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【歴史ランキング1位達成】 累計331万1千PV 僕の戦国時代  作者: 虫松
第十三部 関ケ原の戦い 下

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第5話 気合を入れました。

血と火薬の匂いが、肺の奥まで染み込んでくる。

笹尾山を離れてなお、耳の奥では砲声が鳴りやまなかった。


僕は、石田三成をあの人を、置いてきた。


(僕は……逃げたのか)


そう思った瞬間、足が止まりかけた僕の前に、白い外套が現れた。


明石全登だった。

胸元の十字架が、煤に汚れながらも微かに光っている。


「中田殿。今は、生きよ」


低く、しかし揺るがぬ声。


「主は、殉じた者だけでなく

生き延び、背負い続ける者にも試練をお与えになる」


続いて、小西行長が一歩前に出た。

穏やかな顔の奥に、決意が燃えている。


「三成殿の死は、無駄にはならぬ。

彼は“時間”を買った。

あなた方が、ここへ辿り着くための時間を」


その言葉に、胸の奥が軋んだ。


くノ一たちは既に周囲に散り、警戒線を張っている。

弥助は黙して僕の背後に立ち、

宮本武蔵は地面に膝をつき、刀を抜いて刃を確かめていた。


家長が、僕と決着をつけたがっている。


その思いが、胸の奥で鈍く鳴った瞬間、

世界は音を失った。


闇だ。

底も、天もない、真っ暗な世界。


足元すら、わからない。


そこへ足音がした。


一歩、また一歩。


ミッチーが、こちらへ歩いてくる。


いつもの柔らかな表情。

しかし、その輪郭は、どこか揺らいでいた。


「聞き分けのない子供を叱ってやるのが、

親の務めにございます」


静かな声だった。


「逃げず、背けず、真っ正面から受け止めてやるのが、

親というもの」


ミッチーは、少しだけ笑った。


「抱きしめてやることも、時には必要なのでございますよ……」


一歩、後ずさる。


「子は、親の鏡にございますから」


「待ってくれ!」


僕は、必死に手を伸ばした。


「ミッチー!行かないでくれ!!」


しかし指先は、何も掴めない。


ミッチーの背後に、川が現れる。

静かに流れる、三途の川。


振り返らず、

ミッチーは、その流れを渡っていった。


「ミッチィィィ――!!」


声は、闇に溶けた。


「……うっ」


目を開ける。


青空。

木陰。

血と土の匂い。


(……夢か)


短い眠りだった。

だが、胸に残る重みは、現実より重い。


「申し上げます!」


伝令が駆け込んでくる。


「家長の軍、正面に現れました!」


来たか。


「中田軍、生き残りは!」


「くノ一隊五百!

盾の部隊百!

人力やり襖百!

装甲車二台!

その他三百ほど!」


千の兵。


たった、千。


だが、十分だ。


「よし……中田軍で迎え撃つ」


拳を握る。


「弥助!武蔵!

みんな、支えてくれ!」


「任せロ!」


「最後まで付き合うぜ、殿!」


視線の先。

家長の陣が、ゆっくりと展開していく。


「……あれを見ろ」


思わず、笑ってしまった。


「家長の陣形……僕が最初に考えた突撃陣と、まったく同じだ」


「子も子なら、親も親だな……!」


弥助が豪快に笑う。


「ガハハハ!同じ頭ナラ、次も同じだナ!」


「正攻法だ」


僕は、一歩、前に出た。


「真正面から、ぶつかり合う」


武蔵が刀を抜く。


「決まりだな。一番前で、殴り合おうぜ」


「うおおおおおおお!!」


中田軍が叫ぶ。


「逃げない!

もう、逃げない!」


「家長。来るなら、来てみろ!!」


僕は、関ヶ原の最前線へと歩み出た。



◇◇◇



「家長様!」


血走りの軍の将が叫ぶ。


「中田隊、約千!

宇喜多隊より前へ出てきました!」


家長は、ゆっくりと頷いた。


「そうか……ようやく、腹を決めたか」


騎馬戦車の上に立つ。


「血走りの軍!

聞けぇえええ!!」


戦場が、静まり返る。


「今、この戦場で

我らが天下を取る!!」


声が、雷のように響く。


「敗者は歴史から消え、

勝者は歴史を創る!」


「名も、血も、未来も!

すべてを賭ける時が来た!!」


拳を突き上げる。


「勝つのは――

我ら血走りの軍団である!!」


「うわああああああああ!!」


鬨の声が、地を揺らす。


「後ろを見るな!前進あるのみ!」


「我らにあるのは――

勝利の二文字のみ!!」


血走りの軍と、中田軍。


父と子。

創り手と、創られた者。


両軍が、真正面から向かい合う。


もはや、退路はない。


ここが、終わりだ。

ここが、始まりだ。


関ヶ原、最終戦。

ついに、幕が上がった。



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