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【歴史ランキング1位達成】 累計331万1千PV 僕の戦国時代  作者: 虫松
第十一部 関ケ原の戦い 上

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第7話 団結しました。

夜明け前。

焚き火の残り火が、かすかに赤く脈打っている。


僕は夜襲から戻り、本陣の片隅でひとり立ち尽くしていた。


「……まずいな」


無意識に親指を口元へ運び、噛む。


関ヶ原で、

西軍最大の切り札だった男

島津義弘が、死んだ。


しかも、

討ち取ったのは……僕の息子、竹千代。


島津義弘の亡骸は、

家臣たちに担がれ、

一言も発せぬまま薩摩へと帰っていった。


残された島津軍、一五〇〇。

主を失った彼らは、戦場を去った。


(……やってしまった)


夜襲に連れていかなければ。

あの斜面に、立たせなければ。


(敵中突破

 あの突破力がなければ、

 後続の軍が続かない)


胸の奥が、じくじくと痛む。


(どうする……

 どうすればいい……)


考えが、堂々巡りを始めたそのとき。


「…………」


大きな足音。


「タイショウ!」


やけに明るい声が、闇を破った。


「ひとりでナヤムンジャねえよ!!

 オレタチが、いるだろ!」


顔を上げると、

弥助、石田三成、宮本武蔵。


三人が、

まるで門を塞ぐ仁王像のように、

M字に並んで立っていた。


「……お前ら」


「殿」


石田三成が、一歩前に出る。


「島津家を失ったのは、確かに痛手。

 ですが、 それで西軍が負けたわけではございません」


真っ直ぐな目。


「殿の采配次第で、戦は、まだ動かせます」


(……ミッチー)


負けたら一緒に縛り首だな、とは思ったが、

その覚悟が、今はありがたかった。


「拙者は」


今度は宮本武蔵。


「百人斬りを、お披露目申す」


……それは小説の話だぞ、とは思ったが。


「頼もしいな」


僕は、思わず笑った。


「本当に、斬りまくってくれ」


「心得た」


最後に、弥助。


「タイショウ。

 明日ハ、キット、イイ日ニナルサ」


そして、照れたように付け加える。


「“And surely a good day tomorrow.”」



……そうだ。


僕には、

まだ、仲間がいる。


僕が弱気になれば、

西軍全体の士気が崩れる。


ここで折れたら、

それこそ島津義弘に顔向けできない。


「……明日は」


僕は、三人を見回した。


「皆に、無理をさせる。

 それでも、ついて来てくれるか」


「アタリマエだろ!」


弥助が、拳を鳴らす。


「タイショウに貰った命ダゼ!

 今までの戦い、全部ムリバッカだったジャネエカ!」


「殿」


石田三成が、深く頭を下げる。


「最後まで、

 地獄まで、お供いたします」


「兵法士官の件、お頼み申す……」


宮本武蔵だけ、なぜか志が低い。


(……まあいい)


(徳川家長。 正体は、竹千代)


親子で、この地で戦う運命か。


逃げられないなら、

正面から、受けて立つしかない。


「……よし」


僕は、深く息を吸った。



僕にはない 武力(弥助)

僕にはない 智力(石田三成)

僕にはない 体力(宮本武蔵)


変えてやる関ヶ原の戦いを


「軍議を開く。

 西軍の将たちを、全員集めよ!」

僕は西軍の将軍達に召集をかけた。


◇◇◇



夜襲は成功した。

その代償として、戦は一日、延びた。


それは、天の采配だった。


雨。

霧。

ぬかるむ地。


それらすべてを、避けることができた。


軍議の場には、

毛利輝元、小早川秀秋、長宗我部盛親、大谷吉継、

小西行長、宇喜多秀家、島左近、明石全登。


教科書の中の名が、今、同じ空間にいる。

僕は、地図を広げた。


指が、関ヶ原をなぞる。


「力は、弥助。

知は、三成。

技と胆は、武蔵」


「そして

 それらを束ねるのが、僕の役目だ」


誰も、笑わなかった。

誰も、目を逸らさなかった。


「変えるぞ」


静かに、しかしはっきりと告げる。


「関ヶ原の戦いを。 その先の、日本を」


かつて、初陣で感じた、

あの胸の熱。


(思い出せ)

(あのときの、震えを)


焚き火が、ぱちりと爆ぜた。


夜は、まだ深い。


「布陣は この形でいこうかと」

僕はみんなの前で布陣を再度、発表した。


西軍は、団結した。そして明日、日本の歴史が動く。

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