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ep2【『死神~Dete~』】

やっと仕上がりました。


意外と一次のわりに好評価してくださりありがとうございます。



それなのに、更新が遅くなってしまった……申し訳ない。


「う~~……ちっくしょう、情けねぇ…」


波多は半泣きで大学の中庭を歩く。なんて、日だ……全く…同級生の後輩には馬鹿にされ、友はリア充してるし…強がりはしたものの殴られた跡が地味に痛む。惨めな気分になりつつあるが、これではいけないと虚ろな勢いで胸を張る。人間、胸を張って生きねば……


そんな時………


「ん?」





「君、可愛いねえ?名前、なんていうの?ねえ?」


「…」



(うわあ…ナンパかよ。こんな人目につくところで堂々と……)


目についたのはワカメ~な髪型をした美少年が赤いフードの少女を口説いていた。確か彼は『石園(いその) 海奏(かいそう)』…少女は顔がわからないが、黒髪でセミロングより短いくらい………雰囲気から知らない娘だ。海奏に言い寄られ、黙ってはいるがとても迷惑そうである。


「転入生でしょ?噂は聴いてる………どうだい、僕と一緒にお茶でも?」


「…」


(あ~………もう、みてらんねぇ!)


それでも、しつこい海奏に波多はたまらず歩を踏み出し、『おい!』と割って入った。すると、海奏は眉を寄らせて如何にもという嫌な顔をした。


「あ?なんだよ、波多…?」


「…嫌がってんじゃねぇか!脈なしなのなんか、見りゃぁわかるだろ?」


「は?なんでお前にそんなこと決められないといけないわけ?何ぃ、僻み?それとも、彼女を横取りするつもり?まあ…君みたいな凡人顔がそんなこと出来るわけがないか………」


「なんっ!?」


「悔しいか?残念ながらそれが君と僕の差。言うまでもないだろ?」


このクソワカメッ!!!? この世に本当にいるとは思ってなかったが、イケメンなら何しても許されるって奴か!?そんなトップアイドルでもないくせによくも………と怒りで沸騰しそうになった波多。自分だって、魅力的な部分が少ないのは自覚している…だが、こう鼻にかけられると頭にくる!


「このッ!!顔だけ野郎がよくも………!」


「おい、波多!!あ、すみません!」


つい、手をだそうとした波多だったが偶然にも通りかかった克彦があわてて仲裁に入る。やあやあと笑いながら海奏に対し、少女と波多を庇うように立つ。






「やあ、海奏。これくらいにしておいてくれ。コイツらは俺の連れだから………待ち合わせしてたんだ。ニッシシ………」


「ちっ………乾原克彦、だったな。覚えておく…!」


体躯を上回る彼に海奏は捨て台詞を吐くとプイッと去っていく…。ホッとして溜め息をつく波多はこの時、はじめて少女の顔をまじまじと見た。


(やべえ、かなり可愛いじゃん!?)


赤いフードに『黒い』セミロング程度の髪…肌は雪のように白く、瞳は吸い込まれそうな黒。まるで、精錬された技で磨きあげられた人形のようだ…。

ほっ………と呆けていた波多だが…


「…(余計なことを………)」


「…へ?」


微かな…やっと、耳に入りそうな声がしたと同時に彼女は何処かへ走っていってしまった。刹那の出来事に、目を見開いたままの波多にククッと笑いながら…


「フラれたな?」


「…なっ!?」


からかうのは克彦。


「う、うううるせーし!別に下心とかそーゆーの…別にあったわけじゃないしぃ!?ま、ちょっと可愛いかったけどさぁ!?」


「はい、はい。波多…お前、昔から地雷を歩く奴だな?」


呆れたと笑いながら視線は去っていった少女の跡に焦点が結ばれる。赤いフード…ああ、彼女かと彼は脳ミソから記憶を引っ張りだした。


影宮(かげみや) 勇波(いさな)…か。」


「かげみや?」


「…知らないのか?ま、お前はそーゆーのも疎いからなぁ。影宮 勇波…最近、転入生してきた女子さ。中々の美人だが、あんまり周りと交遊には積極的じゃねえみたいらしい。ま、ジャー子の受け売りだが…」


「へー…」


「惚れたか?」


「…いい加減にしろよ。」


勇波…かわった名前だと思いつつ、からかう親友を睨む波多。それにしても、まるで童話の赤ずきんのようでやけに印象に残る。

この時、波多はまだ知る由もない…彼女が自分の運命と真価に大きく関わっていくことを………








★ ☆ ★ ☆




それから約1時間くらい経ったろうか……。勇波はとある病院の一室にいた。病室であるはずのこの場所だが、個室にして薄暗く…あまりにも静か……。真ん中には包帯をグルグルと巻かれたミイラ男のような患者が血走る光を失った眼で勇波を見ていた。見ているだけで、寝たきりなので一見すると死体…そして、この部屋が霊安室に感じられるのだ…。

