第10話 (最終話) 「伊達家、電話は4126」
朝靄の中、
仙台の町外れに、見慣れぬ声が流れた。
唄だ。
太鼓でも、法螺貝でもない。
どこか軽やかで、耳に残る調子。
♪ 東北行くなら伊達家〜
♪ 温泉・道・港まで
♪ 迷ったときはこの番号
♪ 伊達家、電話は〜 4126〜♪
町人が足を止める。
「……なんだ、今の?」
旅人が笑う。
「変だが、覚えちまった」
噂は、もう戦より速かった。
CMは、本当に流れた
城下だけではない。
街道の宿場、
港の酒場、
湯治場の脱衣所。
歌は形を変え、口伝えで広がる。
文字が読めぬ者でも、
子どもでも、
酔っ払いでも覚えられる。
これが、宣伝だった。
剣も、脅しも、
一切使わず。
伊達政宗は、縁側でそれを聞き、
腹を抱えて笑った。
「がはははははは!」
「まさか、わしが
歌で国を動かす日が来るとはな!」
かつての独眼竜は、
戦場で笑う男だった。
だが今は違う。
町の声に、
人の足音に、
湯気の向こうの賑わいに——
心から、笑っていた。
日本初の「平和で儲かる国家事業」
数字が、静かに示していた。
・街道は安全
・争いは激減
・税は自然に集まる
・土地争いは減少
誰も、損をしていない。
だが全員が、
少しずつ得をしている。
上杉は土地で儲け、
真田は道で儲け、
地元は宿で生き、
旅人は癒される。
国は、
剣を抜かずに、潤っていった。
歴史書には、こう書かれない。
だが確かに
日本初の“勝った国家事業”だった。
夜。
あの時と同じ湯。
湯気の向こうで、
政宗が言う。
「……最初に話したの、ここだったな」
「ええ」
「『お主も悪よの〜』から始まって」
二人で、少し笑う。
政宗が、真顔になる。
「なあ」
「次は、どうする?」
僕は、湯をすくいながら答える。
「……次は」
「日本、全部リゾート開発ですね」
政宗の右目が、
静かに光った。
「ふむ」
「面白い」
外では、
また誰かがあの歌を口ずさんでいる。
♪ 東北行くなら伊達家〜
♪ 迷ったら、4126〜♪
物語は、ここで終わる。
だが
国づくりは、いつも続いている。
【僕の戦国時代外伝 伊達政宗と僕の奥州・蝦夷リゾート計画】
まだ続くが一旦、完結




