第9話 ケチャップ ソース マヨネーズを開発
醤油が売れた。
……売れすぎた。
教会の台所は、
もう“祈る場所”というより――
実験室だった。
壺、瓶、木桶。
酢の匂い。
果実の甘み。
油の照り。
僕は、机を叩いた。
僕
「醤油だけじゃ、足りない」
全登
「ほう。まだ“道”が見えとる顔じゃな」
まずは酢。
葡萄、林檎、柑橘。
果実を潰し、発酵させ、
甘みと酸を調える。
そこに、
砂糖。
香辛。
ケチャップ。
赤い。
この時代では、
ありえない色。
子どもたちがざわつく。
子ども
「血みたい……」
一口。
沈黙。
次の瞬間。
子ども
「甘い!!」
次は油。
菜種。胡麻。
絞って、濾して、磨く。
そこに
卵。
酢。
塩。
腕が疲れるまで混ぜる。
白く、
とろり。
マヨネーズ。
信徒の女たちが、
目を丸くする。
信徒
「……これ、何に使うんです?」
僕
「全部に」
最後に――
果実、酢、砂糖、
スパイス、スパイス、スパイス。
煮詰める。
煮詰める。
さらに煮詰める。
ソース。
香りだけで、腹が鳴る。
全登が、笑った。
全登
「神よ…… もう止めてくれんかの」
料理が、変わった。
いや味の世界が変わった。
①オムライ
卵と米が出会い、
赤いケッチャプソースをかけられる。
②コロッケ
芋が潰され、
衣をまとい、油で揚がる。
③えびマヨネーズ
エビがマヨネーズと絡み合い
美味しさがハーモニーする。
人々は、
名前も知らぬ料理を食べ、
笑い、語り、
また作った。
レシピは、
噂になり、
噂は、道を渡った。
全登は、十字架の前で祈る。
全登
「主よ……
これはもう、味の革命です」
僕
(戦より早く、日本中の食卓が落ちていく……)