そんな彼に視線をおくりながら勇波は花瓶に1輪の白い花を飾る……


「……ォ…ォお…」


「…わかってる。貴方の仇は必ずとる。だから、もう少し待って……」


「…ぉ!…ォ!!」


「悔しい?何で自分がこんな目にあわないといけないのか……あまりにも不条理過ぎて声もまともに出ない?でも、私に出来るのは貴方が受けて然るべきだった幸せを奪った卑怯者に『罰』を与えることだけ。それだけ……」


「…ォ!…ォォ!!」


ミイラ男は突然、呻き声をあげだしたが動くことは出来ない。だが、彼女は彼の意思をすでに察していた…。ならば、やることは決まっている。


「…じゃあね。私も貴方も知らない者同士だけど……。」


今宵も仕事……病室の戸をガララと開け、去っていく勇波。彼は無言でそれを見送ると静かに目を閉じた。






★ ☆ ★ ☆







翌日……





「あれぇ?カッちゃんの奴、休みか?」


大学の一通りの講義が終わっても、姿をみせない克彦に波多は首を傾げていた。健康も取り柄で、講義もろくにさぼったこともない彼が自分に何も連絡がないとは今までになかったのだが……


「せ、先輩!」


「ん?雪子……どうした?」


そこへ、あわてて雪子が駆け寄ってきた。自分を『先輩』と呼ぶ時は必ず何かあると波多は察している。現に汗を流して息をきらす様は火急の用と見た。


「ぜぇ……ぜぇ……」


「お、おい……どうした?」


「…か、克彦先輩が……!」


「!?…カッちゃんがどうした!?」


「……………さっき、交通事故で…車に跳ねられたと!!」


「!」



バカな…あの克彦が?戸惑いながらも、混乱する頭を制御してまずは状態を確認せねばと雪子に問う。


「…ゆ、雪子。病院はどこだ?」


「……め、芽吹第一病院だそうです。」


「わかった。なら、急ぐぞ!」


芽吹第一病院…あそこなら、タクシーを掴まえればすぐの距離だ。早速、雪子と共に校舎を飛び出した波多。親しき友の危機……黙ってはいられない。






……その様子を物影から不審な笑みで海奏が見ていた。










★ ☆ ★ ☆





芽吹第一病院…


無機質な集中治療室の前にて克彦の母親らしき中年のおっとりした雰囲気の女性と急いで駆けつけてきた波多と雪子の姿があった。克彦の母親は波多と雪子を視界に入れた途端、あっ!と立ち上がる。


「おばさん!カッちゃんは!?」


「波多くん…雪子ちゃん……来てくれたのねぇ。ごめんなさい、私もよくはわからないの。突然、電話が病院からかかってきて事故だって……。まさか、あの子に限って……」


「おば様、大丈夫です。落ち着いてください。」


ひどく動揺していたようなのでとにかく、必死で雪子がなだめる。流石に我が子が集中治療室に入るような怪我をしては生きた心地がしないだろう。まずは落ち着かせようと波多は『飲み物を買ってきます。』と告げて、その場を一旦離れる。


(カッちゃん、どうしたんだよ?らしくねぇ……らしくねぇぞ。)





そのすれ違いで…


…あの謎の赤いフードの少女が何者かに端末から電話をかけていた。


「羽倉…また、犠牲者が出た。ああ、今運ばれた奴を見たがあれは間違いなく『盗られた』痕があった。これ以上は流石に見過ごせない……今夜、奴を倒す。異論は認めない。良いな?」


「…?」


一瞬、奇妙さを覚えた波多だったが、今はそれどころではない。

自動販売機のコーナーを目指すための足音がコツコツと響く……






☆ ★ ☆ ★







あれから暫く待ってみたが、結局…克彦は集中治療室から出てくることはなかった。できることならまだいたかった波多と雪子だったが、おばさんにもう帰ったほうが良いと言われて病院を追い出されてしまった。

