第2話 勝利の剣(前編)
後書きに資料、補足のコーナーがあります。
もしよろしければ、そちらもご覧下さい。
私達のいるこの世界は大きく分けると五つのエリアになります。
ギリシャエリア、北欧エリア、エジプトエリア、インドエリア、そして日本エリア。そのエリア間には森や川等の自然が広がっています。
一方グンちゃんのいた世界は、こんくりーとじゃんぐる? だったらしいです。こうそうびる、いんたーねっと、と呼ばれる物があったらしいです。何だが難しい世界ですね。
今この世界では各エリアの神達が近々起こると言われているエリア対抗の最終戦争、神々の黄昏に向けて戦力の確保をしているという状況です。
特にギリシャエリアのゼウス、北欧エリアのオーディン、日本エリアのアマテラスが三大勢力と呼ばれていて神々の黄昏で生き残る本命だと言われています。この世界の住人達は生き残る為に、三大勢力のいずれかの傘下に加わろうと必死の様です。
私とグンちゃんは今、アマテラス様に会う為日本エリアを目指して旅しています。
◇◇◇◇◇
私とグンちゃんは迫り来る石像達を倒した後、近くで焚き火をしながら昼食を摂っていました。昼食と言ってもメニューは得体の知れない果物、一種類のみですけど。私はグンちゃんに話しかけます。グンちゃんは基本的に無口なので、いつも会話は私から始めます。
「美味しいですね、この果物。何ていう名前なんですか?」
「……知らない」
グンちゃんは相変わらず必要最低限の言葉しか喋りません。
「えっ、知らないんですか! よく知らない果物を食べるのは危なくないかなぁ?」
「そうかも知れない。でも毒味したから」
な、だったら早く言って下さいよ〜。びっくりしたじゃないですか。
「そうだったんだ。でも、いつの間に毒味なんてしてたんですか?」
「……今、してる」
へっ、今?
「遅過ぎるよっ! これじゃあ毒と分かった時にはもう手遅れだよぉ」
「冗談。昨日の内に同じ種類の果物を食べて確認したから」
「な、なんだ〜。よかったぁ」
私はホッ、と胸を撫で下ろします。……まだ胸はありませんけど。うぅ、自分で言ってて悲しくなってきました。
あれ? という事は私が毒にあたらない様に昨日から気を遣ってくれていた、という事ですか?
——優しいなぁ、グンちゃんは。
「ま、まぁ、それ位の気遣いは出来て当然ですけどね‼︎」
し、しまったぁ〜‼︎ 照れ隠しで、つい逆の事を言ってしまった気がします。本当は感謝したかったのですが。
「……? そんな事より神様、コマを“お腹が空かない体”に造ってくれればよかったのにね」
グンちゃんが笑顔で言いました。
「私もそう思います! 私の主であるアマテラス様なら、それ位可能だと思うんですけど」
そう、私は人間ではありません。使い魔や式神といった類いです。魔術や神が存在しているこの世界では、珍しい事では無いのかも知れませんが。私はアマテラス様によって“造られた存在”なんです。「因幡の白うさぎ」がモチーフになっているそうです。見た目は小学校低学年ですが、本当は生まれてまだ一週間なのです。人間に似せて造られているので性別はちゃんとあります。れっきとした女の子です。
何故そんな私がグンちゃんと一緒にいるかというと、私はグンちゃんの『監視役』だからです。一週間前「異世界から少年が迷い込んだ」という知らせを受けたアマテラス様が少年を調べる為に私を派遣したという訳です。
グンちゃんは私と出逢った時から既に記憶喪失でした。自分の本当の名前もまだ思い出せないそうです。いつか思い出せる日が来るといいですね。
それから私は出逢ってから一週間の間にグンちゃんと仲良くなって、今のお互いがお互いを助ける関係(お互いと言っても、グンちゃんが私を助ける場合が99%、私がグンちゃんを助ける場合が1%ですけど)に至る訳です。
「「ごちそうさまでした」」
私とグンちゃんが声を揃えて言いました。
「ところで、私を襲って来た石像達は一体誰が使役していたのでしょうか?」
石像とは本来、使役される存在です。必ず使用者がいるはずなのですが。
「うーん……」
グンちゃん、もしかして私の話聞いてませんでした?
