第六話 話し合いが決裂しました。
本多忠勝隊500人が、徳川家長、血走りの軍団1000人の前に
立ち塞がった。
徳川家長と本多忠勝は馬2頭分の近さで対峙した。
馬上より降り立った、忠勝は叫んだ。家長も騎馬戦車から降り
向かい合う。
「家長!!家康様より深きご恩を受けたにも関わらず
貴様は亡き者にしたな!」
「何を仰られる忠勝様、家康公は我が陣の後方にて、
今も果敢に指揮をなされておられます。」
「暫くれおって!貴様の狙いはこの後、秀忠様も亡き者にして、天下を
治めるつもりであろうが、そうはさせんぞ!」
「そのような虚言戯言を何故申される。忠勝様は家康公に
お会いなされたのですか?家康公は間違いなく生きておられる。
もしや忠勝様は中田殿と親戚であられる、まさか
情がうつってしまわれたのか?私をどうなされたいのですか?」
「ごちゃごちゃ御託を並べおって貴様の首貰い受けるまで!」
「話し合いは無理そうですな」
「・・・・・」
本多忠勝は蜻蛉切りの笹刃を家長に向け構えた。
「戦国屈指の武将と云われた忠勝様と戦えるとは光栄ですよ!」
徳川家長は三俣の鉾トリアイナを両手に握りしめる。
「ほざけ!」
✴ギャリ!
槍と槍が衝突し弾け飛ぶ!
忠勝は幾つもの乱戦場を切り抜けてきた猛将である。
戦場の経験で相手の力量を押し測っていた。
(こいつは強い、わしの一撃を弾き返しおった)
一方、家長も忠勝の一撃を槍で受け止め両手に痺れを感じていた。
(両手にて槍を握りしめているのに、この斬撃!手の痺れ凄まじき勢い)
「うおりゃあああ!」
忠勝の二刀めは斜め横より家長の首めがけ袈裟斬りした。
✴ギャリリリリ
蜻蛉切りとトリアイナは槍柄の部分が合わさり、そのまま
両者は向かい合い回転した。
「うっううう」
力の押し合いとなった槍合わせは忠勝(55歳)には不利であった。
「幾千の猛将といえども、やはり力は衰えますな!」
家長は忠勝に覆いかぶさるように上方から槍で圧力をかける。
「うっううう貴様なぞにやられる忠勝ではないわ!!」
家長は関ヶ原の湿原の泥の中に足に突っ込むと、
忠勝の顔面目掛け蹴りあげた。
「うぉおお!」
泥を顔面に浴び忠勝は狼狽した。
すかさず家長は忠勝の腹へトリアイナを撃ち込む!
「永遠に勝ち続ける武将など!いない!!」
「ぐおおぉおおおおお!」
トリアイナを寸前の処で躱わした忠勝であったが
槍の三俣の先で腹かすめパックリ割れ血が吹き出した。
「仕留めたか!」
「・・・・・」
(家康様、御恩に報いる事出来ず申し訳ございません)
片膝をつき倒れる忠勝、そこへ本多隊500人が駆けつけ
とどめを刺そうとする家長に詰め寄った。
「勝負は付き申した!次は評定場にて決着をつけようぞ!」
本多忠勝は悶絶して倒れた。
「ふっふふ、同じ東軍でよかったですね。西軍でしたら問答無用で
忠勝様を斬り殺してましたよ」
家長は後ろを振り返り歩き出し血走りの軍へ合流した。
忠勝は瀕死の重傷を負い戦場から離れた。