確かに病院を出てみれば空は真っ暗で街灯に灯りが灯り、夜道を照らす。


「すっかり、暗くなっちまったな。ああいう場所にいるとつい、時間感覚がなくなっちまう。」


「…」


「雪子、大丈夫か?お前も相当、まいってんだろ?」


薄明かるい中、雪子の表情があまり浮かばないのも感じられる。それは、そうだ…好意を持った異性が不幸な事故で怪我を負ったとなれば普通でいられるわけがない。


「…大丈夫です。部のマネージャーとして、これからのことを考えないといけないと思いまして……」


「ああ、そうか……にしても、さっきから速報のひとつも入ってこねぇな。」




彼女は克彦の所属する陸上部のマネージャーなのだ…今後のことも苦しいが考えていかなければならない。波多も納得しながら、端末のネット画面を開くが克彦の事故の件のニュースが一向に出ることが未だ無い。検索ワードに自分たちが住む『芽吹市』と『交通事故』と打ち込んでも今日の記事は全く引っ掛からないし、TVアプリを開いても地元の局ですら『本日は平和でした…』という有り様だ。いい加減、時間も経ってるし奇妙なものだが……


「まさか、ですよね………あの克彦先輩が…」


「ああ。俺も正直、まだ現実を疑ってるよ。長い付き合いだけど、人間さぁ…誰しも自分に起きるか身近に起きないとこういう不幸が近くに転がってるってわかりゃしないんだ。」


2人とも、あまりにも信じがたいが…非情にも現実。苛立ちと沈む気持ちが入り雑じり、やり場のない感情がこみあげてくる…。神様がいて、運命を決めているとしたら…これから華々しく活躍できるはずの未来を暗くするなんて残酷じゃないか。怒りにも近い、胸の鼓動…ぶつけられるものならぶつけたいものだが…


「わかってます。わかっているつもりです。八つ当たりするより私にはやることがありますから……。そうしないと、克彦先輩も怒るでしょうから。」


また、ぶつけられる宛てがあったとしても解決の手段にはならないことくらい理解している。反面、どうしても人間は理屈で全てを片付けられない故に苦しむのだ。特に雪子はこのあとに背負うものがある。陸上部のマネージャーとして、想いを寄せた人が傷ついたその不安……


「そうだな。ま、1人で背負いこみすぎるなよ?相談くらいならのってやれるし、俺も頼っても良いぜ?まあ……宛てになりそうな奴はもっといそうだけど…」


「フフ……ありがとうございます。」


ならば、少しでも共有できたら軽くなるだろう。人とは元々、そんな生き物だ。押し出したような笑みを浮かべながらふける夜の道を進む2人………その時…








ーービュッ!!!



「「!」」



『ナニカ』が……空を切った。もっと正確に表現すると波多と雪子の間を何者かが後ろからすり抜け駆けていったのだ…。風のように滑らかに…それよりも乱暴に……


「驚いた?」


例の何者はクスッと笑いながら振り向いて素顔を見せる。あっ…と思った瞬間には波多の脳裏に顔と名前が一致していた。


「海奏!なんで、テメェがここに!?」


「君には関係ないよ、凡人。」


「あ?」


海奏……あの憎たらしいワカメ髪、会ったその日はまず忘れまい。ただ、何か先に会った時に比べて彼は奇妙だった。具体的に形になっているようでなっていなうような…不明確であっても確実に視覚をはじめとした器官が訴えかけてくる。


(先輩……)


(ああ、わかる。よくわからねえけど…コイツおかしいぜ。)


「何話してんの?ま、用があるのは陸上部マネージャーの彼女だけど?」


現れ方からして奇妙だった彼…目的は雪子だと波多を押し退けると壁があったら壁ドンが出来そうなくらい近距離まで近づき口を開く。


「雪子ちゃんだよね?ねえ、さっき知ったんだけどさぁ?乾原の奴、事故ったんだって?それなら、大変だよね~陸上部?」


「…な……だから何ですか?貴方には関係ないでしょう?」


「いやいや、ところがどっこい…あったりしてぇ?今の走り、見たでしょ?だ・か・ら、克彦のかわりに僕が陸上部に入ってあげるよ。」


「「は?」」


何を言い出すかと思ったら、陸上部に入るだと世迷い言にも程がある。コイツに、スポーツ系のセンスなどあるはず……


(いや……)


じゃあ、なんだあの速さは…?



