第1話 漆黒の槍撃手
初投稿です。
今回は私の小説に興味を持っていただき、ありがとうございます。一話一話が短めの予定です。温かい目でご覧下さい。
見渡す限りの大平原。優しい風が草花を軽く揺らします。碧空に浮かぶ積雲は、まるで綿あめの様でした。
でも私はこんな長閑な場所でピクニックをしている訳でも、うたた寝をしている訳でもありません。私は今、全力で走っています。
何故なら。
「キャーーー! 助けて下さい! 早くーーーっ!」
迫り来る石像の群れに追われていたのですから……。
ファンタジーやゲームなんかでよく耳にする、アレです。全長はおよそ十メートル。岩や土で構築された身体。額にはemethの文字。石像は全部で五体。その全てが私を標的にしている様です。
私は逃げます。一目散に。“彼”の元へと。ほんと、これがピクニックだったらどれほど幸せだった事でしょう。
石像達は私を捕らえる為、その大きな手を伸ばします。
私は彼の元へと走り続けます。彼の元へ逃げる事のみが、私が生き残る為の唯一の手段なのですから。
しかし。
「きゃっ!」
足が縺れ、私は転んでしまいました。
——これはマズイです!
——私史上、最大のピンチです‼︎
そう思いました。
でも彼は、これがまるでピンチではないかの様に「やれやれ、世話のかかる奴だなぁ」みたいな顔で私を見ていました。
石像達の手が私に触れようとした、その時。
一本の槍が稲妻の如く石像の額を貫きました。額のeの文字が貫かれ、methになっています。
刹那。
ゴゴゴゴゴッ! という音を立てて、石像が崩れていきます。それを私はただ呆然と眺めていました。残り四体の石像も同じ様に一本の槍によって崩壊させられました。
私は槍を放った彼の方を見ます。
彼の服は漆黒で、所々には金色の装飾が施されています。背中には槍を入れる鞘の様な物を背負っています。身長は高く、歳は十八くらいに見えます。顔は恐らく、イケメンの部類に入るでしょう。そして、投げたはずの槍は物理法則を無視して彼の元へと飛んで来ました。
この槍の名はグングニア。彼の愛槍です。北欧神話に登場する神器の一つ、グングニルと同義だと思われます。
そして彼もまた、槍撃手と呼ばれています。まぁ私は親しみを込めて「グンちゃん」と呼んでいますけどね。
「やっぱり強いですね、グンちゃん」
「“コマ”の為だから」
コマ、というのは私の名前です。見た目は小学校低学年くらいの女の子です。白とピンクのフリフリの服を着ていて、頭のてっぺんにはうさ耳のカチューシャを付けています。超絶スーパーウルトラ美少女……………だと思いたいです、はい。
崩壊し、ただの土の塊と化した“元”石像を見ながら、グンちゃんは言います。
「石像を倒すには額のeの文字を消せばいい。この世界の常識、だから」
そう。
この世界における常識は「1+1=2」だとか「お腹が空くから食事を摂る」という事では無いのです。
この世界における常識とは「石像の弱点は額の文字」や「メデューサを倒すには鏡を使うのが効果的」といった事なのです。
ここは普通の世界ではありません。
魔術、幻獣、神器、そして神。
その全てが存在する世界なのですから……。
第一話を読んでいただきありがとうごさいました。第二話は一週間後に投稿する予定です。




