ep1【『才能~Skill~』】
久しぶりの一次です。
お気軽にどうぞ。
人は生まれながらにして平等ではない……
容姿、格差、身体能力……あげればきりがないほど人間にはあまりにも、差になるものが多い。全ての者は等しくあるべきとしながら、世の理も在り方も決してそうならない。
誰かが言った……『有能』が『無能』に尽くすのでは駄目だ。
誰かが言った……『無能』はいくら努力しても生まれながらの『有能』には勝てない。
誰かが言った……
……ならば、『有能』から『才』を奪えば良い。
Ep01【『才能~Skill~』】
・Side???…
「なーんてよ、都合が良い話は無いよなぁ。なあ、カッちゃん?」
「反雫、もうそんな話してる時点でお前ヤバいぞ。」
はい、私…『反雫 波多』はごく普通の大学1年の少年である。髪は黒……顔は特段にイケメンというわけでもなく、頭もよくなければ運動能力も平均的。強いて優れているといえば……駄目だ…思いつかねぇ。粘り強いくらい?
で、隣にいる褐色系の見るからに陸上部なのは『乾原 克彦』。幼い頃からの腐れ縁で中学生から今の今まで陸上部で活躍して全国大会までいったという猛者。悔しいが…性格も明るい筋肉バカなので憎めず、なお悔しい。一番、悔しいのは地味に女子にモテることだ……おかしいなぁ…スタート地点は同じはずだったのに……
そんな登校最中のことですが、私と隣の彼の紹介はここまでにしましょう。
……ん?誰にはなしてんだ俺?
・三人称Side…
「へ~んだ……どうせ俺は無能の凡人ですよぉ。」
「拗ねんな、面倒くさい。まぁまぁ、人間誰しも向き不向きあるって!努力しなきゃ、何にも成らず……日々の積み重ねさ。」
「ふ~ん……」
「お前だって、きっと何かあるさ。キッカケがあれば見つかるぜ。自分の才能ってのは……」
波多をなだめつつ、克彦は笑う。そうだ、努力無くして何かを得ようとは図々しい……案外、才ある者が近くにいると人間はつい努力を忘れてしまう。羨望は何ももたらさない…だから……
「そうだ……確かに手を伸ばせば…何か掴めるかもな。」
……ムニュ
そう、ムニュっと……ムニュ?え?伸ばした掌が何か柔らかいモノを…
「波ぃ…多ァ……!」
「「Oh…」」
視線を変えれば…通りすがりの眼鏡の女子の胸に……あ、ヤバい滅茶苦茶、怒ってる。
でも、意外とおおk……
「バカ!?逃げるぞ!!」
「サーセンしたァッ!」
「殺す!ふたりとも!!」
「俺、関係無いしぃ!?」
さあ、愉快なおいかけっこのはじまり。波多と克彦は某・怪盗三世とその相棒よろしく息のあったテンポでエッホエッホといった調子で逃げる。いや、克彦は完全にとばっちりであるが…
「なーんでさ!?なんでお前とつるむとこんな目にあうんだ!?」
「わかった!これが、俺の才能なんだ!!これから恋愛フラグに発展する的なぁ…!?」
「んなもん、現実にあるかボケェい!!!?ギャルゲーばかりして頭おかしくなったか!」
「してねーし……あ、でもギャルゲーばかりしてた奴が彼女出来たって言ってた時はガチで敗北感、感じたわぁ……うん。」
「なにそれスゲェー……」
明らかにコントくさい登校風景……だけど、これが日常だ。いつもと違うのは誤って女子の胸を触ってしまったことと……
……見慣れない赤いフードの女の子とすれ違ったこと。
この日から波多の日常は形を変えていくことになる…。
★ ☆ ★ ☆
それから時は経って、講義が終わり大学のグラウンドに波多と克彦の姿があった…。
「HA☆HA☆殴られた、ZE★」
「スゲーな。手形がくっきり…おまけに消えるどころか段々、青く変色してきてるぞ。」
「…誰かが言った。傷は男の勲章だと。」
「全く誇れない勲章だなぁオイ。強がってないで医務室いけ!」
あのあと、波多は警察に御世話になるかわりにビンタされて済んだが、女子が可愛いのを良いことに殴られながら『ご褒美ですッ!』と叫んだので気持ち悪がられ、これ以上は関わりたくないとのことで無罪放免になった…。いや、無罪なのかコレ?
