【詩】ぼうとしたあわいに
すもものはながまっしろに、
そらをうめつくしている。
もうすこしよこで、
さくらはまだひかえめに、
ほころんだつぼみを
かぜにゆらしている。
まだまだうすあおいそらに
きぬぎれのようなくもが、
たなびいている。
こうばいはまだちっていなくて、
ふしくれたえだのうえで、
かがやきをみたしている。
わらいあうしょうじょたちの、
きらめいているじだいが、
みちばたでしょうひされている。
もっともそれは
ぜいたくなじかんであって、
くりかえしながら、
ざんこくにおわっていくもの。
あたためられた
じめんからたちのぼってくる、
あるいは、
きまぐれなはるかぜのはこんでくる、
はるのかおり。
いまをさかりにいのちの
きょうらんをさそうかおりに、
なにやらつかれてしまった。
けれど、
それはなにげないいしのかおに、
わすれがちなちいさなおどうに、
ふりむかれることのないみずべに、
おだやかないろをうかべている。
そして、
そのいろは、
わたしたちにもおよんでいる。
きずをおもんばかり、
するどさをおさめて、
たりなかったことばを、
もういちどおもいかえすきせつでもある。
きえゆくにじのような、
いえなかったことばをおもいだして。
つきささったままのいたみを、
ぬいてそっとさわって。
かいそうのなかで、
あなたがとけだしていく、
ぼうとするあわいをみつめて。