「能ある鷹は爪を隠すって奴…?ほらぁ、正直言うと面倒くさいとかもあったけど……場合が場合に…」


爪?コイツに、昨日は陸上部の素振りも風格も何も無かった。克彦に圧されて尻尾を巻いてナンパを諦めるような奴なのに……


「…でさ、条件としてだけど僕の彼女になれよ。」


「……お断りします!」


「……おやおや、愛しの彼は裏切れないって?エライねぇ………」


笑顔だけど、異質で圧迫感が迫ってくる。なんだ?何か人間味じゃない『何か』を感じる…。


その時、波多は偶然にもあることが気がついた。






海奏の足元……汚れと擦り傷だらけの赤いスポーツ靴。陸上部の所属している者や経験者にはさして珍しい品ではないが、問題は見えてしまった文字。


「海奏……テメェ、確か名字は石園…だったな?」


「…なんだ、まだいたのか波多?ああ、そうだけど?」


「なら、イニシャルは『I・K』か『K・I』になるよな?間違っても…カッちゃんと同じ……」










「その靴に書いてある『K・K 』ってことはありえないよなぁ!」










「!」




二文字のアルファベット…イニシャル。姓と名、両方の頭文字を示す文字。だが、海奏とは明らかに違う文字を書かれた靴。問題はこれだけじゃない……


「雪子、コイツの靴…カッちゃんにお前があげた奴と似てねえか!?」


「え……あ、はい。メーカーは同じ物です。」


メーカーも同じで海奏とは違うイニシャル…加えて克彦の事故の件はまだ何処のメディアも報道していない。彼の母親が連絡したにしてもならば、病院で行き合わない…ましつや、帰路であるこの道から病院に寄ったにせよ追い抜いてくるとは考えられない。


「海奏…なんでお前がカッちゃんの靴もって…まだ何処も報道してない事故のこと知ってんだよ!答えろ!!」


「…」


海奏は黙る……。答えられず、行き詰まったといったわけではなく…まるで、波多に煩い蝿かのような視線を向けるかのように……


「あー…お前……」



ふと、彼が口をまた開けたと思った瞬間にはフッと波多の視界から消え……










「うざいよ?」




ドスッ



「…っがは!?」


気がついた時には赤いスポーツ靴をはいた足が波多の腹部を一撃していた。

弾丸のような速さ、バットで殴られたような激痛。プロのボクサーでも呻き声を出しそうな蹴りをまともに受けたただの一般人である波多はすぐに意識が混濁し、地面に倒れ伏す。


「い、いや……誰か助けてぇ!」


明らかな異常な空気に雪子はすぐに逃げ出した。悲鳴をあげて去る彼女を見据えながら対する海奏はふぅ…と息をつくと……



ーービュッ!!


「何処にいくの雪子ちゃん?」


「ひっ!?」


あの唐突に現れた時と同じく、風のように雪子を追い抜いて回り込んでみせた。


「ひっどいなぁ~?これじゃぁ僕が不審者みたいじゃないか?こんなにも優しく接してあげてるのに、あんまりじゃないかなぁ?」


不審者?そんな生易しいもので済むものか。怯える雪子にグイグイと迫る海奏の瞳には一種の狂気が光った…。


「俺はアイツなんかより何倍もかっこよくて、モテて、あんな筋肉野郎より絶ッッッ対ッ!!に良い人間だ。今のアイツは唯一の長所も失い、その『才能』は僕は持っている!好きにならない理由は無いだろッ!!」




やがて、徐々に脚部を中心として筋肉質に肥大化していく海奏。どんどん消えていく人間らしさに雪子は恐怖を覚える。


「本当にアイツ、イラッときたからさぁ、俺がアイツの『才能《SKILL》』を奪ってやったんだ。おかげで奴は今や『無能』さ!味が無くなったガム同然の生きてるだけのただのゴミクズ!」


「あ……ぁ……」


「逃げろ、雪子!」


まずい、何かはわからないがとにかく逃げなくてはならないのは間違いない。叫ぶ波多だが、雪子は足がすくんで動けない。


「ああ、流石にゴミは失礼か?んじゃ、絞りカスで良いか?ぎゃははははは!!!!!!」


高らかに笑う海奏……だった異形。 この場は自分以上の存在はいないという慢心故だったのだろう……














ーーカチリ!!



「まあ、お前も充分なゴミだがな……」



「!?」


後ろから近づいてきた赤フードの少女に刃を突きつけられるまで彼女の存在に気がつかなかったのは……


「ひぃ!?」


突然のことに、海奏は雪子を突き放して情けなく尻餅をついた。自らへ向けられる刀らしき凶器にさっきの強気は何処へやら………醜態を晒すこの男だったが、フードの影に隠れていた顔に気がつくと声をあげた。


「お前!?影宮 勇波…!なんで、こんなところに…!?」


「え…」


影宮勇波という名は既に波多は聞き覚えがあった。現に、フードから垣間見えた黒髪の少女の顔は先日、海奏に絡まれて最終的には克彦のおかげで難を逃れた少女その人。だが、何故に刀などもってここにいるかは真意は読めない。


