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【歴史ランキング1位達成】 累計331万7千PV 僕の戦国時代  作者: 虫松
第九部 天下統一編

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第8話 降参しました。

【仏ヶ根(長久手)の戦い】


合戦が始まったその刻、

小牧城の背後でも、空気は張り裂けていた。


徳川家康より城を守るよう命を受けた

石川数正・酒井忠次・本多忠勝。


太鼓の音。

遠くから、地鳴りのような足音。


来る。


「秀吉の大軍、動いたとのこと!」


伝令の声に、

忠勝の目が光った。


「……今しかねぇ」


「いまこそ秀吉の本隊、楽田へ火をかけて叩くべきだ!」


石川数正が即座に遮る。


「無謀だ! 今は守りに徹するべき時――」


だが忠勝は聞かなかった。


視線の先

翻る千成瓢箪。


秀吉の馬印。


「……あの印を前にして、黙って見送れるかよ」


忠勝は馬首を返した。


「本多勢、来られる者だけ来い!」


五百。


たった五百。


だが、その五百が

二万の大軍の前に立ちはだかった。



◇◇◇



一方、仏ヶ根。


鉄と鉄がぶつかり合い、

血と泥が混ざり合う平地。


森長可は、歯を食いしばって突撃した。


「今度こそ……

 今度こそ汚名を晴らす!!」


だが前方には、

井伊直政・赤備え。


三百丁の鉄砲が、

三段に構えられていた。


「放て」


一斉射。


空気が裂ける。


弾丸は、

鎧を貫き、

肉を穿ち、

馬を倒した。


森長可は突き進んだ。


だが次の瞬間



――眉間に衝撃。


音もなく。


叫びもなく。


馬上から、

人形のように崩れ落ちた。


地面に叩きつけられ、

そのまま動かなくなる。


死だった。


その死が、

戦場の均衡を砕いた。


秀吉連合軍は、一気に崩れた。


命令は届かず、隊列は乱れ、

誰もが背を向けた。


逃げる。

押し合う。

踏み倒す。


倒れた味方を踏み越え、

武器を捨て、

鎧を脱ぎ捨てる。


一方、徳川の軍は違った。


声が通る。

陣形が崩れない。


「前へ!」


「押せ!」


迷いがない。




「よーし……戦況は有利!狙うは三好秀次の首だ」

僕は装甲車を走らせた。


戦場を分断する。


逃げ惑う秀吉軍の中へ、

楔のように突っ込む。


後ろから、

二千の中田軍が続く。



一方、池田恒興は、

必死に陣を立て直そうとしていた。


だが

振り返れば、誰もいない。


家臣は逃げ、

旗は倒れ、

声も返らない。


「……馬は……

 馬はどこだ……!」


探している間に、背後から影。


徳川の兵。


槍が一閃。


恒興は呻き声を上げ、

地面に崩れた。


誰も助けない。

誰も見向きもしない。



三好秀次は、堀秀政に守られながら

松河戸の渡し場へ辿り着いていた。


船。


助かる。


そう思った瞬間。


「三好秀次! 神妙にいたせ!」


僕の声。


火炎点火部隊が前に出る。


黒い液体、重油が投げ込まれた。


「な、なんだ……

 この……臭いは……」


堀秀政は、

頭から浴びていた。


見たことのない黒。

鼻を刺す悪臭。


「火を入れろ」


次の瞬間。


燃えた。


一瞬で。


堀秀政は叫びながら川へ飛び込んだ。


だが水面は燃えていた。


黒い炎。


川は、逃げ場ではなかった。


やがて、彼は動かなくなる。


船は燃え、煙が空を覆った。


囲まれた三好秀次は、

刀を落とした。


「……無念だが…… 降参、致す」


それが、生き残るための選択だった。



◇◇◇



戦は、半日で終わった。


徳川連合軍

死者八百。


秀吉連合軍

死者三千。


平地には、倒れたままの人間と、

折れた槍と、

血を吸った土だけが残った。


呻き声は、夕方まで続いた。


怪我人に助けは、来ないかわりに乱取りが行われる。

戦国の戦場とは、そういう場所だった。


____________________


【乱取り(らんどり】

戦国時代、足軽兵として駆り出された農民は自給自足だった。

支給された食料や武器などなくなると戦地での略奪は容認された。


現在では柔道や合気道などの格闘技で自由に技を掛け合う

稽古などに使われる。

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