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第4話 神を超える一撃

「来いよ!」

 フレイは長剣を構えながら、グンちゃんを挑発します。

 フレイの持つ長剣の刀身には“文字の様な物”が彫られていました。

 グンちゃんは無言で、でも力強く漆黒の槍(グングニア)をフレイの右肩に向かって投擲します。

 グンちゃんは攻撃を長剣で邪魔されない様に、まず肩を狙うつもりの様です。

 漆黒の槍(グングニア)はフレイの右肩に向かって一直線に飛んで行きます。

 漆黒の槍(グングニア)

 その槍は必ず目標を貫く。

 その槍は目標を貫いた後、自動で手元に戻って来る。

 その性能は確かに“最強”と言えるでしょう。

 ですが。



 もしも対戦相手も“最強”だったとしたら?



 カーン! と。

 漆黒の槍(グングニア)がフレイの持つ長剣に弾かれてしまいました。フレイは自信満々に言います。

「実はこの長剣、“神器”なんだぜ!」

 そ、そんな!

 何と、相手フレイも神器を持っていたのです。

 つまりこれは神器VS神器、最強対最強の対決なのです。

 これじゃあ、神と人間の力の差だけグンちゃんが不利です。

勝利しょうりつるぎ。この剣を持つ者は必ず勝利する、っていう反則級の神器なんだよ!」

 勝利の剣。そんなに強力な神器が存在したなんて! そんな神器を持つ相手に、どうすれば勝つ事が出来るのでしょうか?


 ◇◇◇◇◇


 漆黒の槍(グングニア)の性能の一つ“目標を必ず貫いて持ち主の元へ戻って来る”とは“目標を貫くまでは持ち主の元には戻って来ない”という意味でもあります。

 勝利の剣に弾かれた漆黒の槍(グングニア)はブーメランの様に空中で回転しながら何度も何度もフレイの右肩に向かって飛んで行きますが、フレイはその攻撃全てを勝利の剣で弾き返しました。

「……埒が明かない」

 グンちゃんはそう言うと、フレイに向かって走り出しました。一瞬でフレイの元へと辿り着いたグンちゃんは、弾き飛ばされた漆黒の槍(グングニア)をジャンプして掴み取り、落下の勢いを利用してフレイに突き立てます。

 しかし。

 ガギン!

 勝利の剣が漆黒の槍(グングニア)の一撃を防いでいました。

 ギチギチ……と神器同士が擦れ合う音が辺りに響きます。

「テメェ、なんで俺の妹(フレイヤ)にあんな酷い事をした⁈」

「僕達じゃない。彼女に怪我を負わせたのは、キマイラ」

「まだ、しらばっくれる気かーーーっ!」

 フレイは漆黒の槍(グングニア)を弾き、グンちゃんを蹴り飛ばします。

「…………っ!」

 後方に吹き飛ばされたグンちゃんは腹部を抱えながらも漆黒の槍(グングニア)を放ちます。漆黒の槍(グングニア)はフレイの眉間に向かって飛んで行きます。

 “フレイの右肩”という目標は、グンちゃんが漆黒の槍(グングニア)を一度掴んだ事でリセットされています。これにより新たに狙いを定める事が出来た訳です。

 しかし、フレイはここで驚きの行動を取ります。なんと勝利の剣を空に放り投げたのです!

 勝利の剣は自動で漆黒の槍(グングニア)に向かって飛んで行き、漆黒の槍(グングニア)と戦い始めました。

「勝利の剣にはもう一つ性能があってな、自動で敵を殲滅してくれるんだよ!」

 くっ、強過ぎですよ、その神器!

 これじゃあグンちゃんに勝ち目なんて無いじゃないですか!

 二つの神器が兵刃を交えている隙に、フレイはグンちゃんに向かって走ります。フレイはグンちゃんに飛び蹴りを食らわせるつもりの様です。グンちゃんはフレイの飛び蹴りを間一髪の所で躱します。戦いは肉弾戦に突入した様です。フレイの強力な打撃や蹴りがグンちゃんを襲います。

 流石のグンちゃんも防戦一方です。

 グンちゃんの為に、何か出来る事は無いのでしょうか?

「グンちゃん、負けないで下さい!」

 ……今の私にはグンちゃんを応援する事しか出来ませんでした。


 風が強くなって来ました。空中では二つの神器が、地上では神と人間が、鎬を削っていました。

 私には何も出来ないのでしょうか?

 フレイに、勝利の剣に勝つ方法は無いのでしょうか?

 私はもう一度よく考えてみる事にしました。


 ◇◇◇◇◇


 石像ゴーレムを倒した時、グンちゃんは額にあるeの文字を貫く事で石像ゴーレムを破壊しました。

 キマイラを倒した時、グンちゃんは心臓を正確に貫く事でキマイラに勝利しました。

 この二つの勝利には共通点があります。それはどちらも“弱点を正確に貫く事に成功した”という点です。

 そこで私は閃きました。

 もしもフレイの弱点を見つければ、フレイを倒す事が出来るかも! と。

 ですが、神であるフレイに弱点などあるのでしょうか?

 う〜ん……。

 う〜ん…………。

 う〜ん………………。

……何も思いつきません。

 何も浮かばなかった私は何気無く空を見上げました。空中では未だ二つの神器が激しくぶつかり合っていました。

 一つは勝利の剣。刀身に文字の様な物が彫られた長剣。



 ん? 待って下さい。文字の様な物(・・・・・・)



 あの剣は、石像ゴーレムの様に文字を消す事で機能を停止させる事が出来るのでは?

 私は頭の中の全ての知識を総動員して考えます。

 北欧エリア。神器。長剣。魔術。文字……。

 そうか、あれは!



