第6話 団体客を呼べ。日本を繋ぐ道路
国債は、売れた。
それはつまり
金ではなく、道が動き出したということだった。
日本を“線”でつなぐ
伊達政宗は地図を床に広げ、刀の先で線を引いた。
「ここから、ここへ」
「山を越え、川を渡り、港へ出る」
「人が通れば、国になる」
その一言で、国家事業が始まった。
道普請。
橋架け。
街道整備。
鍬を振るうのは百姓、
石を運ぶのは町人、
指揮を執るのは武士。
戦ではない。
だが、戦より人が倒れた。
最大の問題:運べない
道はできる。
だが。
「……中田殿」
「道はあるが、人が来られませぬ」
政宗、眉をひそめる。
「なぜだ」
「馬車が足りませぬ」
「船も、宿も、すべて不足しております」
沈黙。
そして政宗。
「……ならば」
伊達、造船を始める
「船を作れ」
家臣、一瞬固まる。
「殿、我らは陸の大名……」
「関係ない」
政宗、笑う。
「人を運べぬ国に、未来はない」
港に木材が集められ、
職人が呼ばれ、
伊達家の印をつけた船が浮かぶ。
温泉へ向かう船。
「湯船に行くための船」という、
前代未聞の用途。
だが、確実に人は動き始めた。
宿が、足りない
次の問題は、夜だった。
「泊まれません」
「満室です」
人は来た。
だが、眠れない。
政宗、即断。
「空き屋を買え」
「寺の離れを借りろ」
「“泊める場所”を産業にせよ」
こうして生まれた。
宿泊業。
観光案内所という異物
僕は、さらに言った。
「案内所を作りましょう」
「……案内?」
「はい」
「どこに宿があり、
どの湯が空いていて、
いつ帰れるか」
町人、ざわつく。
「余計なことだ」
「勝手に来て、勝手に探せばよい」
だが、案内所に人は並んだ。
地図を見て、
札を渡し、
相談する。
町に、“聞く文化”が生まれた。
町が混乱する言葉
そして、最大の異物。
「……予約、です」
町人、固まる。
「今、金を払う?」
「まだ来てもいないのに?」
「泊まれるか分からんのに?」
混乱。
怒号。
「詐欺ではないか!」
だが、初めて“予約客”が来た日。
宿主は、泣いた。
「……部屋が、空いておる」
「無駄が、ない」
政宗、見栄を切る
政宗は城下で高らかに叫ぶ。
「聞けい!」
「人は、来る前から旅をしておる」
「その心を迎えに行くのが、国の役目よ!」
歌舞伎口調で扇を広げ、
「これにて——
団体客、一件らくちゃーーくーーーう!!」
道は、金を運ばない
道は、
人を運び、
夢を運び、
また帰していく。
温泉の湯気が、
街道沿いに立ち上る。
僕は思った。
戦国後の国造りは、人の“移動”を制した者が勝つ。




