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第9話 はじまりの日

「中々良い船だとは思わないか? コマよ」

 ポセイドンがそう言いました。


 今日は私がグンちゃんと出逢ってから十一日目、グンちゃんと私がポセイドンに敗北した次の日。

 私はポセイドンが呼び出した“空を飛ぶ巨大な船”に乗せられて、ギリシャエリアへと運ばれている途中です。


 私は手足に枷を付けられた状態で、船の甲板にいました。

 私はポセイドンの質問を無視しました。

 しかし。

 ポセイドンは気にせず続けます。

「この船は“スキーズブラズニル”といってな。北欧エリアのフレイ、とかいったか? そんな名前の奴から奪い取った品なんだ」

 そ、そんな……。

 ポセイドンも過去にフレイを倒した事があったのです。

 そんなに強力な神だったなんて……。

 私はポセイドンに聞きます。

「グンちゃんを殺す事が目的だったなら、その目的は達成されたはずです。何で私をギリシャエリアに連れて行く必要があるんですか?」

「コマは見た目も良く、魔法が使えるからな。ゼウスの奴に、「あと、俺の妻に相応しい女の子がいたら連れて来てね〜」と言われていてな」

 そんなっ! 会った事も無い男性と結婚させる為に、私を捕らえたというのですか⁉︎

「私を妻に選ぶという事は、ゼウスという神はロリコンなんですか?」

「ゼウスはあらゆる属性の女を集めハーレムを築いている。お前はそのロリキャラ枠。確か五十番目の妻になる予定だが」

 しかも一夫多妻制ですか⁉︎

「もし……私が嫌だと言ったら?」

「その時は魔法を使った労働を強制され、ギリシャエリアの奴隷として生きて行く事になるだろうな」

 そんなのどっちも最悪です!

 私はポセイドンに「私はグンちゃんと“グンちゃんの元いた世界”で一緒に暮らすので無理です!」と言いたかったです。


 でも、もうグンちゃんは……。


 はぁ、なんだかグンちゃんの事をまた思い出して来ました。

 昨日は一日中泣いて、もう忘れようって決めたのに……。


 ◇◇◇◇◇


 グンちゃんが異世界に来て一日目、私がグンちゃんと初めて出逢った日。



「其方が異世界より召喚された人間ですね。私は其方の監視役。名はコマです。これより其方は我々の監視下に置かれます。日本エリアに敵対すると思われる行為を行った場合には武力行使も辞さない所存ですのでお気を付け下さい」


 確かあの日、私が目の前に現れても、グンちゃんはそのまま歩き続けたんですよね……。

「えぇ〜っ‼︎ まさかのスルーですか⁉︎ って、ちょっと待って下さいよ〜っ」

「ごめん、難しくてよく分からなかったから……」

「そういう事でしたか。てっきり無視されたかと思ったじゃないですかぁ。いいですか? つまりこれからは、私も其方と共に旅をするという事です」

「うん、分かった。これからよろしくね。あと、僕は槍撃手グングニアって呼ばれてる」

槍撃手グングニア、ですか。なんだか難しい名前ですね。う〜ん……。あっ! グンちゃん、とかどうですか?」

「いいと思う。コマが気に入ったなら」

「はい! よろしくね、グンちゃん‼︎」

「うん、よろしく。そういえば……コマ、最初と口調変わってない?」

「はっ! しまった〜‼︎ 変、ですよね。これから気を付けますね」

「そのままの方が良い。だって、そっちが本当の“コマ”なんでしょ?」

「グンちゃん……。そうですよねっ!」




 他にも色々な事がありましたよね。



「“コマ”の為だから」



「その……お腹空いたなぁ、って」



「なるほど、すごいねコマは」



「何が使い捨てだ‼︎ 何が駒だ‼︎ コマは、アンタに会えるのを楽しみに待ってたんだぞっ!」



「大丈夫、必ず勝つか——」




 ねぇ、グンちゃん。私、もう一度会いたいです。

 もう一度会えたら、私の本当の気持ちを——。


 ◇◇◇◇◇


「うぅ、グン…ちゃ…んっ。ぐすっ、会い…たい、よぉ」

 私は、涙が止まりませんでした。やっぱり、忘れられる訳ないですよ。グンちゃんの事……。

 私の泣いている姿を見て、ポセイドンが言います。

「“うさ耳少女と槍撃手グングニア”の噂も大した事なかったな」

 ポセイドンが続けます。

「“無能な幼女と実力不足”と呼んだ方が良いかも知れないな」

「——っ! グン…ちゃんの悪口は…ぐすっ、やめて…下さい。……怒りますよ」

「いくらコマが怒った所で、我を倒す事など出来ないがな。それに槍撃手グングニアはもうこの世にはいな——」

 ポセイドンがそう言いかけた時でした。



——漆黒の槍(グングニア)がポセイドンを貫きました。



 何で、漆黒の槍(グングニア)がここに⁉︎

 漆黒の槍(グングニア)を使う事が出来るのは、グンちゃんだけのはずです。

「…………っ‼︎」

 ポセイドンが攻撃を受け、膝を突きました。



「——誰が実力不足、だって」



 上空からこの船に、一人の少年が舞い降りました。

 彼の服は漆黒で、所々には金色の装飾が施されていました。身長は高く、歳は十八くらいに見えます。


——そう、グンちゃんだったのです。

次話は一週間後に投稿する予定です。

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