「逃げろ、用があるのはコイツだけだ。」


「お、おい………」


よく分からないまま、勇波は逃げるように波多らに促し、ジリジリと距離を詰めていく…。すると、『ちぃっ!』と舌打ちして海奏は脚を骨が隆起したような完全なる化け物の姿に変え、建物の上へと跳躍して姿を消した…。


「…逃がすか!」


勇波もまた、人間離れしたジャンプで海奏を追う。

波多と雪子はこれに呆気をとられていたが、ハッと波多が我にかえり彼女らを追うために走りだした。


「先輩!?」


「悪い、先帰っててくれ!俺はアイツらを追う!!」


「…危ないですよ!先輩、先輩!!」











☆ ★ ☆ ★






異形と化した海奏はビル街の合間を跳躍して、タイミングよくそこを貫く線路を走る列車の屋根に飛びついた。これなら、列車のスピードと引き離した距離で簡単には追いつけまい…。とにかく、適当な場所でコイツから離れなければ………



ーーダンッ!!!!


「!」


その時、次いで列車の屋根にヒラリと着地した勇波。刀がチラリと光り、左手にはネコの鋭い単眼のようなブレスットがあった。 すると、ブレスットから声が発せられる…。


『レディ、コイツはレッググリム………脚部特化のレベル1とみた。今の君なら問題なく処理できるはずだ。一目が多い、真価解放を許可する…一気に決めろ。』


「わかった、アダム。レベル1ごときに遅れはとらない。」



「き、貴様…まさか、噂の『SKILLR』か!?」


そして、海奏は察した。

彼女は自分の天敵であると………



「私は『死神』…貴様ら卑怯者を裁く力を………受け継ぎし者。」




彼女は素早く刀身を撫でると、刀がやがて焔を灯す死神の鎌へと姿を変え………髪も黒から流星のような銀色へと変化。衣装も骸骨、死神を模したモノとなり姿は雰囲気を残しつつも一変した。


「………うぅぅ…魚おおおおぉぉァ!!!!!!」



ゴゴゴゴォウ!!!!!!



獣のような雄叫びと共に放たれる悪霊を模した衝撃波。これに、列車は激しく揺れ…レッググリムこと海奏も足場の悪さにバランスを崩す。


「はあっ!」


斬!!!!



『がっ!?』


この隙を逃さず、左肩を斬りつける勇波。直後、鮮血が吹き出してレッググリムは悲鳴をあげ列車から転げ落ちてアスファルトの地面にぶつかってクレーターができる。


「ぬぅ!」


「…いぃ!!」


さらに、追撃をと襲いかかる勇波。だが、レッググリムはなんとか脚部を動かしてバック転して間一髪で回避。死神の鎌だけが無情に突き刺さりアスファルトを砕いた。


「はあああっ………」


「………」


やがて、間が空いた戦場で睨みあう両者。レッググリムは足を踏みしめ、勇波は鎌を腕の骨のようなガンドレッドにあてがう構えで出方を窺う………


「たあっ!!」


「だァ!!」


突然、また戦いの火花が散った。高速とでもいうべき速さで両者が走りだし、攻撃を繰り出す!レッググリムは鞭のようなキックを連発し、それすら上回るしなやかな動きでこれらをかわして鎌の柄を叩き込む勇波。



ゴッ!!!!


「…がっ!?」


「てやぁ!!!」


加えて、間髪いれずに強烈なキック。これにはレッググリムも顔を苦しげにして一旦の攻勢からまたも飛び上がって逃走に入る。


「あれは…!」


この様子を波多も遠目から確認しており、彼はそこに向かう。


「逃がさない!」


キラリと妖艶に赤く輝く鎌。血を啜りたいとでも言わんばかりの凶悪さを醸し出し、獲物に飛翔する刃…。数秒後には、空中の逃げ場の無いレッグクリムが真っ二つになり落下して、海奏の姿に戻ったのであった。

そこから、一息おいたタイミングで勇波が軽やかに着地し一仕事終えた…といわんばかりに鎌を担いだ。


任務完了ミッションコンプリート


さあ、ここから長居する暇は無い。去ろうとし、足を動かしたがすぐにそれを止める。


何故なら……


「…い、勇波…?」



「…」


目撃者がいたからだ。

あまりの状況に硬直して動けない波多をはぁ…と溜め息をつき、まるで面倒くさい仕事が増えたといった調子で足を踏み込んだ…。


「そこ、動かないで…?」


「え?」




最後、波多が見たのは…狩りをする猛禽のように迫る勇波であった。



To be continued……




次回もいつになるかわかりませんがご期待ください。


あと、よければ感想等くだされば励みになります。



では!


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