「フフッ……数少ない女子とのスキンシップ、ご褒美と言わずなんと言う?」
「言ってて悲しくならねぇか、変態。」
「ぐふっ!?」
まあ、いくら見栄を張ったところで強がりには代わりないのは長い付き合いである克彦よく知っている。
「ソォーだよ!?!?どうせ、独り者だよ!!!!彼女いない歴と歳が同じ悲しい人間だよ俺はァ!!!!笑えよ、ほらァ、笑えよ!!!!!!このリア充!爆発しろ!モゲろ!」
「やめろ、恥ずかしい…聞いてるこっちが恥ずかしい。」
大きいリアクションだから弄ってやる分、楽しいのが波多だが…自虐ネタに入ると何処か胸が痛くなる……世のさえない男たちが目を背けて無言に胸にしまう言葉を大声で叫ぶ行為。理解できる節もあるが、実際な話……周りからの痛々しい視線が集中するからやめてもらいたい。因みに……
「せんぱーい!」
「おー、来たなジャー子。」
「ジャー子じゃなくて、雪子です。」
克彦がリア充と呼ばれる所以はこの飛び級してきた美少女後輩マネージャー『風吹 雪子』のため。黒髪ポニテールの童顔の容姿端麗で頭脳明晰…絵に描いたような優等生。ただ、マネージャーという職だけでジャー子というアダ名をつけられてしまった彼女は明らかに彼を慕っているのだが……
「出たな、テメェのつがい……」
「動物みたいな言い方すんなオイ。てか、ジャー子と俺はそんな仲じゃねぇし、こんな筋肉本気で好きになる奴いな……」
「……好きです、先輩の筋肉。」
「「…」」
「ほら、あくまで筋肉だし?人格じゃないし……」
「剥げろ、髪より筋肉。」
いつも、こんなおかしいやりとりで想いはスレ違いどころか、一方通行。致命的なのは雪子が筋肉フェチであること。克彦の筋肉の比率は彼女にとっては魅力的らしいが故にその好意は筋肉のみと解釈されるという有り様。
「この大学、やっぱり…頭おかしい奴らしかいない。」
「克彦さぁ~ん?そんな奴らとつるんでる貴方も同類なんですよ?わかってるソコントコ?」
「うるせー……」
「そうですよ、先輩を貴方と同類にしないで下さい波多!」
「おい待てよ!?雪子、テメェ後輩のくせに俺だけ呼び捨てかよ!?!?」
おまけに波多はナメられている。理由は簡単……
「歳以外、私より下の人を敬う理由なんてありませんから。」
「(ガァーン!?」
そりゃあ、そうだ。並の人間と飛び級してきたほどの能力を持つ後輩…能力差は明らかであろう。尊厳も何かも完敗した波多は大泣きしながらその場を後にする……
「言ったわねー!?覚えてらっしゃい!今に見てるのよ!絶対にアンタなんか……あぅ!?」
「あ、コケた。」
「…痛々しすぎます。」
負け犬の遠吠えとはこのことか……
やがて、見えなくなる波多を見ながら克彦は呟く。
「ま、あれだけ感情を思うがままに振り回せるのも羨ましいがな。」
★ ☆ ★ ☆
その頃……
『Wryyy……』
誰もいない校舎の屋上……
そこには『異形』の姿があった。膨れ上がって破裂しそうな体躯を持ち、かろうじて保つ人の形……狂暴な口を開く。
『ス……バラシ…イ……チカラガ、ミナギル!!』
異形は高揚にひたり、腕を広げる……
『溢れる……そして、私の才能が芽吹く!』
「そして、枯れる。」
斬!!
『!?』
その時、頭上に影が舞ったかと思うと頭から背中まで異形の肉体はかっ捌かれていた。何が起こったかわからないが、虚ろになっていく視界の中で死神の鎌を持つ赤いフードの少女が目に入る……
『き、キサマ!?』
「……失せろ、卑怯者!」
『わ、ワタシの才能…ガァ!?』
やがて、異形の肉はズブズブと塵になりそこらへんにいそうな男子大学生の姿になる。気絶し、白眼を向いており見かけは命に別状はなさそうだ。
「……ハーヴェストじゃなかったか。」
少女は鎌をサッと払うと銀のサラサラとした長い髪をフードを外し、風にそよがせる…。
彼女は何者なのか?
……しかし、その赤いフードは波多と登校する時にすれ違った少女であった。
物語は今、静かに動きはじめる……
→→To be continued…はじまり
いかがでしたでしょうか?
物語はこれからです。(でも就活ガガガ……
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