「グンちゃん、あの剣に彫られているのは“ルーン文字”です!」



 ルーン文字。北欧エリアで魔術の際に用いられる特別な文字です。謎が多く、北欧エリアでもこの文字を使いこなせる存在はごく僅かだと言われています。

 グンちゃんにこの事を告げようとした、その時。

 突然、突風が吹き荒れました。そしてその風は……。

 この戦いを見ていたフレイヤさんのスカートを捲り上げました。一瞬、真っ白の下着が私達の目に映りました。

「————!」

 フレイヤさんは顔を赤らめて何か叫んでいる様でしたが、やっぱり私達には聞こえませんでした。

「……なっ!」

 フレイは妹のそんなシーンを目の当たりにした事で、隙が一瞬出来ました。

 グンちゃんはフレイの気が緩んだ一瞬の隙を突いて、フレイから距離をとる事に成功しました。

 それとほぼ同時に、漆黒の槍(グングニア)がグンちゃんの手元まで弾かれて来ました。グンちゃんはそれを掴み、体勢を整えます。

 私はグンちゃんに言います。

「勝利の剣に彫られたルーン文字さえ消す事が出来れば……」

「……分かった、やってみる」

「私、グンちゃんの役に立てたかな?」

「勿論だよ。 ありがとう、コマ」

 グンちゃんはそう言ってくれました。

「何をごちゃごちゃ話してやがる!」

 フレイが剣先を私達に向けて言いました。

「話してたんだ。君を倒す必勝法について(・・・・・・・)、ね?」

「はい!」

「甘く見てんじゃねぇぞ! いいぜ、その槍叩き斬ってやるよ‼︎」

「僕達は負けない。君の歪んだ解釈は……」

 グンちゃんは漆黒の槍(グングニア)を構えながら言います。



「——ここで、僕が貫く!」



 グンちゃんが漆黒の槍(グングニア)を放ちます。

 漆黒の槍(グングニア)は高速でフレイの右腕に向かって行きます。

 フレイが勝利の剣を構えます。フレイは漆黒の槍(グングニア)の勢いを利用してそのまま真っ二つに切り裂く気です。


 シュン! と漆黒の槍(グングニア)と勝利の剣が交差しました。


 漆黒の槍(グングニア)はグンちゃんの元へと戻って来ました。切られた跡はありませんでした。

 対して。

 フレイの方に目を向けると、勝利の剣はルーン文字の中の一文字を正確に撃ち抜かれていました。

「な、何だと⁉︎」

 フレイは驚愕していました。

「右腕を狙ったんじゃなかったのか?」

「僕は勝利の剣に彫られたルーン文字の一つを狙っていた。これなら絶対に切られる事はないから」

 グンちゃんは文字の彫られた刀身、つまり刃の無い面を狙っていたのです。これなら剣に切られる事はありません。

 流石はグンちゃんです!

 これで勝利の剣は機能を失ったはずです。

「神器を破壊されちゃ、降参するしかないな」

 フレイが膝を突きながら言います。

「俺の負けだ! 俺をどうしてくれても構わない。だが……」


「フレイヤは、フレイヤだけは! もう傷付けないでくれっ‼︎」


 はぁ〜、まず誤解を解かなくてはいけませんね。

「分かりました。じゃあ、まず私達の話を聞いてもらえますか?」


 ◇◇◇◇◇


「誤解ならそうだと言ってくれれば良いのに」

「言ってましたよっ!」

 なんとか誤解を解く事は出来ました。

 一体、理解してもらうのに何分掛かったのでしょうか?

「じゃあ結局、フレイヤの声はどうすれば戻るんだ?」

「それが、まだ私達にも分からないんですよ」

 私とフレイとフレイヤさんが悩んでいると、グンちゃんが口を開きます。

「一つ、可能性がある」

「本当か! 安全な方法なら、今すぐ試してくれ!」

「分かった」

 グンちゃんはフレイヤさんの元へ近づいて、フレイヤさんを立たせました。

 何をする気なのでしょうか?

 瞬間。

 何の躊躇いもなく。

 グンちゃんはフレイヤさんのスカートを捲り上げました。

「——!」

 フレイヤさんは顔を真っ赤にしていました。

 私も顔を赤らめて怒ります。

「もう! 何をやっているんですかっ‼︎ って、あれ?」

 捲られたスカートの内側には文字が書かれていました。

「これって、ルーン文字?」

 グンちゃんはあの突風が吹いた時、既にスカートの文字に気付いていたのですね。

「こんな所に魔法がかけてあったのですね! 流石はグンちゃんです‼︎」と言おうとした時。

 突如。

 ビリビリビリビリッ、と。

 グンちゃんがフレイヤさんのスカートを破きだしました。

「えぇーっ! 何してるんですか‼︎」

「これが、一番簡単に魔法を解く方法だと思ったから」

 フレイヤさんのワンピースは超ミニスカートになっていました。

「テメェ、何して——」

 フレイがグンちゃんに掴みかかろうとした時。

 それよりも早く、フレイヤさんがグンちゃんに抱きつきました。



——この度はキマイラから助けて頂き、更には魔法まで解いて頂き、本当にありがとうございました。



 綺麗で透き通った声でした。

「もう、私の命の恩人に“テメェ”などというはしたない言葉は慎んで下さい、お兄様」

「お、おぅ。すまなかったな、槍撃手グングニア

 薄々思っていましたが、フレイはシスコンさんなのでしょうか?

 そんな事を考えていると、フレイヤさんがグンちゃんの両手を握って言います。



「もしよろしければ私も旅にご一緒させて下さい! グンちゃん様っ!」



 えぇ〜っ!

 これはまた、新たな波乱の予感です!

次話は一週間後に投稿する予定です。

投稿が遅れる際は活動報告で説明する予定です。

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