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【歴史ランキング1位達成】 累計331万1千PV 僕の戦国時代  作者: 虫松
第十三部 関ケ原の戦い 下

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第10話 処刑されました。

西軍の陣は、もはや一枚岩ではなかった。

だが同時に、恐ろしいほど生き物のように噛み合い始めていた。


明石隊と黒田隊が正面で噛み合う。

火縄銃の乾いた破裂音が、間を置かず連なり、

槍と槍がぶつかるたび、鉄が悲鳴を上げた。


「押せぇぇぇ!!」


明石隊が前に出る。

黒田隊はさすがに統率が取れている。

一歩下がり、撃ち、また詰める。

地面はすでに血と泥で滑り、

倒れた者を踏み越えるたび、骨の感触が足裏に伝わる。


その横で立花隊が東軍の井伊隊・細川隊と激突した。


立花宗茂の采配は鋭かった。

突撃と離脱を繰り返し、

井伊の赤備えの隙を、寸分の狂いもなく切り裂いていく。


「退くな!踏みとどまれ!」


井伊隊の叫びは、次々と血に変わった。

細川隊が援護に入るが、

そこへ――


「長宗我部、参るぞぉぉぉ!!」


後方から、長宗我部隊が突き刺さる。

さらに、大谷軍が横合いから流れ込んだ瞬間、

戦場の“流れ”が、はっきりと変わった。


東軍は、囲まれ始めた。



◇◇◇



僕の足元には、家長がいた。

背骨を砕かれ、腹這いになったまま、

それでもその目だけは、まだ獣の光を宿していた。


「……これからだ。

徳川家康の本隊、二万五千が来れば……

お前たちは、皆、死ぬ」


声はかすれていたが、

それは“予言”のようにも聞こえた。


「ダマレよ。」

弥助が吐き捨てる。

「俺タチは、ココマデ来た。怪我人はダマッテろよ!」


僕は空を見た。雲は低く、風が強い。

いや、違う。

戦場そのものが、息を詰めている。


徳川本隊、動く


ついに、徳川本隊二万五千が動いた。


地鳴りのような足音。

旗指物が揺れ、太鼓が打たれる。


「来るぞ……」


誰かが呟いた、その直後。


徳川の本隊が、後ろへ下がり始めた。


「……は?」


一瞬、理解できなかった。


整然と、

秩序正しく、

戦場から離れていく。


「なぜだぁぁ!!」


地面に伏した家長が、血を吐きながら叫ぶ。


「今下がれば、西軍の餌食になるぞ!!家康!!何をしている!!」


答えはなかった。


徳川家康は、逃げた。

勝負の場から、

責任から、

そして、歴史から。


退却する徳川本隊の背後に、

新たな軍勢が現れた。


「毛利だ……」


誰かが呟いた瞬間、

毛利軍が襲いかかった。


前から西軍。

後ろから毛利軍。


逃げ場は、ない。


徳川軍は、潰された。押し潰され、切り刻まれ、

二万五千という数は、

意味を失った数字に変わった。


僕は、叫んだ。


「西軍全軍!!逃げる徳川勢に追い討ちをかけろ!!」


関ヶ原は、完全に崩れた。



敗走兵は武器を捨て、

鎧を脱ぎ、

命乞いをしながら斬られていった。


そして、徳川家康は、くノ一隊に捕えられた。


縄に縛られたその姿は、

天下人ではなく、

ただの老いた男だった。



◇◇◇


数ヶ月後


徳川家康は、処刑の場に座していた。


見届け人として、本多忠勝が立っていた。


「わしは影武者じゃ!!

本物は家長に殺された!!」


家康は最後まで、喚いた。


だが忠勝は、冷たく言い放った。


「家康公。

武士の最期を、汚されるな」


その言葉で、

家康はようやく、黙った。


そして、腹を切った。


血が流れ、

徳川の時代は、終わった。


戦後


僕の息子、家長は島流しとなった。

生きている。

それだけで、罰としては十分だ。


福島正則 全滅死亡

黒田長政 減封(減俸)

井伊直政 全滅死亡

細川忠興 減封(減俸)

本多忠勝 減封(減俸)隠居

小早川秀秋 全滅死亡


他多数、減俸

東軍に与した者たちは、

それぞれの終わりを迎えた。




滅びた者。

削がれた者。

生き恥を背負った者。


関ヶ原は、

正義も、悪も、

すべてを同じ泥に沈めた。


僕は、その泥の上に立ち、

静かに思った。


――これは勝利ではない。

――ただ、次の時代への死体の山だ。


それでも、歴史は、前に進むしかなかった。


【関ケ原の戦い 下 完】

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