第18話 代償
後書きに補足のコーナーがあります。
「もしかして、記憶が戻ったんですか⁉︎」
「うん、まだ完全じゃないけど……」
グンちゃんと私が話していると、七海さんの声が聞こえて来ました。
「お…にぃ…ちゃん、助…けて……」
七海さんはまだ気を失ったままでした。寝言だった様です。
……あれ?
私は疑問をオーディンさんにぶつけます。
「何で七海さんは記憶を失っていないんですか?」
グンちゃんは記憶を失っているのに、何で……。
「それは“神のご加護”を受けているからです」
神のご加護?
「神のご加護とは“人間にあらゆる耐性を与える事の出来る力”の事です」
オーディンは続けます。
「私は彼女に神のご加護を与えました。なので彼と違い、時空を越えた衝撃でも記憶を失わなかったのです」
◇◇◇◇◇
オーディンは言います。
「ところで、真実を知った貴方達はこれからどうする気ですか?」
「君を倒して、元の世界に帰るよ」
「貴方では私には勝てませんよ」
「どういう事ですか?」
私はグンちゃんとオーディンの話に割って入ります。
「何故なら私は過去、未来、現在の全ての知識を手に入れているのですから。代償として片目の視力を失いましたがね」
そ、そんなっ⁉︎
そんなの無敵じゃないですか!
「ですから、貴方達の行動は手に取るように分かります」
オーディンは説明を続けます。
「それだけではありません。貴方達が私に勝てないもう一つの理由は、漆黒の槍に隠された能力があるからです」
◇◇◇◇◇
「コマさん、何故私が彼に“槍撃手”という名を授けたか分かりますか?」
「それは……漆黒の槍を使う者、だからじゃないですか?」
「では、漆黒の槍とは何でしょう?」
「北欧神話に登場する武器“グングニル”の事じゃないですか?」
「おかしいとは思いませんか?」
「……何がです?」
「何故、フレイの神器は“勝利の剣”でポセイドンの神器は“三本の牙”と神話通りなのに、私の渡した神器だけ名前が違うのか」
オーディンは続けます。
「お教えしましょう。それは漆黒の槍と“グングニル”は別物だからです」
「漆黒の槍の正式名称は“グングニル・ニアー”。“グングニル”の量産型です」
「じゃ、じゃあ! 本物の“グングニル”はどこにあるんですか⁉︎」
「では、お見せ致しましょう。これが、本物の“黄金の槍”です」
オーディンは何も無い空間から、一本の槍を取り出しました。
これも恐らく、魔術の一種でしょう。
◇◇◇◇◇
「漆黒の槍に隠された能力。それは……、“黄金の槍を持っている者を貫けない”という能力です」
「それじゃあ……私達に勝ち目なんて、ないじゃないですか」
「いや、まだ手はあるよ。コマ」
グンちゃんが私に言いました。
「合成魔法だ」
合成魔法。二つの存在を融合させる魔法。代償は“計り知れない衝撃”。
「今の僕達の力じゃ、オーディンには勝てないかも知れない。でも、僕達の力を掛け合わせれば……可能性はあると思う」
「なるほど、禁断魔法ですか……」
オーディンが呟きました。
「“計り知れない衝撃”という代償はコマには辛いかも知れない。けれど、もし良ければ、一緒に戦ってくれないかい?」
こんな状況でも私を心配してくれるなんて、流石はグンちゃんです!
私はそのグンちゃんの気持ちに応えます。
「勿論ですよ。だってその為にアマテラス様から魔法を教えて頂いたのですから!」
「“計り知れない衝撃”というのがどれほどの物なのか、貴方達はご存知ない様ですね。私がお教えしましょう。例えるなら……」
オーディンは私達の会話を聞いて、話に割り込んで来ました。
「——時空を越える程の衝撃、です」
えっ? だってそれって、つまり……。
「記憶を失う程の衝撃って事、ですか?」
「えぇ、そうですよ」
オーディンは軽く答えます。
「槍撃手としての記憶は失うでしょう。逆に以前の、十六夜神凪さんとしての記憶が戻るかも知れませんね」
「——十六夜神凪、それが僕の名前?」
神器図鑑のコーナー
漆黒の槍
・百発百中で狙った物体に当たる。
・物体を貫くと手元に戻って来る。
・黄金の槍を持っている者を貫けない。
黄金の槍
・百発百中で狙った物体に当たる。
・物体を貫くと手元に戻って来る。
次話は一週間後に投稿する予定です。




