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【歴史ランキング1位達成】 累計331万7千PV 僕の戦国時代  作者: 虫松
第十四部 新しい夜明け

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最終話 別れの刻でした。

さらに、十年の月日が流れた。


戦は遠くなり、

怒号も、血の匂いも、

今はもう、記憶の奥に沈んでいる。


僕は、自分の家の寝室にいた。


障子越しに差し込む夕陽が、

畳の上をゆっくりと伸びていく。

一日の終わりを告げる、静かで、穏やかな光だった。


(……ああ、ここまで来たか)


高齢となった僕は、体はもう、ほとんど動かない。

だが、意識だけははっきりしていた。


部屋の隅に、

大きな影が立っている。


弥助だった。


「弥助……」


声を出すだけで、

胸の奥が、ひりりと痛む。


「今まで、支えてくれて……

 本当に、サンキューアリガトウ」


弥助は、膝をついた。


戦場で、何度も見たその大きな体が、

今は、少し小さく見えた。


「……何言ってんだよ、タイショウ」


声が、少しだけ震えている。


「俺は、ただ、アンタの背中を見テタダケだ。」


弥助は、初代官房長官となり、

日本防衛の要として働き続けた。


黒人として初めて日本国籍を得た男。

だが、誰も彼を「異邦人」とは呼ばなかった。


彼は結婚し、子を持ち、

孫に囲まれ、笑い声の絶えない家庭を築いた。


(……よかったな)


そう思えたことが、

何より嬉しかった。


次に、少し離れた場所で、

腕を組んで立っている男に目を向ける。


「武蔵……」


宮本武蔵が、こちらを見た。


「日本の野球チームリーグ設立、本当によくやってくれたな」


武蔵は、鼻で笑った。


「剣より、球のほうが、血が流れねえからな」


彼は、野球チーム剣豪ズのピッチャーとして活躍し、

その後、日本野球連盟の初代会長となった。


世界各国と野球で競い合う、ワールドベースボールの開催が、

近々、日本で予定されている。


(銃や剣で競い合っていた時代から、野球で世界と戦う時代か)


悪くない。


いやきっと、正しい。


「タイショウ!!」


弥助の声が、部屋に響く。


「中田殿!!」


武蔵も、声を重ねる。


二人の声が重なった瞬間、

胸の奥が、きゅっと締め付けられた。


(……ああ)

(僕は、独りじゃなかったんだな)


戦場では、いつも孤独だと思っていた。


だが今、こうして名前を呼ばれている。


それだけで、十分だった。


僕は、ゆっくりと息を吐いた。


「二人とも……ありがとう」


声は小さく、だが、はっきりしていた。

夕陽が沈み、部屋は、やさしい薄闇に包まれていく。


「そして家長、良くぞ戻って来てくれたな」


家長は、車椅子に座っていた。


背骨の脊髄損傷。

下半身はもう動かない。


かつて戦場を駆け、天下を夢見て槍を振るった男の脚は、

今は毛布の下で静かに眠っている。


僕は、その姿を前に立っていた。


「……久しぶりだな」


家長は、ゆっくり顔を上げた。


「……はい、父上」


その呼び方に、胸が詰まった。


「島国に流されて、毎日、海を見ていました」


「何もない場所でしたが…… 人だけは、いました」


家長は、膝の上で指を組む。


「恨んでいた人間に、水をもらい

 敵だった者に、飯を分けてもらい

 ……気づけば、支えられて生きていました」


少し沈黙してから、家長は続けた。


「自分が、どれほど愚かだったか、ようやく、分かりました」


僕は、何も言えなかった。


責める言葉も

許す言葉も

どちらも、今は必要ないと感じた。


「……戸籍を戻した」


家長の目が、わずかに揺れた。


「お前は、もう一度 中田の子だ」


「……父上」


家長の声が、震えた。


「許されるとは、思っておりません」


「許すためじゃない」


僕は言った。


「託すためだ」


「お前には、新しい日本を任せたい」


「……それは」


「分かるな」


家長は、深く息を吸い、

そして、まっすぐ僕を見た。


「はい」


「次の衆議院選挙で、立候補します」


その言葉に、僕は初めて笑った。


「そうか」


そして、車椅子の横に立ち、ゆっくりと息子を抱きしめた。


骨ばった背中。

かつて敵だった背中。


(ミッチー(石田三成)…… まさか、こんな日が来るとはな)


時間というものは、人を壊すが、

同時に、癒す力も持っているらしい。


家長が、少し照れたように言った。


「父上」


「ん?」


「関ヶ原の地で、父上の放った弾丸……」


「……」


「まだ、私の右足に残っておりますよ」


僕は、吹き出した。


「そうか」


「あの時、当たったとは、思っていたんだがな」


「少しは、妨害できました」


「そうか、そうか」


二人で笑った。


戦の話を笑って話せる日が来るとは、

思ってもみなかった。




三日後。


僕は、寝室の床に布団を敷かれ、

妻と、子と、孫に囲まれていた。


「……国は」


「大丈夫です」


家長が、はっきり言った。


「必ず、守ります」


僕は、ゆっくり目を閉じた。


「日は……必ず 東から昇る」


「新しい日本の……

 

幕開けだ」


それが、最後の言葉だった。

僕は、

妻や息子に看取られ息をひきとった。


僕が変えた日本は、

外国からの侵略に耐え、

不平等条約の圧力にも屈せず、

石油を止められても、危機を乗り越え生き延びた。



◇◇◇


場所は、国会議事堂


議会で声が響く。


「内閣総理大臣、中田 家長殿!」


車椅子の男が、マイクの前に出る。


「はい」


一瞬、視線を上げ、天井ではなく、

遥か昔の関ヶ原の空を思い出す。


「今の質問に、ご回答を申し上げます」


その背中は、もう、迷っていなかった。




【僕の戦国時代 ー僕が戦国の歴史を変える物語】


完結


______________________


2011年に小説家になろうで、書いた小説をリメイクさせました。


ご都合主義で申し訳ないですが、

徳川家長は車椅子、総理大臣になり、新しい日本を

作ってくれると期待してます。

首には摘出した弾丸のネックレスつけてます( ´ ▽ ` )ノ


ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

感想を書いていただけると今後の励みになります。





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