第5話 行く春や鳥啼き魚の目は泪
京。
問屋街。
蔵が並ぶ。
帳面が積まれる。
判が押される。
ゆっくりと、重く、動く。
それが――旧流通。
僕の物流は違う。
産地 → 物流センター → 直送。
問屋を挟まない。
中間マージンを取らない。
価格は下がる。
回転は上がる。
情報は即時共有。
現代で言えば――
“アマゾン的流通”。
問屋頭が言う。
「若造、流れには“作法”がある」
僕
「作法は、効率を超えません」
空気が張りつめる。
芭蕉は庭の池を見ている。
春が終わろうとしている。
花は散り、
水は濁る。
そして筆をとる。
行く春や
鳥啼き魚の
目は泪
静かな一句。
だが、鋭い。
僕
「去る流通があるから、新しい網が張れる」
問屋制度。
・多重仲介
・価格の不透明性
・在庫の囲い込み
・情報の独占
それは“春”だった。
長く続いた。
だが、終わる。
僕は宣言する。
・価格公開
・配送日固定
・在庫数共有
・産地直接契約
・返品保証制度
中間を削る。
その代わりに
物流センターが全責任を持つ。
信用を一括で引き受ける。
問屋の蔵に、客足が減る。
商人たちは気づく。
「早い」
「安い」
「確実」
旧制度は涙を流す。
だが、感情では止められない。
芭蕉が静かに言う。
「泪は、終わりの証ではない」
僕
「始まりの証です」
鳥が鳴く。
魚の目が光る。
水面に、波紋。
旧流通は去る。
新流通が張られる。
網は、全国へ。
これは戦ではない。
淘汰だ。
春が去り、夏が来るように。
物流も、進化する。




