第8話 個別面談しました。
「物見の報告によれば」
ミッチー(石田三成)が、
これ以上ないほど真面目な顔で配陣図を広げた。
関ケ原の戦い 最新の配陣図
https://4583.mitemin.net/i97027/
「敵の布陣は、このようになっております」
広げられた地図には、
教科書で見たことある“あの関ヶ原”が、
しっかりと再現されている。
(あ、これ…負けたやつの地形だ)
一瞬、嫌な汗が背中を伝った。
「策のほうですが」
ミッチーは続ける。
「宇喜多軍と中田軍で、前面の敵を受け止めます」
(出たな、肉壁宣言)
「敵は、まず殿の首を狙ってくるでしょう。ですので、徹底防御」
(そう西軍の総大将は僕である。)
「その間に」
ミッチーの指が、地図をなぞる。
「横から小西軍、長宗我部軍、大谷軍。
後方より毛利軍、小早川軍で、一斉に攻めます」
「合図は狼煙。それを見て、全軍突撃」
(信頼できる軍だけで、攻撃するしかない。手駒は少ない。
僕は耐えきれる自信はないが、島津軍がいない以上防御策に出た。
小早川軍が最悪裏切っても後ろから攻撃されなければ大丈夫なはずだ)
僕は、地図の端に描かれた小早川軍を見た。
いくつか細かい打ち合わせをして、軍議は終了。
「この策なら」
ミッチーが、珍しく柔らかく微笑んだ。
「必ずや、勝利いたしましょう」
(合格点もらった!)
でも、僕の心は一つの不安でいっぱいだった。
小早川秀秋に会いに行くか。
◇◇◇
軍議のあと、
僕は単独で“小早川の陣営”へ向かった。
「中田殿、なにか用であるか!」
小早川 秀秋くん、声だけはやたら威勢がいい。
(態度デカいけど、顔がもう不安そう)
「いやあ、明日、勝利したらさ」
できるだけ優しい声で切り出す。
「秀ちゃんにも、それなりの恩賞をと思ってね」
「ほう!どのような?」
食いついた。
(よし、釣れた)
「徳川の領地の半分とか、どうかな」
「……!」
秀秋の目が、一瞬キラッと光った。
「しかし」
次の瞬間、真顔。
「徳川の地を治めるとなると、反乱軍の鎮圧など、難しそうじゃな」
(急に現実的)
「じゃあ、京はどう?」
(言いよった)
「京を納めたい、と」
「うむ!」
(うむ、じゃねえ)
「それはさすがに……」
(朝廷あるし!そんな重要エリア、19歳メタボに任せられるか!)
「恩賞の件は、改めて協議ということで」
僕は、笑顔で話を切り上げた。
(あ、こいつ無理だ)
(どうせ裏切るなら、もう“裏切る前提”で戦うしかない)
覚悟が、腹に落ちた。
◇◇◇
夜が明けた。
霧が薄く立ち込める関ヶ原。
僕は、西軍の総大将として、戦場に立っていた。
( 天下を取るチャンスが開かれました。の話に戻ってきました。)
宇喜多秀家の客将、明石全登のキリシタン部隊 四〇〇〇。
中田軍の横に、ずらりと整列。
そして
「……あれ、戦場に持ってくるもんだっけ?」
巨大な十字架が運ばれてくる。
負ければ、僕はあの十字架にはりつけ。
勝てば、日本はキリスト教の国?
隣にいる弥助が言った。
「オレ、ブードゥー教。イエス、あんま出てこない」
巨大な十字架の前で、明石全登が祈っている。
(勝っても負けても、 なんか嫌な予感しかしない)
太鼓が鳴る。
陣旗がはためく。
霧の向こうに、
東軍の影が見え始めた。
「……始まるな」
僕は深く息を吸った。
(小早川が裏切るかもしれない)
(島津はいない)
(でも、やるしかない)
「よし」
小さく、しかし確かに言った。
「関ヶ原の戦い、開幕だ」
この戦、
どう転んでも、普通には終わらない。
(そしてたぶん、一番信用できない奴が、一番目立つ)
【関ケ原の戦い 上 完】




