。そいつは嘘ついてねぇってさ」


 会議室の入り口に立っているのは、角の生えた豚を連れている、ユウヤだ。角豚(つのぶた)は小型犬ほどの大きさで、ハーネスを装着している。


「あ、ユウー! やっほー! キメラ大量生産の計画はどうなんだ?」


 教卓の上で脚をパタパタと動かしながら、マヒルはユウヤに手を振った。


「ねーちゃん、聞いてくれよ! 俺、マジ天才かも!」


 得意気に、角豚を掲げて見せるユウヤ。角豚は鼻をひくつかせつつ、ブヒッと鳴らしている。


 尚巳は、あの鼻のしずる感はなかなか可愛いな、と眺めていた。


「ほら、肉人間とカブトムシを合成したら、こいつが生まれただろ? こいつから、元になった人間を摘出する事に成功したんだ!」

「おぉっ! よく分かんねーけど、スッゲーな! さっすが、私の可愛い弟だ! 頭を撫でてやろう!」

「うぇーい! ねーちゃん、サンキュー!」


 嬉々として頭を差し出すユウヤと、その頭をワシワシ撫でるマヒル。大型犬が飼い主に褒められているようにも、見えなくはない。


「つまり、射殺し損ねてしまった彼がまだ居るっていう事かい?」


 イツキの質問に、ユウヤは髪型を元に戻しながら、それがさぁ、と明後日を見やる。


「人間と豚を合成して、んで失敗して、あの肉人間が出来たんだけどさ。材料を分解したらさ、人間部分だけ消滅しちまった!」


 つまり死んだんだな。と尚巳は心中で十字を切った。


「ところでユウ君、何でこいつが嘘をついてないって分かるわけ?」


 ユウヤの言う“分解”だの“合成”だのについては、聞いても分からないので無視し、ミコトは再び、派手な指先を尚巳へ向けた。


「ミコトねーちゃん、よくぞ聞いてくれました! 合成したり分解したりってこねくり回してたら、特殊能力を備えた生き物が生まれたんだ。ただ、原理はよく分かんねぇ!」


 けど、体内組織が著しく変動したからかな! と持論を語るユウヤだが、興味を示す者、理解する者は少ない。ミコトに関しては「何で嘘をついてないって分かるわけ?」と質問を繰り返している。


 ユウヤは、そうそう、と角豚を教卓の上へ乗せた。角豚はマヒルの太腿(ふともも)に顎を下ろし、目を細めている。


「こいつ、相手が嘘をつくと角が光るんだ!」

「へぇ。それはすごいね」


 興味を示したイツキに、ユウヤの機嫌は上々だ。ああだ、こうだと、イツキに色々説明をしている。


 一方で尚巳は、オーラを可視化出来るイツキなら角豚の能力にも気付いていただろうに……、と思った。ただ、イツキは自らの能力を進んで披露したがらない性格なのかと察し、無言を貫いている。


(見た感じ“ユウヤ君”は、“イツキ様”に読心能力があることも知らなさそうだしな……)


「ところで、ユウが会議中に来るなんて珍しいね」


 ユウヤの説明を聞きながらイツキが、どうかしたの? とユウヤの顔を伺った。

 するとユウヤは、思い出した! と言って携帯電話を取り出した。メール画面を、イツキに突き出す。


「《自化会》の協力者から、メールが届いたんだ!」


 ユウヤの言葉に、各々反応を示す。


 ゴロウはオーバーオールのポケットから棒状の駄菓子を取り出し、また《自化会》かよ、とかじりついた。


 

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