グンちゃんは相槌は打つものの、心ここに非ずといった感じでした。何か考え事をしている様です。
「グンちゃんが何を考えているか、当てて上げましょうか」
私は自信満々に言います。私はグンちゃんの事を理解しているつもりですし。
「もしかして、私の事を見て可愛いなぁとか思っちゃってたでしょ?」
グンちゃんは首を横に振ります。否定されてしまいました。少しショックです。
「じゃあこれからの旅の予定を考えていた、とかですか?」
「……違う」
またも否定です。
「じ、じゃあ、この景色綺麗だなぁとかですか? ですよね⁉︎」
「……違う」
またまた否定でした。
この一週間、グンちゃんとずっと一緒にいたのに。ずっと助けられていたのに。こんな事も私は理解してなかったなんて。私は泣きそうになりながら言います。
「うぅ、じゃあ一体何を考えていたんですかぁ〜?」
「その……お腹空いたなぁ、って」
「…………………………。へっ?」
たったの、それだけ?
てか、さっき食べたばかりじゃないですか‼︎
カーッと顔が赤くなっていくのが自分でも分かりました。
そう思った瞬間、私はグンちゃんに向かって飛びかかっていました。
「グンちゃんのバカバカバカバカ、バカーーーっ‼︎」
私はポカポカとグンちゃんを叩きます。
「……? ごめんね」
相変わらずマイペースですね、グンちゃんは。
「……まぁいいです。そろそろ出発しますよっ」
昼食を終え、私達は旅を再開する事にしました。
◇◇◇◇◇
歩き始めて三十分程が経過した頃、私達はとある森の入り口に辿り着きました。実を言うと私はこの森を通りたくありません。恐ろしい猛獣や幻獣がいるかも知れないからです。はっきり言って怖いです。ですが日本エリアに向かうには、この森を通過しなければなりません。私は意を決して森に入ろうとします。
しかし。
その時、森の奥から“何か”が走って来る音が聞こえてきました。ガサガサガサッ、とその音は次第に大きくなって行きます。
「っ! グンちゃん、怖いよぉ」
私は思わず弱音を吐いてグンちゃんの後ろに隠れます。
ついに“何か”が私達の前に姿を現します。
女の子でした。
端正な顔立ち、腰まであるロングヘアーの銀髪、そして、抜群のスタイル。歳は十八くらいに見えます。まるで何かの物語に登場するお姫様の様でした。
ですが、緑と白のワンピースは土で汚れ、細い手足には幾つもの切り傷がありました。この森の枝で切ってしまったのでしょうか。でも、それにしては傷がやけに多い気がします。
ドサッと。彼女は力尽きた様に、私とグンちゃんの前に倒れました。
「大丈夫ですか⁉︎」
私は彼女に駆け寄り、声を掛けます。
一体、彼女に何があったのでしょうか?
その直後、森の中から何かが飛び出しました。
ライオン、山羊、毒蛇を合成させた様な姿。間違いありません、“キマイラ”です。
キマイラが彼女に襲いかかります。彼女を喰らおうとキマイラが大きく口を開いた、まさにその一瞬。
まるで疾風の様に速く。
まるで稲妻の様に鋭く。
まるで神様の様に強く。
一本の槍がキマイラを貫きます。キマイラの口から入った槍は体を貫通して、グンちゃんの手元へと戻って来ました。キマイラはグングニアに貫かれた衝撃で体勢を崩し、地面に激突しました。
体勢をすぐに立て直したキマイラとグンちゃんが睨み合います。
この瞬間グンちゃんとキマイラの、人間と幻獣の、決戦の火蓋が切って落とされたのでした。
ですがこの時、最強の神器である“勝利の剣”を持つ男が近づいて来ている事に、私達はまだ気付いていませんでした——
神器図鑑のコーナー
グングニア
・百発百中で狙った物体に当たる。
・物体を貫くと手元に戻って来る。
・???
グングニアにはまだ隠された能力がある、という設定です。
次話は一週間後に投稿する予定です。




