第8話 地ならしをしました。
地ならし、大規模土木工事開始!
傾いてたりゴツゴツした道より平らな道の方が歩きやすい。
さぁ平らな道を作ろう!違う違う!地ならしにはもう一つの意味がある。
地ならしとは一言でいえば、根回し工作のことです。
事前準備が何事も大事ですよね。
すり合わせを重ねて大きなプロジェクトは成し遂げられるのだ。
環境整備局、中田玄白が明智君と共にお忍び九州の旅です
夜明け前。
城下はまだ眠っている。
甲冑ではなく、地味な旅装。
名も告げぬ一行が、静かに門を出た。
「……本当に、よろしいのでございますか」
明智光秀が、手綱を引きながら言う。
「お忍びで九州を回るなど」
「いいじゃん」
僕は軽く言った。
「どうせ大軍で行ったら、
どこも“はいはい従います”って顔しかしない」
「それは……確かに」
「本音が聞きたい時は、
偉く見えない格好が一番だよ」
光秀は、ため息をついた。
「殿は、時折、
とんでもなく賢いのか、
ただの面倒くさがりなのか、分かりませぬ」
「両方だね」
街道・九州入り
山が続く。
道は細く、岩がちだ。
「九州って、歩きにくいな」
「山国でございますから」
「そりゃ島津も強いわ」
「はい。 この地で育った者は、
逃げ足も、突撃も、異様に速い」
「嫌な才能だなぁ」
休憩中
「明智君」
「はい」
「温泉入りたい」
「……殿」
「別府とか」
「そのような温泉、聞いたことがございませぬ」
「だよね」
「今は沼と噴気でございます」
「未来だと観光地なんだけどなぁ」
「……殿」
「ん?」
「未来の話は、ほどほどにしていただけますと助かります」
城下町にて
小さな城。
表向きは「通りすがりの商人」。
酒を酌み交わし、
世間話をする。
「最近、どちらに付くおつもりで?」
「さぁ……様子見ですな」
「ですよねー」
また別の城。
「殿、いかがでしょう」
「……考え中です」
「ですよねー」
三つ目の城。
「裏切るなら、今が最後ですよ?」
「……考えます」
「ですよねー」
光秀が、ぼそっと言う。
「皆、同じ返事でございますな」
「うん」
「成果は、あるのでございましょうか」
「あるある」
「どこに?」
「誰が、最後まで決めないかが分かった」
「……なるほど」
夜の焚き火
「派手な勝ちは、秀吉がやる」
「はい」
「正面の理屈は、信長様が潰す」
「はい」
「でも」
僕は火をつついた。
「地味な準備は、 誰かがやらないといけない」
光秀は黙ってうなずいた。
「戦は、始まる前に半分終わってるからね」
「……殿」
「ん?」
「その考え方、 非常に恐ろしゅうございます」
「褒め言葉?」
「はい」
城へ戻る途中、
使者が駆けてくる。
「殿! 例の件、報告がございます!」
「ん?」
「試作、成功とのことです」
光秀が一瞬、眉をひそめる。
「……何の件でございましょう」
僕は、あっさり言った。
「地雷」
「…………」
「まだ使わないよ?」
「それを聞いて、安心できる者はおりませぬ」
「大量生産は始まったけどね」
「殿!!」
「冗談冗談」
馬を進めながら、僕は笑った。
「地ならしは終わった」
「……」
「次は、 歩きにくい地面を作るだけ」
光秀は、深く息を吐いた。
「殿」
「なに?」
「どうか、 笑顔で言う内容ではございませぬ」
夜道に、風が吹く。
九州の山々は、何も語らない。
ただ静かに、次の戦を待っていた。




