第5話 証券取引所が存在しない問題
金は集まった。
夢も集まった。
だが逃げ道がなかった。
致命的な問い
商人が僕を睨む。
「この株とやら……売りたい時、どこで売る?」
沈黙。
僕は、はっきり言った。
「株を取引する場所がない……売る場所がありません」
伊達 政宗、眉を吊り上げる。
「つまり?」
「一度金を出したら、戻らぬ」
城下に、ざわめきが走る。
応急処置:「市」証券市場
政宗、刀の柄に手を置き。
「ならば作れ」
「城下の“市”を、株の売り場にする」
米と魚の横で、株券が飛ぶ。
「今が買いだ!」
「いや、売れ!」
怒号、噂、誤解。
秩序はない。
そして必然に投資詐欺も起きた。
事件:偽りの配当
「必ず儲かる」
「配当は三倍」
「未公開の株がある」
甘い言葉。
実態は、後の者の金を前の者に配るだけ。
お金を沢山集めて、逃げる。
ポンジスキーム詐欺(儲かっているフリをしているだけの自転車操業)
数日後。
金は止まり、
男は消えた。
市民、激怒。
「株は詐欺だ!」
「伊達に騙された!」
信用崩壊寸前
城下は荒れた。
株券が破られ、
地に捨てられる。
政宗、低く唸る。
「……金で国を動かすとは、ここまで難しいか」
僕は首を振る。
「問題は株ではありません」
「信用を、個人に預けたことです」
僕は言った。
「政宗公」
「国が借金をしましょう」
一同、凍りつく。
「借金……?」
「はい」
「株ではなく、国債です」
国債という仕組み
僕は説明する。
「国が証文を出す」
「金を出した者に、利子をつけて返すと約束する」
「事業が失敗しても国が責任を負う」
政宗、目を見開く。
「つまり……」
「儲け話ではない」
「信用の話です」
政宗、決断
長い沈黙。
そして政宗、立ち上がる。
「よい」
「伊達が、奥州の未来を担保に借りよう」
「逃げも隠れもせぬ」
城中がどよめく。
国債発行
札が刷られる。
そこには大きく記される。
「奥州国債」
利率、期限、返済条件。
誰が見ても分かる。
「これは夢ではない」
「約束だ」
市は静まる
人々は、再び金を出す。
「儲かるから」ではない。
「日本国は逃げないから」。
政宗、夜の城で言う。
「……戦より重いな」
僕は答える。
「でも」
「だからこそ、日本国は強くなります」
灯りが揺れる。
温泉の湯気が、
遠く立ち上る。
夢のリゾート計画は国債を発行する国家事業になった。




